研究課題/領域番号 |
22K05343
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37030:ケミカルバイオロジー関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
幡川 祐資 東北大学, 薬学研究科, 助教 (30878351)
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研究分担者 |
大江 知行 東北大学, 薬学研究科, 教授 (10203712)
李 宣和 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (60519776)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | インスリン分解酵素 / チロシン残基 / Cookson型試薬 / タンパク質ラベル化 / アミロイドβ / インスリン / exo site / 阻害剤 |
研究開始時の研究の概要 |
インスリン分解酵素(IDE)は、インスリンのみならずアミロイドβ(Aβ)を分解する。 それ故、IDEは2型糖尿病(T2DM)のリスクを上げる反面、アルツハイマー病(AD)リスクを下げることから、IDEの基質特異性の調節(活性の分離)ができれば、T2DMの治療薬となり得る可能性が示唆される。IDEは活性及び基質結合部位の阻害により、基質特異性が変化し、活性部位周辺のチロシン (Tyr) 残基を変異させることで基質に対する分解活性を失う。本研究では、IDEのTyr残基の選択的ラベル化を行い、基質に対する分解活性を精査する。
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研究実績の概要 |
インスリン分解酵素 (IDE) は、血糖降下ホルモンのインスリンのみならず、アルツハイマー病 (AD) の病因物質のアミロイドβ (Aβ) も分解する。そのためIDEは、2型糖尿病のリスク上昇と、ADのリスク軽減の二面性を有する。一方IDEによる分解は、活性中心のactive siteと基質結合部位のexo siteが関与し、これらにはチロシン残基 (各々Tyr831とTyr314) が存在する。そのためTyr残基の修飾を介し、インスリン分解の抑制とAβ分解の亢進など好ましい基質特異性の改変も期待される。そこで本研究では、TyrとのEne反応が知られるCookson試薬 (4-phenyl-1,2,4-triazoline-3,5-dione, PTAD) を用い、IDEのTyr修飾によるAβ及びインスリン分解活性への影響評価を目的とした。 IDEのTyr残基43個中、鍵となるTyr831とTyr314を含む15個の修飾を確認した。またPTAD修飾による基質特異性 (3日後の残存率) の変化は、Aβ, 1%以下→ 1%以下; インスリン, 5%→ 90%とインスリン分解の抑制のみ観察された。更に切断点を比較したところ、AβではIDEで22カ所、PTAD-IDEで19カ所、そのうち、18カ所で同じ切断部位を同定した。一方インスリンでは、IDEで20カ所、PTAD-IDEで2カ所の切断部位を同定し、この2カ所はIDEと同じ切断部位であった。この結果は、Aβとインスリンの共存下でも同様であった。このインスリンに対する基質特異性の変化は、IDEとAβまたはインスリンの複合体の立体構造から、exo siteに存在するTyr314修飾の影響と示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インスリン分解酵素等の海外から輸入している試薬や器具の納品に遅れが発生した。さらに、インスリン分解酵素の活性を測定するLC-MS/MSの一部に不具合が生じた。以上の原因により実験がやや遅れている。輸入品の遅れに関しては、業者と事前に連絡を取り在庫状況を確認、LC-MS/MSに関しては、修理が完了した為、今年度遅れは取り戻せる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
【PTAD-IDEの反応速度の検討】LC-UVによってsubstrate-V (330 nm)、Aβ (280 nm) およびインスリン (280 nm) に対するPTAD-IDEの各Km、Vmax、Kcatを算出する。加えて、IDE (ポジティブコントロール) と比較する。 【IDEのTyr(Y)314、831変異体の作製およびPTADによる変異体IDEの基質分解活性の検討】IDEの変異体 (Y314F、Y314S、Y831F、Y831S) を作製後、substrate-Vによって分解活性の有無を検討する。活性があった変異体IDEに関しては、PTADと反応させ (200 mM Tris-HCl, pH7.5, 37 ℃, 1 h)、Aβおよびインスリンに対する分解活性活性を比較・検討する。 【その他基質 (グルカゴン、アミリン) に対するPTAD-IDEの分解活性の検討】PTAD-IDEとグルカゴンおよびアミリンを反応させ (200 mM Tris-HCl, pH7.5, 37 ℃, 3 日間)、LC-MS/MSにより分解活性および切断点を比較する。加えて、LC-UVによってグルカゴン、アミリン (UV 280 nm) の各Km、Vmax、Kcatを算出する。 【PTAD-IDEの立体構造解析 (将来の展望)】PTAD-IDEとAβまたはインスリンの複合体をクライオ電顕を用いて立体構造を解析する。
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