研究課題/領域番号 |
22K05258
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35030:有機機能材料関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
村上 裕人 長崎大学, 工学研究科, 教授 (30274624)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | イオン液体 / エレクトロクロミズム / 酸化還元活性イオン液体 / 多色化 |
研究開始時の研究の概要 |
ビオローゲン(V)型イオン液体(エレクロトクロミック(EC)物質)とフェロセン(Fc)型イオン液体(対極補償物質)から構築した無希釈・無溶媒系イオン液体ECデバイスが,ECデバイスの欠点を一挙に解決できるだけでなく,EC物質の高濃度化により,ECデバイスの薄型化,フレキシブル化,および高速応答化を達成できると考えている。本研究では,①V-Fc連結型イオン液体やV型イオン液体の分子設計の最適化によるそれぞれのイオン液体の低粘性化とそれらのECデバイスの高速応答化,②V型イオン液体の分子設計の多様性によるECデバイスのマルチカラー化,③ゾル―ゲル転移を利用したECデバイスの省電力化を目指す。
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研究実績の概要 |
エレクトロクロミズム(EC)デバイスを作成するためには,一般に,EC物質,対極補償材料,支持電解質,溶媒が必要であるが,溶媒の揮発,EC材料や対極補償材料の分解,物理的なクラックなどによる損傷などの欠点が潜在している。この欠点も克服するために,不揮発性,難燃性,化学的安定性,高いイオン伝導性をもつビオローゲン(V)型イオン液体とフェロセン(Fc)型イオン液体の利用を考えた。これらを用いることで,無希釈・無溶媒系イオン液体ECデバイスが作製でき,ECデバイスの欠点を一挙に解決できるだけでなく,EC物質の高濃度化により,ECデバイスの薄型化,フレキシブル化,および高速応答化を達成できる。 本年度は,研究計画の目標1のフェロセン-ビオロゲン(Fc-V)連結型イオン液体(IL)のEC材料としての構造最適化について検討を行った。 これまでに合成したFc-V連結型ILは,ビオロゲンとフェロセンの間のスペーサー長が炭素鎖11(FcC11VC1)であった。今回は,素鎖6(FcC6VC1)および炭素鎖11の内5番目の炭素を酸素原子に置き換えたFc-V連結型IL(FcC4OC6VC1)を合成した。 合成した化合物のEC挙動を検討した結果,FcC6VC1の着色効率はFcC11VC1のそれと比べ5分の1程度まで減少していたのに対し,FcC4OC6VC1の着色効率は1.3倍に増加していた。FcC6VC1は他の2つの化合物と比べスペーサー長が短いため粘性が高くなっていた。このため着色に十分な電子移動ができなかったと考察した。FcC11VC1とFcC4OC6VC1のそれぞれの見かけの拡散係数から簡易的に求めた電子移動速度は,それぞれ7.0×104と2.4×105 M-1 s-1であった。スペーサーの間に酸素原子を入れたエーテル型にするとスペーサーの柔軟性が向上することがわかっている。このスペーサーの柔軟性が電子移動速度の上昇に起因していると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たにFc-V連結型ILを2種類合成し,既存のFc-V連結型ILとそれらのEC挙動について検討を行った結果,FcとVの連結部のスペーサー構造にエーテル結合を導入してその柔軟性を向上させることでEC材料としての構造の適正化に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
目標1の構造最適化に取り組みとして,Vの対イオンとしてFc型TFSIを用いることを考えた。これにより,Vの構造多様性をそのままFc-V一体型イオン液体の構造多様性へと置き換えることができる。 目標2のマルチカラーECデバイスを開発するため,EC物質の合成とそれらのEC挙動,特に色彩と着色の可逆性について検討を行う。具体的には,ピリジルピリジニウム誘導体や結合位置の異なるビピリジニウム誘導体(例えば,オルト位-オルト位,メタ位-メタ位,メタ位-パラ位などで連結したビピリジニウム誘導体)を合成する。次に,サイクリックボルタモグラム測定により化合物の酸化還元挙動についての知見を得る。色の発色・退色,コントラストなどについては,繰り返し定電位電解により検討する。その際,着色の詳細(波長,吸光係数など)を知るために,定電位電解時の吸収スペクトルの“その場”測定を行う。また,吸収(ΔAbs)が飽和するまでのタイムコースも測定し,色の拡散について検討する。さらに,定電位電解時の電気量(Q)のタイムコースを測定することで,差吸収スペクトル測定の結果と合わせて着色効率(Abs/Q)を見積もる。 目標3のゾル-ゲル転移を利用したECデバイスの省電力化に向けた取り組みとして,アゾベンゼン型イオン液体を合成し,ポリマーのゾル-ゲル転移のトリガーになり得るのかについて検討を始める。ゾル―ゲル転移については,透過スペクトル測定や示差走査熱量測定により検討する。
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