研究課題/領域番号 |
22K05283
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木村 勇太 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (60774081)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | サイクル劣化 / CT-XAFS / オペランド三次元解析 / 全固体電池 / 3次元化学分析 / オペランド |
研究開始時の研究の概要 |
全固体電池は、高い安全性と高容量・高出力化の両立が可能とされる次世代型蓄電池である。しかしながら、現在のところ、充放電サイクル時の顕著な容量・出力の劣化が、全固体電池の実用化を妨げる大きな課題の一つとなっている。本研究では、投影型CT-XAFS法および結像型ナノCTXAFS法に基づく反応分布の3次元観察技術を用いて、充放電サイクル時の反応分布をマルチスケールかつオペランドで観察することで、充放電反応に寄与できない活物質粒子が、ミクロ・メゾのそれぞれのスケールにおいて、いつ、どこで、どのように生じるかといった、サイクル劣化のメカニズムを明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
全固体電池は、高い安全性と高容量・高出力化の両立が可能とされる次世代型蓄電池である。しかしながら、現在のところ、充放電サイクル時の顕著な容量・出力の劣化が、全固体電池の実用化を妨げる大きな課題の一つとなっている。そこで本研究では、申請者らがこれまで開発してきた、CT-XAFS法に基づく反応分布の3次元観察技術を用いて、充放電サイクル時の反応分布をオペランドで観察することで、サイクル劣化のメカニズムを明らかにすることを目的としている。当該年度においては、投影型CT-XAFS法を用いて、モデル全固体電池の充放電サイクル時の容量劣化のオペランド三次元観察を行った。さらに、CT-XAFSにより得られたデータをもとに、全固体電池合剤電極内の局所的な容量劣化が、電極内のどこで、いつ、どのように生じるかを、電極微構造や過去の充放電履歴と関連づけて解析する手法、および電極内の局所的な容量劣化と電極全体のマクロな容量劣化の関係を解析する手法を開発した。モデル全固体電池は、活物質にLi(Ni,Mn,Co)O2 (NMC)、固体電解質にLISICON(Li3.75Ge0.75P0.25O4)-Li3BO3アモルファス電解質を用いて作製した。投影型CT-XAFS測定は、SPring-8のBL37XUで行った。観察領域、空間分解能、時間分解能はそれぞれ、530 x 530 x 45 um3、3 um、20 min.であった。測定データの解析に必要なコードは、Pythonを用いて作成した。一連の研究により、既存の手法では得られなかった、サイクル劣化時の容量劣化機構を解明する上で重要な知見を得ることが可能となった。そのため、当該年度に開発した測定・解析手法は、優れたサイクル特性を有する電池の開発に貢献することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、(a)CT-XAFSCT-XAFSによる反応分布のオペランド3次元観察、(b)実験データに基づく反応分布と電極微構造の相関分析、(c)電極構造情報に基づくシミュレーション、(d)電気化学測定の4つを柱として進めている。これらのうち、当初の計画通り、当該年度中に、(a)、(b)、および(d)を実施した。これにより、CT-XAFS測定およびそれにより得られるデータからサイクル劣化機構を解析するための方法論を確立した。一連の成果は、一報の論文にまとめ、投稿済みである。以上の理由により、本研究課題は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、結像型ナノCT-XAFS法を用いて、より高空間分解能での容量劣化のオペランド三次元観察を行っていく。これにより、どのような形状、大きさ、分布の活物質粒子でより劣化が生じやすいか、どのような粒子界面で劣化が生じるかといった、サイクル劣化に関するよりミクロスコピックな知見が得られることが期待される。本年度に行なった投影型CT-XAFSによるメゾスコピックな劣化観察と、結像型ナノCT-XAFSによるミクロスコピックな観察により得られる知見を協調的に活用することで、全固体電池のサイクル劣化が、いつ、どこで、どのように生じるかを、マルチスケールで評価できると考えられる。さらに、個別要素法などのシミュレーションを行うことで、容量劣化機構の定量的な解析を行う予定である。
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