研究課題/領域番号 |
22K05336
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37020:生物分子化学関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
不破 春彦 中央大学, 理工学部, 教授 (90359638)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 全合成 / 構造活性相関 / 海洋天然物 / マクロリド / 細胞毒性 / 立体配座 / マクロ環 / 構造改変 / ハイブリッド構造化 / 立体構造活性相関 |
研究開始時の研究の概要 |
海洋産マクロリドは特異で強力な生物活性を発現することから天然物創薬シーズとして期待される。本研究では抗がん性海洋産マクロリドについて、独自に開発した触媒的連続反応や渡環反応を活用した斬新かつ効率的な化学合成による実践的供給法の開発を行う。また、マクロリドが立体反転など「小さな」構造改変により分子全体の三次元構造が大きく変化することに着眼し、合成後期における構造改変による立体配座制御を行い、生物機能との相関を解析する。最後に類縁天然物間のハイブリッド構造化による新規生物活性物質の創製により、天然物を超える活性強度と安定性を示す化合物の探索を目的とする。
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研究実績の概要 |
本年度は海洋マクロリド天然物エニグマゾールAの構造類縁体である15-epi-エニグマゾールAと15-epi-15-O-メチルエニグマゾールAの合成を主として行った。我々はこれまでに、エニグマゾールAの全合成の過程で得たジアステレオマーを誘導することで、15位の立体配置を反転させた15-epi-エニグマゾールAを合成し、本類縁体が天然物よりも強力な細胞毒性を示すことを見出している。そこで15-epi-エニグマゾールAをターゲットとした新たな合成法の開発を検討した。合成の比較的初期段階で15位の立体配置を反転させたのちにフラグメント連結を行い、独自のタンデム反応を基軸とする合成戦略にてマクロ環構築まで達成した。しかし、15位の立体配置が反転したことでマクロ環の立体配座が天然物のそれとくらべて大きく変化し、その結果として合成終盤における5位の不斉炭素原子の立体制御ができなかった。そこで合成終盤に15位の立体配置を反転させるよう合成法を見直した結果、5位と15位ともに高度な立体制御に成功し、目的とする15-epi-エニグマゾールAの全合成を達成した。5位と15位の立体制御については、NMRデータおよび分子力場計算による立体配座解析により説明できた。さらに本合成法を応用して、15-epi-15-O-メチルエニグマゾールAの全合成もあわせて完了した。このほか、エニグマゾールAの全合成中間体のジアステレオマーを誘導することで5-epi-エニグマゾールAの合成も達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天然物であるエニグマゾールAよりも強力な活性を示す15-epi-エニグマゾールAとそのメチルエーテル体15-epi-15-O-メチルエニグマゾールAの全合成に成功した。さらには、エニグマゾールAの全合成の過程で得られる中間体を誘導することで5-epi-エニグマゾールAも取得した。これら類縁体の細胞毒性試験および立体配座解析により、エニグマゾールAの構造活性相関を詳細に明らかにできる。 本年度までに合成が完了した類縁体の各種評価が終了次第、論文を投稿する予定であるので、進捗状況としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は合成したエニグマゾールAの構造類縁体15-epi-エニグマゾールA、15-epi-15-O-メチルエニグマゾールAおよび5-epi-エニグマゾールAの細胞毒性試験および立体配座解析を行い、本天然物の構造活性相関を詳細に解析する。また、変異c-kit細胞選択的な毒性を発現するとされるエニグマゾールBのスケーラブルな合成法の確立を目指す。我々のグループで、エニグマゾールAを始めとするマクロリドの全合成の効率化に有効性が認められた、渡環反応を用いる合成戦略を適用してみたい。
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