研究課題/領域番号 |
22K05297
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
錦織 広昌 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (00332677)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 光触媒表面 / プロトン移動 / 水素生成 / 有機色素プローブ / 過渡吸収分光法 / 時間分解蛍光分光法 / 有機色素 / 過渡分光法 |
研究開始時の研究の概要 |
光触媒を用いて水を分解することにより水素生成が可能であるが、実用上、反応効率・持続性に問題が残る。この解決法として、生成反応の最終段階を決定づける光触媒表面の過程をモニターしつつ制御する技術が有効であるが、確立されていない。本研究では、プロトン移動を円滑にするため光触媒表面をホスホン基で修飾し、水素生成反応の重要な過程である光触媒表面でのプロトン移動過程を、有機色素をプローブ分子として用いた高感度かつ高時間分解能の蛍光分光法により観測し、そのダイナミクスを明らかにする。これにより光触媒表面の水素生成能の評価方法を創成する。
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研究実績の概要 |
光触媒水分解反応において水素生成効率向上のためには、プロトンの授受を促進する官能基で触媒表面を修飾し、表面上のプロトンの移動過程を的確に把握しつつ、制御することが不可欠である。さらに、反応全体の理解とその制御のためには、光触媒内部での初期過程とそれに続く光触媒表面での分子の過渡的な反応過程、定常状態での水素生成過程を関連付けて議論することが重要である。以上にあたっての本年度の実施内容は以下のとおりである。 1. 水からの水素生成反応におけるプロトンの移動過程のin situ過渡分光観測(時間分解蛍光分光法) 光触媒表面での分子反応の理解のために、水からの水素生成反応におけるプロトンの供給過程について、酸性度の変化に敏感な蛍光性有機色素であるフルオレセインをプローブ分子として用いた時間分解蛍光分光法による解析を引き続き行った。酸性度が減少する過程が光パルス照射後10ピコ秒程度の時間スケールで進行していることより、光触媒表面に供給されたプロトンの還元反応の初期過程が観測された可能性がある。 2. プローブ分子の光吸収過程と蛍光過程の対応付け 同プローブ分子を用いた過渡吸収測定により、フルオレセインのアニオン種およびジアニオン種のパルスレーザー光励起による基底状態ブリーチングの回復挙動を解析し、プロトン移動(酸塩基平衡の変化)かつ蛍光過程に関係する化学種の挙動についての情報を抽出した。過渡吸収と時間分解蛍光の測定結果を対応付けし、光触媒表面におけるプロトン移動ダイナミクスを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の遅れを取り戻し、当初予定していた、光触媒表面にプローブ分子として吸着したフルオレセインの時間分解蛍光測定を進めることができ、さらに海外の研究室の協力のもとに過渡吸収測定も行うことができた。これらの観測結果の対応付けによりプロトンの反応ダイナミクスを明らかにすることができたため、おおむねね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
光触媒表面での反応過程の観測データをより確実にしつつ、表面修飾がプロトン移動過程に及ぼす影響について検討を進め、in situ観測手法としての時間分解蛍光分光法の有効性を検証する。 具体的には、光触媒表面に修飾する分子の官能基をホスホン基からスルホ基、カルボキシル基、アミノ基等に変えて時間分解蛍光測定を行い、官能基のプロトン供与能の違いとプロトン移動過程、水素生成効率の関係を調べ、測定により得られる情報の有効性を検証する。また、動的な電気化学的手法により、ミリ秒~秒オーダーでの表面物質移動の速度論解析による検証も行う。 以上により、光触媒反応におけるプロトンの移動過程の観測方法について、有機プローブ分子を用いた時間分解蛍光分光法の高い感度特性および簡易測定法としての有効性を確認する。
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