研究課題/領域番号 |
22K05256
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35030:有機機能材料関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
森 裕樹 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 研究准教授 (20723414)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / 有機半導体 / n 型半導体 / 非フラーレンアクセプター / 光電変換効率 / π共役系分子 / n型半導体 / 低バンドギャップ |
研究開始時の研究の概要 |
これまでに開発された高性能有機機薄膜太陽電池 (OPV) の活性層材料は、合成コストが非常に高いといった問題点を有していた。そのため、次世代の再生可能エネルギーであるOPVの普及に向けて、短工程で合成可能な高性能 n 型半導体を開発することは極めて重要な課題である。本研究では、申請者が独自に開発してきた (E)-1,2-ビス(5,6-ジフルオロベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール-4-イル)エテン (FBTzE) 骨格を用い、複数の電子伝導パスを形成する高性能非縮環型 n 型半導体の開発をおこなう。最終目標として、18% の変換効率を示す高効率太陽電池の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
これまでに開発された高性能有機機薄膜太陽電池 (OPV) の活性層材料は、合成コストが非常に高いといった問題点を有していた。そのため、次世代の再生可能エネルギーであるOPVの普及に向けて、短工程で合成可能な高性能 n 型半導体を開発することは極めて重要な課題である。本研究では、研究代表者が独自に開発してきた新規骨格であるFBTzEおよびFOBTzEユニットを用い、複数の電子伝導パスを形成する高性能非縮環型 n 型半導体の開発をおこなう。 令和5年度では、前年度に引き続き、「中心アクセプターと二つの末端アクセプターが互いに積層可能な S 型構造」を有する新規 n 型半導体の合成をおこなった。これまでに研究代表者らが確立してきた手法により合成したFOBTzE骨格を出発原料とし、脱水素型カップリング、脱臭素化、ホルミル化およびKnoevenagel縮合を経て、目的のS 型構造を有する新規n型半導体の合成に成功した。 合成したn型半導体は700 nm付近に強い吸収を示し、約1.6 eVの小さなバンドギャップを有していた。また、-3.8 eVと低いLUMOレベルを有しており、OPVのn型半導体として適切な電子構造を有することが分かった。さらに、このn型半導体を代表的な広いバンドギャップを有するp型半導体ポリマーと組み合わせたOPVを作製し、その特性を評価したところ、現時点で約1%変換効率を示した。 一方、令和5年度では、上記と並行して、目的分子の一つであるH型構造を有するn型半導体の合成にも着手した。現時点において、合成に用いる各ユニットの合成をおおむね達成しており、今後はそれぞれのユニットの合成を完了し、これらを連結して目的分子の合成を達成する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度は、文献で報告されていたのとは異なり、予定していたドナーユニットの安定性が予想外に低く、目的分子の合成を達成できていなかった。しかしながら、今年度は安定なドナーユニットへと変更することで目的のS型分子の合成を達成できた。また、合成した新規n型半導体の光吸収特性や電子構造、OPVへの応用まで実施することができ、昨年度の遅れを取り戻すことができた。 一方、上記と並行して今年度取り組む予定であったH型分子の合成にも着手しており、これの合成に必要なユニットの合成を進めることができた。一部を除き、ユニットの合成はおおむね達成しており、順調に進んでいるといえる。残り一つのユニットが合成できればこれらを連結するのみであるため、昨年度の遅れを考慮するとおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、S型分子について、詳細な薄膜構造の調査により、OPV特性との相関を明らかとする。得られた構造-特性相関を基に分子設計のフィードバックをおこない、新たなS型分子の合成に着手する。用いるドナーあるいは末端アクセプターユニットに光吸収特性やエネルギーレベルを変化させる官能基を導入することで電子構造の制御をおこなうほか、可溶性側鎖の長さや形状などを最適化することで薄膜構造の制御も同時におこなう。 一方、すでに合成したユニット同士を連結することでH型構造を有する新規n型半導体の合成を達成する。その後、得られた新規n型半導体のエネルギーレベルや熱安定性などの基礎物理化学特性の調査をおこなう。その後、既存のp型半導体ポリマーと組み合わせたOPVへと応用し、その特性を評価する。また、実際のOPVの薄膜構造を調査し、太陽電池特性と薄膜構造との相関を明らかとする。 これらの研究を通じて、高性能n型半導体を開発するための分子設計指針を打ち出し、最終的に18%の変換効率達成を目指す。
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