研究課題/領域番号 |
22K05317
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37010:生体関連化学
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
磯部 寛 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任准教授 (00379281)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | 光化学系II / 酸素発生反応 / Mnクラスター / アミノ酸残基 / 機能発現 |
研究開始時の研究の概要 |
光合成Mnクラスターによる水分解・酸素発生反応は極めて低い過電圧で起こる。基質水分子が結合した高酸化状態クラスターの内部空間で金属と基質との間に共有結合性が高まる(電子移動の活性化エネルギーが低下する)と同時に、特定の協同的ダイナミクスが自ずと発現し、クラスター全体の構造変化と多電子反応が結合する(再配置エネルギーが減少する)現象を見出した。この高活性反応場は、絶対的に保存されたアミノ酸残基の側鎖官能基により触媒の構造や電子状態変化が制御されることで効果的に生み出される。本研究では、時間の経過に伴って表れるアミノ酸残基の動的な構造変化が、どのようなメカニズムで、どのように有効なのかを解明する。
|
研究実績の概要 |
光化学系II複合体(PSII)では、補因子である多核Mn4Caクラスターの構造と機能を維持するために、その第一配位圏アミノ酸残基が厳密に保存されている。特に、D1-Glu189、D1-Glu333、CP43-Glu354の3つのグルタミン酸残基は、側鎖が長く、構造的に柔軟性に富んでいる。最近のXFEL研究により、S2からS3への状態遷移過程において、これらのアミノ酸残基の再配置が引き金となり、Mnクラスターの一電子酸化と触媒サイトへの新たな基質水分子の結合が誘発されることが明らかになった。本研究では、DFT計算を用いて、時間の経過に伴うアミノ酸配位子の構造変化がMnクラスターの様々な反応中間体の相対安定性に及ぼす影響を調べ、S2からS3への遷移およびS3からS2への失活過程における側鎖の柔軟性の機能的役割を理解することを試みた。解析の結果、側鎖の相対的な動きによって、Mnクラスターを保持する空洞のサイズや形状が変化し、その結果、クラスター構造が異なる反応中間体の相対エネルギーや新しい水分子の捕捉能力に非常に大きな影響を与えることが明らかになった。これは、側鎖が柔軟であることで、反応中に発生するクラスターの変形に対応することができることを意味している。この研究により、タンパク質のダイナミクスが、Mnの酸化還元と水分子の結合/解離の順序を制御することで、触媒反応を効率的に制御する可能性があることが示唆された。この解釈は、S3からS2への失活時、あるいはS3状態にあるPSII試料に近赤外光を照射した際に観測される特徴的なg ~ 5のEPR信号は、還元(S2)状態のMnクラスターに新たな水分子が結合した場合にのみ発生するという計算結果からも正当化できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mnクラスターの第一配位圏にあるアミノ酸残基の側鎖の柔軟性が果たす機能的役割について、理論的な洞察が得られた。さらに、S3からS2へ失活するときにのみ現れるg ~ 5付近のEPR信号の起源が明確になり、理論と実験が一致することで、「柔軟性」効果を検証することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
アミノ酸残基の側鎖の柔軟性と触媒反応の関連性について、統計的手法を用いてより定量的に解明することを試みる。さらに、第二配位圏にあるアミノ酸残基や補因子(例えば、Ca2+、Cl-イオンなど)が果たす役割についても検討する。
|