研究課題/領域番号 |
22K05342
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37020:生物分子化学関連
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研究機関 | 公益財団法人サントリー生命科学財団 |
研究代表者 |
村田 佳子 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 特任研究員 (60256047)
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研究分担者 |
難波 康祐 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 教授 (50414123)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 鉄 / 小腸 / トランスポーター / ニコチアナミン / 植物性食物 / アフリカツメガエル卵母細胞 / 錯体 / アイソトープ / 鉄代謝 / ファイトシデロフォア / アミノ酸トランスポーター |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ニコチアナミン(NA)・鉄錯体の動態に関与する輸送体やその代謝経路を解明し、哺乳動物における新しい鉄輸送分子機構の全容を明らかにすることを目的とする。鉄は酵素やDNA合成等の中心金属として重要な役割を担っているため、生物にとって不可欠である。ヒトでも鉄欠乏症は最も一般的な栄養障害の1つであるが、同時に臓器に過剰の鉄が蓄積すると重篤な症状や合併症が生じるため、体内での適切な鉄排出も重要である。そこで本研究では、NAおよびその鉄錯体が、小腸において吸収、輸送され、その後の代謝を含めた鉄輸送の全体像を生化学、分子生物学、有機合成化学、機器分析学の協働により明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、植物内在性キレート化合物であるニコチアナミン(NA)およびその鉄錯体が、小腸において吸収、輸送され、その後の代謝を含めた鉄輸送の全体像を明らかにすることである。その目的のため、今年度は以下の研究を行った。 1)NA鉄錯体の排出トランスポーターの同定: アフリカツメガエル卵母細胞(oocytes)にヒトの小腸基底膜側に局在する鉄排出トランスポーターFPN1およびNA鉄錯体排出候補遺伝子の4F2hc(SLC3A2)と複合体化してアミノ酸を排出するLarge-中性アミノ酸トランスポーターLAT2(SLC7A8)を各々発現させて排出量を比較した。NA-59Feにおいて4F2hc/LAT2がFPN1よりも有意に大きな排出量を示した。またLAT2がこれまでの報告によりアミノ酸および甲状腺ホルモンの輸送に関与し、LAT2のアミノ酸配列134番目のアスパラギン酸をセりンに入れ替えることにより、ロイシンおよび甲状腺ホルモンの排出量が増加しており、NA鉄錯体も同様にLAT2のN134S変異体で排出量が大幅に増加した。このことからNA鉄錯体は、十二指腸の基底膜に存在する既存の2価鉄排出輸送体FPN1とは異なり、近位空腸に存在する4F2hc/ LAT2複合体であるアミノ酸トランスポーターで排出すると考えられた。 2)鉄欠乏マウスのNA鉄錯体による回復実験:2週間鉄欠乏食で飼育することによりマウスを鉄欠乏にし、その後NA1mg+鉄0.1mg/0.1 mL生理食塩水、または鉄0.1mg/0.1mL生理食塩水、生理食塩水のみを各々経口投与し、回復を比較した。その結果、NA+Fe投与群のほうがヘモグロビンやヘマトクリット値の回復が早かった。しかし、肝、腎、脾臓の鉄濃度は正常値に及ばなかった。濃度や鉄とNAの比率を検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果で植物生体内に存在するキレート化合物NAが鉄錯体として小腸からアミノ酸トランスポーターPAT1 (proton coupled amino acid transporter 1)を介して吸収されることを報告し、続いてアミノ酸トランスポーター4F2hc/ LAT2複合体が小腸から血管側にNA鉄錯体を排出することを明らかにした。また鉄のみ投与よりNAと鉄を投与したほうが鉄欠乏マウスのヘモグロビンとヘマトクリット値の回復が早かった。
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今後の研究の推進方策 |
ニコチアナミンのような小分子植物内在性キレート化合物およびその鉄錯体が哺乳動物におけるアミノ酸トランスポーターにより輸送されることをさらに証明し、小腸での新たな吸収メカニズムを明確にする。また、小腸からの鉄錯体吸収とその後の体内輸送の分子機構をトランスポーターの分子レベルの基質認識に基づいて理解し、鉄欠乏症および鉄過剰症への応用研究に発展させる基礎データを得る。そのために以下の研究を行う。 ①鉄欠乏マウスのNA鉄錯体による回復実験:今年度でNA:Fe=10:1の組成でNA1mg、鉄0.1mg投与で少し回復が見られたので、今度はNA:Fe=1:1の組成でFeのみ、NA-Fe錯体、生理食塩水を各々濃度を変えて経口投与し、1週間後、2週間後のヘモグロビンおよびヘマトクリット値を比較する。また肝、腎、脾臓などの臓器の鉄、銅、亜鉛濃度を測定し、マウスが鉄欠乏からどれだけ回復しているか検討する。 ②マウス組織の NA および鉄錯体の検出: NA 鉄錯体輸送体を発現させた細胞に NAダンシル標識鉄錯体を反応させて蛍光を観察することができた。このことから NAを投与したマウスの組織内の挙動をダンシル標識体を用いて、 NA の局在の時間変化を観察する。また、MALDI-TOF-MS(imaging MS)で NAや標識体およびそれら鉄錯体を検出・定量することにチャレンジする。 ③小腸の2次元オルガノイドでの解析:2つの取り込みトランスポーターPAT1(NA鉄錯体輸送)およびDMT1(鉄のみ輸送)の小腸での役割を明確にするために、小腸二次元オルガノイドにおいて各々の抗体染色により、発現を確認後、鉄の取り込みおよび排出活性を比較、評価する。
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