研究課題/領域番号 |
22K05272
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36010:無機物質および無機材料化学関連
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研究機関 | 愛知工科大学 |
研究代表者 |
近藤 敏彰 愛知工科大学, 工学部, 教授 (20513716)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | アノード酸化 / 酸化ガリウム / 金属ガリウム / 単結晶 / アニオン / ドーピング / 複合アニオン化合物 / 金属酸化物 / ナノポーラス / エネルギー変換 |
研究開始時の研究の概要 |
アノード酸化プロセスにもとづいた酸化チタンなどの光触媒の形成手法,および,金属酸化物に微量のアニオンを導入し光触媒特性を向上させる手法が報告されている。しかし二種類以上のアニオンを主要な構成元素とした複合アニオン化合物の作製例は,報告がない。これはこれまでアノード酸化が多元素化合物の合成法として本質的に認識されてこなかったことに加え,金属酸化物へのアニオン導入のメカニズムが未解明なこと,そしてアニオンの最適な組み合わせの設計指針がないことが主な理由として考えられる。本課題では,これら課題の解決に取り組み,アノード酸化にもとづいた複合アニオン化合物作製手法の提案を試みる。
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研究実績の概要 |
金属ガリウムを酸性電解液中にてアノード酸化すると,ガリウム表面にはナノ細孔配列を有するポーラス酸化ガリウム層が形成されることが報告されている。しかし,金属ガリウムのアノード酸化に関する報告の数は,アルミニウムやチタンなど他金属のアノード酸化の場合に比べて非常に少ない。これは金属ガリウムの融点が30℃と他の金属に比べて低く,取り扱いが困難なことに由来すると考えられる。このため,ガリウムのアノード酸化メカニズムは,未だ明らかになっていない。本課題では,まず,金属ガリウムの基本的なアノード酸化挙動について調査を実施した。金属のアノード酸化挙動を調査する場合,研究の初期段階では,単結晶金属がよく用いられる。しかし金属ガリウムの単結晶は販売されておらず,単結晶の作製手法も報告がない。そこで本課題では,単結晶ガリウムの作製方法から検討を始めることとした。詳細な検討の結果,単結晶ガリウムを得ることが出来た。異なる結晶配向の単結晶ガリウムにアノード酸化を施したところ,結晶方向によってナノ細孔の成長方向が異なる様子が観察された。このことからガリウムのアノード酸化により形成されるポーラス酸化ガリウムのナノ細孔の成長方向は,金属ガリウムの結晶方向に大きく依存することが明らかとなった。このような現象は,他金属をアノード酸化する場合では報告がなく,今のところガリウム特有の現象だと考えている。金属のアノード酸化により形成される金属酸化物層には,アノード酸化に用いられる電解液中のアニオンが取り込まれることが知られている。複合アニオン化合物の作製を試みるにあたり,ポーラス酸化ガリウムの組成分析は必要不可欠である。本検討では,ポーラス酸化ガリウムに取り込まれたリン酸アニオンの空間分布を調査した。その結果,リンがサンプル全域にわたって均質に分布している様子が観察された。得られた成果は,国内の学会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複合アニオン化合物とは,複数のアニオンを主成分とした化合物である。ガリウムは,様々な金属と合金を作りやすく,また他金属の場合と同様,電解液に含まれるアニオンを金属酸化物層へ導入できるといった特徴を有することから,ガリウムもしくはガリウム合金をアノード酸化することで複合アニオン化合物が形成可能と考えている。ガリウムのアノード酸化により複合アニオン化合物を形成するには,まず,高純度の金属ガリウムのアノード酸化挙動を観察し,ガリウムのアノード酸化メカニズムを理解することが重要だと考えられる。そのためには理想的なアノード酸化反応が期待できる環境を用意する必要があり,それには単結晶ガリウムの適用が望まれる。単結晶ガリウムは販売していないため,独自に作る必要がある。本課題では,詳細な検討の結果,単結晶ガリウムの作製手法を確立し,その作製に成功した。単結晶ガリウムの適用により,ガリウムのアノード酸化挙動に関して理解が大幅に進んだと考えられる。複合アニオン化合物の開発には,酸化ガリウムの組成を様々な視点から分析する手法が必要である。本年度は,いくつかの組成分析法を試みた結果,走査透過電子顕微鏡による解析法が適していることが明らかとなった。以上のように,ガリウムの理想的なアノード酸化環境の構築が進み,得られたガリウム酸化物の組成分析法として有効な手法が見つかるなど,複合アニオン化合物を作製するための基礎はおおよそ整いつつあると考えられ,本課題はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度,ポーラス酸化ガリウムの細孔成長方向が金属ガリウムの結晶配向に依存している様子が観察された。次年度は,金属ガリウムの結晶配向制御方法について検討を行い,結晶配向とナノ細孔の成長方向の関係を明らかにしていく。特に,結晶配向の制御方法やアノード酸化条件(主に化成電圧)に関して詳細に検討を行う。 アノード酸化プロセスによる複合アニオン化合物の作製を目的に,ガリウム合金のアノード酸化に関して検討を行う。ガリウムは様々な金属と合金を形成するが,まずはガリウム・インジウム合金のアノード酸化に関して検討を行う。リン酸水溶液中にてアノード酸化することで,ガリウム・インジウム合金の酸化物の形成と酸化物へのリン酸アニオンの導入が期待される。ガリウム・インジウム合金は,室温下で液体状態をとるが,15℃以下に過冷却することで固体となる。ガリウム・インジウム合金を固化させ,アノード酸化を行うことで,ガリウム・インジウム合金の酸化物の形成を試みる。初期的な検討として,ガリウムとインジウムのそれぞれをアノード酸化可能な電解液を探索する。両方の金属をアノード酸化可能な電解液を用いて合金のアノード酸化を試みる。また電解液の濃度,種類,浴温や化成電圧を変化させることで,酸化物へのリン,硫黄,窒素などの導入量の制御を試みる。ガリウム・インジウム合金以外の合金(例えば,ガリウム・インジウム・スズ合金)や化合物半導体のアノード酸化に関しても検討を試みる。
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