研究課題/領域番号 |
22K05323
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37010:生体関連化学
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研究機関 | 公益財団法人サントリー生命科学財団 |
研究代表者 |
三浦 薫 (野村薫) 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・構造生命科学研究部, 主席研究員 (90353515)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 膜の形態変化 / 糖脂質 / 脂質二重膜 / 膜突起 / 巨大リポソーム / MPIase / タンパク質膜挿入 / 固体NMR |
研究開始時の研究の概要 |
大腸菌内膜に存在するMPIaseは膜蛋白質の膜挿入を促進させるユニークな活性を持つ糖脂質である。最近我々は、MPIaseが脂質二重膜にチューブ状の突起や陥入を形成させることを見出した。これまでに、様々な形態制御蛋白質による形態変化の研究が進んでいるが、MPIaseのように長鎖の糖鎖を持った糖脂質単独での膜の形態変化は報告されていない。本研究では、糖脂質MPIaseの膜形状制御メカニズムを明らかにし、その生物学的な意義を理解する。
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研究実績の概要 |
大腸菌内膜に存在するMPIaseは膜タンパク質の膜挿入を促進させるユニークな活性を持つ糖脂質である。最近我々は、MPIaseが脂質二重膜にチューブ状の突起を形成させることを見出した。初年度に引き続き、MPIaseが脂質二重膜の形状を変化させる原理を物理化学的手法により解析し、膜突起形成機構を明らかにした。 1) 膜上のパッキングの強さの分布解析:膜環境感受性色素を膜に入れて、MPIaseにより引き起こされる膜上でのパッキング強度の分布を巨大リポソーム(GUV)の各位置における蛍光スペクトルの波長シフトにより観測した。予想に反してパッキング強度はチューブが形成されているGUV膜全体に渡って均一であり、膜の形態変化はパッキングには依存していなかった。 2)MPIaseの膜上での局在分布解析:脂質平面膜上にMPIaseを加えた試料に対し、MPIase抗体を用いてMPIaseの局在分布を蛍光顕微鏡で観測した。MPIaseがないと見えなかった大きな輝点がMPIase存在下ではいくつも観測され、MPIaseが膜上で凝集体を形成することを示すことができた。 3)MPIase会合体の微細構造観察:脂質平面膜上にMPIaseを加えることにより形成される構造体の微細構造を高速AFMを用いて観測することに成功した。興味深いことに、いくつもの構造体の中心に大きいくぼみができている様子が観測され、MPIaseにより誘起される膜上におけるチューブ形成との関係性が示唆された。 4)大腸菌外膜に存在するECAによるチューブ形成観察:大腸菌外膜に存在するECAもMPIase同様に膜にチューブ構造を誘起するかどうかを調べるため、大腸菌からのECAの抽出、精製を試みた。かなり難航したものの、大腸菌外膜からはある程度の純度までは精製出来ていることをNMRやドットブロットで確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記入した通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
MPIaseが膜の突起形成を誘起する機構を物理化学的手法により明らかにした後に、MPIaseが存在する大腸菌内膜において、MPIaseによる膜形状制御は膜環境とどのような影響を与えあっているか、共存因子の有無や形態変化の生物学的意義について理解する。 1) 蛍光基質タンパク質と蛍光標識MPIaseの共局在観察:MPIaseの膜挿入基質であるTOM5の蛍光標識体をMPIaseによりチューブを形成しているGUVに加えて、基質タンパク質とMPIaseが膜挿入段階において膜の突起部分に共存しているかを蛍光顕微鏡により観察する。このことにより、チューブ形成の膜挿入における意義を検討する。 2) 大腸菌外膜に存在するECAによるチューブ形成観察:大腸菌外膜にはECAやLPS等の糖脂質が多く存在し、外膜の外葉をびっしりと覆っている。一般に大腸菌は外膜成分で出来ている膜小胞を放出するが、これはLPSが大腸菌膜を湾曲させることで形成されると考えられている。ECAはMPIaseに類似の構造をもつことより、膜を湾曲させたりチューブ構造を誘起させることで膜小胞の形成に関わっているものと考えられる。そこで、まずECAをGUVの外側から加えて、MPIase同様にチューブを形成するかを蛍光顕微鏡により観察する。もしチューブが確認された場合は、ECAを枯渇させた大腸菌株で膜小胞の放出の減弱がみられるかどうかを評価し、大腸菌での膜小胞形成にECAが寄与しているかを検討する。 3) 大腸菌細胞質内在分子がMPIaseによるチューブ形成に与える影響の検討:MPIaseにより突起が形成されているGUVにさらに大腸菌細胞質ライセートを加え、その突起形成の変化を蛍光顕微鏡により観察する。もし変化があれば、要因となる分子を特定し、大腸菌内で起こりえる内在性分子による形態変化への影響を検討する。
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