研究課題/領域番号 |
22K05249
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35030:有機機能材料関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
葛原 大軌 岩手大学, 理工学部, 准教授 (00583717)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 環状構造 / ポルフィリン / 有機電子材料 / 金属錯体 / 環状化合物 |
研究開始時の研究の概要 |
ダブルV字型構造を持つポルフィリン(2.1.2.1)をビルディングブロックとして、多環式芳香族分子やヘテロ環を組み込んだ環状ポルフィリン(2.1.2.1)多量体や、金属錯体化によってポルフィリン(2.1.2.1)を環状にした有機-無機混合型環状ポルフィリン(2.1.2.1)多量体の合成を試みる。具体的には、次の3つのテーマについて研究を遂行する。 A) 様々な架橋構造を有する環状ポルフィリン(2.1.2.1)多量体の合成法の確立 B) 有機-無機ハイブリッド型環状ポルフィリン(2.1.2.1)多量体の合成法の確立 C) 機能性分子としての環状ポルフィリン(2.1.2.1)多量体の可能性の探索
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研究実績の概要 |
π共役系化合物は、主にsp2炭素や硫黄、窒素などのヘテロ原子から構成され、一般的に高い平面性を示す。そのため、π-πスタッキングなどの分子間相互作用によって電荷輸送に有利な結晶構造を示す化合物は、有機薄膜トランジスタ(OTFT)や有機太陽電池(OSC)の有機半導体材料として活発に研究が行われてきた。一方、屈曲面やねじれ構造などの非平面構造を持つπ共役系化合物が注目されている。π曲面を持つ分子はπ曲面の内側と外側で異なる電子状態を示し、平面性分子とは異なった電子物性を示すため、新たな機能性材料として期待されている。また、ポルフィリンはクロロフィルやヘムなどの生体分子の基本骨格であり、機能性色素として盛んに研究が行われてきた。ポルフィリンを用いた環状化合物の合成はいくつかグループで達成されているが、平面性の高いポルフィリンを用いて環状化合物を合成するのは通常困難である。申請者が独自に開発したポルフィリン(2.1.2.1)は折れ曲がった分子構造を持つことが特徴である。さらに、一般的なポルフィリンと同様に様々な金属錯体を形成することが可能である。これまでに折れ曲がった構造を活用して簡便な環状構造の構築法を見出し、ポルフィリンナノベルト(PNB)やブタジエン架橋環状ポルフィリン(2.1.2.1)多量体(CPO)の合成に成功した。さらに環状を構造の機能を引き出すためには、異なる環サイズをもつ化合物の自在合成やポルフィリンおよびリンカーの容易な化学修飾法の開発が不可欠であり、本研究では様々な架橋を構造をもつ環状ポルフィリン多量体の合成法の開発に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポルフィリン(2.1.2.1)を用いて環状構造を構築するためには、主に2つの合成法が考えられる。1つ目は、複数の連結可能部位をもつ原料を用いて、ポルフィリン(2.1.2.1)骨格を形成すると同時に環状構造を構築する合成手法である。もう一つは、ポルフィリン(2.1.2.1)の外周部へ官能基を導入し、ポルフィリン(2.1.2.1)単量体から環状構造を構築する合成法である。これまでに、ポルフィリン(2.1.2.1)の出発原料である、ジピロロリルベンゼンとアルデヒド基を2つ有する化合物から、縮合反応によって一気に環状ポルフィリン(2.1.2.1)多量体が得られることを見出した。これまでに、三量体および四量体の単離に成功している。また、得られた環状ポルフィリン(2.1.2.1)多量体のを様々な金属錯体に変換する手法も見出すことに成功した。一方、これまでに、原料であるジピロリルベンゼンに様々な置換基を導入し、ベンズアルデヒド誘導体と反応させることで様々な置換基を持つポルフィリン(2.1.2.1)の合成にも成功した。現在は、様々な置換基を持つポルフィリン(2.1.2.1)の物性評価を行うとともに、環状構造を構築法を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
環状ポルフィリン(2.1.2.1)の更なる誘導体化および機能開拓を目指して以下の研究を遂行する [1] 「環状ポルフィリン(2.1.2.1)多量体の合成法の確立」 本研究で開発した環状ポルフィリンの合成では、様々な架橋部位を組み込むことが可能である。環状化合物において、環サイズを自在にコントロールできる合成法を確立することは重要である。そこで、p-フェニル基やビフェニル基などを導入した環状ポルフィリンの合成を目指す。 [2] 「有機無機ハイブリッド型環状ポルフィリン(2.1.2.1)多量体の合成法の確立」 カテコールや1,2-ベンゼンジチオールは様々な金属イオンと錯体を形成することが知られている。そこで、これらの官能基の金属イオンとの錯形成能とポルフィリン(2.1.2.1)を組み合わせて金属イオン架橋有機-無機ハイブリッド型環状ポルフィリン(2.1.2.1)多量体の合成を試みる。そのために、架橋ベンゼン部位にヒドロキシル基、チオール基やカルボキシル基など金属イオンと錯形成可能な置換基を持つポルフィリン(2.1.2.1)誘導体の合成を試みる。さらに、ニッケルやパラジウムなどの様々金属イオンを配位させることで金属イオン架橋環状ポルフィリン(2.1.2.1)多量体の合成を試みる。 [3] ポルフィリン(2.1.2.1)の金属錯体が水素発生反応(HER)の触媒として有用であることが見出されつつある。しかし、ポルフィリン多量体とHER活性の相関については十分に研究されていない。そこで、本研究で合成する環状ポルフィリン(2.1.2.1)多量体を用いてHERの触媒活性を評価し、ポルフィリン(2.1.2.1)の構造と触媒活性の相関の解明を目指す。
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