研究課題/領域番号 |
22K05338
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37020:生物分子化学関連
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
佐々木 要 東邦大学, 理学部, 准教授 (10611783)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | グリコシル化反応 / マンノシル化 / β-マンノシド / 立体選択性 / 異常配座糖 / 2,6-ラクトン / グリコシド / 糖鎖 / 収束的合成 / 固相合成 |
研究開始時の研究の概要 |
1,2-cis-エクアトリアルグリコシド(1,2-cis-β-グリコシド)結合を有する糖鎖の機械的あるいは収束的合成法を確立する.本申請課題が言う“機械的”合成とは,核酸やペプチドの固相合成のように,反応基質が決まれば有機合成化学者でなくとも,反応条件検討なしに任意の配列が合成できる手法である.また,“収束的”合成とは,一残基伸長ではなく,複数残基ずつ糖鎖伸長を行うブロック合成である.
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研究実績の概要 |
糖とアルコールが連結する化学的グリコシル化反応は一般に,C-1位に脱離基を有する糖を求電子剤,アルコールを求核剤とする置換反応であり,立体制御が課題となる.なかでも,C-1位および2位がcis-配置のエクアトリアルグリコシド(β-マンノシド)の合成は特に困難である.当研究室では,従来活用されてこなかった舟形配座糖供与体に着目し,2,6-ラクトン構造を求電子剤に用いた,β-マンノシド結合の高効率構築法の開発に取り組んでいる.求電子置換反応には,求電子剤における反応中心の立体化学に依存し,求核剤が立体反転的置換するSN2反応と,立体化学に依存せず,脱離基の自発的脱離で生成するカチオン性中間体に求核剤の付加が進行するSN1反応があるが,β-マンノシド合成はSN2反応が盛んに研究されてきた.一方,当研究室で検討している2,6-ラクトン求電子剤は,グリコシルカチオンを経由するSN1反応でもβ-グリコシドを与えると考えている.本年度は,反応系内に存在する対アニオン,特にトリフラートイオンが,グリコシルカチオンのα-面から付加したα-トリフラートをメジャーな中間体として生成することを明らかにした.また,マイナーなβ-トリフラートも分光学的に観測可能であったのに加え,α-およびβ-トリフラートのあいだに平衡が存在することを明らかにした.実践的なグリコシル化反応の中間体として,α-およびβ-の両アノマーを同時に観測すること,また,それらのあいだに平衡があることを示した初めての例であった.さらに,そして,β-トリフラートを置換できる強い求核剤では,望まないα-グリコシドの生成が顕在化し,立体選択性を下げることを明らかにした.一方,グリコシルカチオンの対アニオンの配位性がより小さくなるよう反応をデザインするとき,求核剤に依らず望むβ-立体選択性が著しく向上することを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本申請課題で目指している機械的合成とは,核酸やペプチドの固相合成のように,合成したい配列が決まればそれに応じて反応基質が決まり,有機合成化学者でなくとも反応条件検討なしに任意の配列が合成できる手法である.糖と糖を連結するグリコシル化においては,SN2反応を用いている限りは反応の成否が求核剤の反応性に依存するため,反応条件の最適化や副生成物の除去が必要となり機械的合成が不能である.一方,SN1反応を用いれば立体選択性に課題が生じるという科学的障害があった.本申請課題の端緒となった実験事実は,新規の求電子剤2,6-ラクトンを用いると従来法では速度論的に不利なβ-立体選択的マンノシル化反応がSN1反応で実現可能であることであった.しかし,ここにはなお望むSN1反応と望まないSN2反応の競争という課題が残っており,特に反応性の大きい求核剤を用いた反応で,SN2反応が優勢となることによる立体選択性の低下が顕在化していた. そこで2022年度は,望まないSN2反応によるマイナーなα-グリコシドの生成機構について精査した.その結果,反応系内に存在する活性化剤由来のトリフラートイオンが優先的にβ-グリコシルトリフラートエステルを形成し,これを置換できるような反応性の大きい求核剤で立体反転的に望まないα-グリコシドを生成している反応機構が明らかとなった.また,立体選択性の低下が配位性のあるハードなトリフラートイオンに由来することが明らかとなったことから,トリフラートイオンフリーな反応条件を探索した.その結果,求核剤の反応性によらず,排他的にβ-マンノシドを“機械的に”合成できる新規の活性化系を見出した.当初計画では,求核剤の反応性を抑制することでβ-立体選択性を向上させることを考えていたが,高反応性の求核剤をそのまま活用できる反応を確立したことで,計画以上の水準で機械的糖鎖合成に近づけた.
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今後の研究の推進方策 |
O-4位あるいはO-3位に糖を有する1,2-cis-β-グリコシド(β-マンノシド)の合成素子としてデザインした,O-4位あるいはO-3位に2-ナフチルメチル基を有する2,6-ラクトン糖供与体の合成に既に成功している.これらに対し,2022年度に見出した新奇の活性化系を適用し,種々の求核剤をβ-立体特異的にグリコシル化できることを示す.また,これらの糖供与体を交互に用いながら,グリコシル化と続く脱保護を繰り返すことで,病原性グラム陰性菌Leptospira biflexa等の抗原糖鎖の合成が可能であることを示す.これにより,4-O-あるいは3-O-グリコシル-1,2-cis-β-グリコシド合成における合成素子として,これらが有用であることを示す. また,O-3および4位にベンジル基を有する2,6-ラクトン糖供与体に対し新奇の活性化系を適用し,グリコシド後に加アルコール分解によるラクトンの開環でO-2位が遊離することで,2-O-グリコシル-1,2-cis-β-グリコシド合成における合成素子としての有用性を示す.最終的にはグリコシル化とラクトンの開環を繰り返すことで,Candida属抗原糖鎖の合成を行う. さらに発展的実験として,還元末端に2,6-ラクトンを有する多糖供与体でβ-立体選択的グリコシル化が可能であることを示す.そして,4-O-(β-キシロシル)-マンヌロノ-2,6-ラクトンに対し新奇の活性化系を用いてグリコシル化と続く脱保護を繰り返すことで,抗凍結活性オリゴキシロマンナンを合成する.多糖供与体を用いた1,2-cis-β-グリコシル化反応は液相であっても困難であるが,これにより,さらに短工程で高分子量糖鎖が合成できる可能性を示す.
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