研究課題/領域番号 |
22K05263
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36010:無機物質および無機材料化学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
會澤 純雄 岩手大学, 理工学部, 准教授 (40333752)
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研究分担者 |
佐藤 久子 愛媛大学, 理学部, 研究員 (20500359)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 層状複水酸化物 / ナノ炭素材料 / ドラッグデリバリー材料 / 抗がん剤 / ナノ炭素 / ドラッグデリバリーシステム |
研究開始時の研究の概要 |
薬の効き目の向上や副作用を防ぐために、薬を必要としている体の各部位へ正確に薬を運ぶ材料の研究開発が行われている。本研究課題ではナノメール(10億分の1メートル)サイズのサンドイッチ状の材料と炭素材料を組み合わせることで、医薬学的用途を目指した高性能な薬を運ぶナノ材料創製を目指す.
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研究実績の概要 |
本年度は昨年度から引き続き、DD材料に応用可能な粒子サイズ100~200 nmかつ高分散性の抗がん剤/LDHの合成を達成するため、無溶媒、常温、常圧下でDD材料に対応可能な粒子サイズのLDHを合成できるメカノケミカル法を用い、LDHへの抗がん剤(5-フルオロウラシル:5-FU)の取り込みを検討した。また、NCMとしてζ(+または-)ナノダイヤモンド分散液((+または-)ND)を所定量添加し、同方法によるND/5-FU/LDHの合成を試み、粒子サイズや分散性、5-FUの取り込み挙動に及ぼすNDの影響を検討した。 5-FU/LDHと(-)ND/5-FU/LDHの面間隔値は、NDの添加に影響されず、それぞれ0.80 nm、0.81 nmであり、LDH層間への5-FUの取り込みが示唆された。5-FU/LDHの一次粒子サイズは250~500 nm、(-)ND/5-FU/LDHの粒子サイズは、正電荷のLDH表面への負電荷の(-)NDの吸着による静電相互作用反発の減少に伴い、400~500 nmに増加することが示された。つぎに、(+)ND/5-FU/LDHの合成を検討した結果、XRDからその面間隔値は0.79 nm、FT-IRから5-FU由来の吸収ピークが観察され、LDHへの5-FUの取り込みが示された。(+)NDを添加することで、粒子サイズは100~200 nmの一次粒子が観察されたが、凝集体も生成し平均粒子サイズは2000 nmであった。TEM写真から、NDが5-FU/LDHに吸着している様子が観察された。 本研究の内容は、2023 Joint Meeting of the Tohoku Area Chemistry Societiesおよび第66回粘土科学討論会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の年度計画の目標は高分散性のNCM/5-FU/LDHの合成であった。高分散性の5-FU/LDHの合成は、昨年度メカノケミカル法によりその合成と粒子サイズ制御を確立できた。本年度は5-FU/LDHの粒子サイズに及ぼすNCM(ζ(+または-)ナノダイヤモンド分散液(+または-)ND)の影響を調べた結果、目標としている粒子サイズに比べ、凝集体形成にともない、400~2000 nmと大きくなる傾向が観察された。また、NDの添加量を調整することで、ND/5-FU/LDHの粒子サイズが小さくなる傾向も観察されていることから、ND/5-FU/LDHの合成条件を検討することで、目標値の粒子サイズの大きさを得られると予想している。また、NCMの一つであるカーボン量子ドット(CQDs)の合成も検討しており、CQDs/5-FU /LDHの合成も検討をしているが、CQDsとLDHの複合化の観察が難しいため、来年度の課題としている。以上のことから、本課題はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
ナノ炭素材料(NCM)は、生態的合成が高く、低毒性であることから、生体・医療分野への応用に適した材料である。とくにナノダイヤモンド(ND)やカーボン量子ドット(CQDs)は、数nmから数十nmの粒子サイズで、蛍光特性や化学的に不活性な性質を持ち、表面電荷の特徴から様々な修飾、拡張性、柔軟性、汎用性を兼ね備えたDD材料としての可能性が期待されている。そこで、本課題ではNCMをLDHの表面に結合させることにより、薬剤/LDHの凝集の抑制、蛍光プローブとしての利用、さらにLDHの表面に生体分子を結合させる足場としての利用を考えている。R6年度は、粒子サイズを100~200 nmに制御したNCM/5-FU/LDHの合成とそこからの5-FUの放出挙動に及ぼす粒子サイズおよびNCM修飾の影響を調べ、5-FUの徐放性について検討する。また、5-FU/LDHおよびNCM/5-FU/LDHのがん細胞に対する細胞増殖抑制効果や細胞内動態の評価を実施する。 具体的には、メカノケミカル法により5-FU/LDHを合成し、そこにNDやCQDsなどを添加し、静電相互作用により5-FU/LDHの表面にNCMを結合させてNCM/5-FU/LDH合成する。その際、NCM/5-FU/LDHの粒子サイズに及ぼすNCM:抗がん剤:LDHの質量・固液比、合成pH、NCMの粒子サイズの影響などを系統的に調べ、高分散性のNCM/5-FU/LDHの合成法の確立を目指す。また、CQDsは既知の方法を用いて合成する計画としているが、CQDsの粒子サイズや分散性、表面電荷は本課題の重要なポイントになると考えているため、CQDsの合成についても引き続き検討する。生成したNCM/5-FU/LDHの細胞増殖抑制効果などの評価を実施する。
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