研究課題/領域番号 |
22K05289
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
田中 将嗣 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (90597650)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | アンモニア関連機能性材料 / アンモニア / エネルギーキャリア / 無機機能性材料 |
研究開始時の研究の概要 |
アンモニアは肥料や工業用の用途の他に、カーボンフリーの燃料実現に向けた取り組みが盛んである。エネルギーキャリアとしての活用を想定した場合、その材料としての利用価値を向上する方法の開発は重要である。 本研究ではアンモニアを使った窒化物合成技術を応用し、アンモニアに内在する化学的な特性を利用した固体材料と新概念の創出を目指す。 プロトン伝導体やイオン伝導体開発、アンモニア吸蔵材料開発などへも波及する。
|
研究実績の概要 |
アンモニアは肥料や工業用の用途のほかに、カーボンフリーの燃料実現に向けた取り組みが盛んである。エネルギーキャリアとしての活用を想定する場合、アンモニア自身の材料としての性質・利用価値向上も重要な研究といえる。本研究ではアンモニアを使った無機化合物合成技術を応用し、遷移金属アミドと遷移金属錯体塩を利用して解離平衡状態を固体中で実現しようとしている。 2023年度は遷移金属ハロゲン化物にNH4Clを配位させる反応を試み、遷移金属錯体アンモニウム塩の系統的な合成を行った。四塩化ジルコニウムZrCl4と塩化アンモニウムNH4Clを真空封管し、適切な温度勾配を付けた電気炉に配置すると単結晶が合成できた。これによって(NH4)2MCl6 (M = Ti, Zr, Hf)のすべての単結晶合成法を確立した。 またこれらの結晶を1気圧のアンモニアガス下に保持すると、著しくアンモニアガスを吸蔵し、吸蔵後の加熱によりそれらを放出することが判明した。X線回折と熱重量測定・放出ガス分析によって放出後はもとの化合物が回収されることが明らかになった。そこで高精度に定量的評価を行うための基盤形成にも尽力し、示差熱同時熱分析装置を研究室内に導入した。これらの成果は日本金属学会にて発表した。 上記検討に加え、当初計画していた高圧力を用いた合成反応にも着手した。上記で得られた単結晶のうち、遷移金属種を固溶させることができればアンモニアの放出温度を細かくチューニング可能であると考え、固溶体合成に取り組んだ。常圧力下では完全に相が分離してしまうことが判明したが、3GPa程度の高圧力をかけた状態で800℃程度の高温から室温まで急冷することによって固溶体の単結晶が得られることが判明した。この反応は次年度以降にも継続して検討する予定である。また原理検証で得られた成果は国際会議で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は遷移金属ハロゲン化物へNH4Clを効率よく配位させて単結晶化する手法が確立され、当初計画していた結晶成長反応機構の解明が進んだ。さらにはここで得られた単結晶がアンモニアを著しく吸蔵することも発見でき、エネルギー貯蔵の観点において影響が大であると認識している。次年度以降に着手を計画していた高圧力を利用した合成も進めることができ、上記結晶の固溶体合成に成功してアンモニア吸蔵材料の開発研究も広がりを見せている。さらには当初計画では自身の研究室内での分析を断念していた熱分析装置が導入でき、想定していたよりもはるかに幅広い研究が行えるようになった。これらのことより、当初の計画以上に進展していると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に得られた、四塩化チタンでのNH2基の置換反応に関する知見と、本年度得られた遷移金属錯体アンモニウム塩合成に関する知見を融合し、本研究の主目的である自己解離固体の合成検討を行う。合成反応制御の検討において、本年度導入した示差熱同時熱分析装置を用いた検討項目も追加する。出発物質や合成反応後に得られる化合物の熱分解過程、および吸熱・発熱反応の有無等を知り、化学反応経路の推定に役立てる。 また「関連物質の機能性開拓」の点においても、新たな糸口が見いだされつつある「アンモニア吸蔵特性」を主な研究対象として並行する。検討には上記分析装置を用い、アンモニア吸蔵した化合物の試料加熱過程における重量変化を測定して貯蔵量を定量的に見積る。さらに遷移金属種を変えた場合等においても特性の系統的な評価を行う。 これらの検討によって得られた成果は論文としてまとめる予定である。
|