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微生物を利用したCoAコファクターエンジニアリングの物質生産への応用

研究課題

研究課題/領域番号 22K05376
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分38020:応用微生物学関連
研究機関茨城大学

研究代表者

長南 茂  茨城大学, 農学部, 教授 (70312775)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
キーワード発酵 / 物質生産 / 応用微生物 / 生体分子 / コエンザイムA / 脂肪酸 / ポリヒドロキシ酪酸
研究開始時の研究の概要

コエンザイムA(CoA)は細胞内でアシル基のキャリアとして機能しており、全生物に共通して存在する補酵素である。申請者は大腸菌を用いてCoA生合成経路の強化は物質生産に有効であることを報告した。今回は、アセチル-CoA増産の有効性を生分解性プラスチック生産菌によるポリヒドロキシ酪酸(PHB)生産、マロニル-CoA増産の有効性は光合成細菌による脂肪酸生産および低温菌による高度不飽和脂肪酸生産にそれぞれ応用し、本要素技術の汎用性を実証する。

研究実績の概要

本申請研究では、細胞内でアシル基のキャリアとして機能しているコエンザイムA(CoA)の生合成経路を強化することにより、炭素代謝を活性化し、有用物質生産に応用できる技術開発を目的としている。令和5年度は、3種の外来パントテン酸キナーゼ(CoaA)を導入したCupriavidus necator H16でポリヒドロキシ酪酸(PHB)生産を、外来CoaAとアセチル-CoAカルボキシラーゼ(Acc)を組み合わせたマロニル-CoA増産技術はシアノバクテリアであるSynechococcus elongatus PCC 7942による脂肪酸生産でそれぞれ試験した。前者では、いずれの形質転換体でも培地1 LあたりのPHB生産量と菌体内PHB含量が上昇しており、外来coaA遺伝子導入によるアセチル-CoA増産の有効性が確認された。そこで、宿主のC. necator H16株のCoA生合成経路の調節機構を理解するために組換えCoaAの諸性質を解析したところ、最終生産物であるCoAやアシル-CoAで阻害を受けないことが明らかとなった。後者のシアノバクテリアによる脂肪酸生産では、菌体あたりの脂肪酸含量には違いが見られないが、培地1 Lあたりの脂肪酸生産量は外来遺伝子導入株の方が高い傾向を示した。チオエステラーゼである'TesAを用いた遊離脂肪酸生産では、coaA遺伝子とacc遺伝子を導入した大腸菌のマロニル-CoA増産株で生産量の増大がすでに確認されているが、薬剤排出ポンプ遺伝子の導入によって炭素鎖が14の脂肪酸を中心にさらに生産量を上昇させることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

3種の外来coaA遺伝子を導入したすべてのC. necator H16形質転換体でPHBの増産効果が観察された。宿主となるC. necator H16株のcoaA遺伝子をクローニングし、組換え酵素を解析して最終生産物阻害を受けないことを明らかした。外来のcoaA遺伝子とacc遺伝子を導入したS. elongatusによる脂肪酸生産では、通気培養と炭酸水素ナトリウムを添加した静置培養で脂肪酸生産を試験した。脂肪酸含量においてはマロニル-CoA増産株と対照株では違いが見られなかったが、脂肪酸生産量においては通気培養でマロニル-CoA増産技術が効果を示す傾向が見られた。大腸菌を用いたPUFA生産試験では、2種の低温菌から得られたPUFA合成遺伝子と宿主の組み合わせを検討した。その結果、PUFAの脂肪酸含量をおよそ3%にまで上げることに成功した。大腸菌による'TesAを用いた遊離脂肪酸生産への応用では、マロニル-CoA増産による効果が既に確認されているが、薬剤排出ポンプの導入で炭素鎖14の脂肪酸を中心にさらに生産量を上げることに成功した。しかし、低温菌によるPUFA生産ではcoaAおよびacc遺伝子を保持するマロニル-CoA増産用プラスミドの導入が鍵となるが、エレクトロポレーションによる形質転換法がまだ確立されていない。外来チオエステラーゼを使用した大腸菌による中鎖脂肪酸生産では、炭素鎖8から12の脂肪酸生成は確認されていない。
以上のように、低温菌よる高度不飽和脂肪酸への応用では遅れがみられるが、C. necatorによるPHB生産では大腸菌以外でのアセチル-CoA増産の有効性、大腸菌による遊離脂肪酸生産ではマロニル-CoA増産の有効性が確認されているため、研究計画全体から考えればおおむね順調に進んでいるといえる。

今後の研究の推進方策

令和6年度は本申請研究の最終年にあたる。C. necatorにおける外来coaAによるアセチル-CoA生合成経路の強化がPHB生産へに及ぼす影響、およびS. elongatusにおけるマロニル-CoA生合成経路の強化の脂肪酸生産への応用の2つを中心に進めることを計画している。PHB生産では、培地への窒素源添加量、すなわちPHB合成を担うポリヒドロキシアルカン酸合成酵素の発現量も意識しながらアセチル-CoA増産効果を解析する。また、効果が見られたC. necatorのCoA生合成経路の調節機構を考察するため、鍵酵素となる組換えCoaAの酵素学的諸性質の解析をさらに進める。S. elongatusにおける脂肪酸生産では、令和5年度に検討した通気培養法を使ってマロニル-CoA生合成経路の強化の有用物質生産への有効性を詳しく検証する予定である。PUFA生産では大腸菌で令和5年度に検討した結果を基にして、CoaAおよびAccの併用効果を検証する予定である。
C. necator、S. elongatus、および大腸菌におけるCoA生合成経路の強化のPHB生産、あるいは脂肪酸生産への効果を精査し、CoAコファクターエンジニアリングの物質生産への有効性を総括する。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Enhanced supply of acetyl-CoA by exogenous pantothenate kinase promotes synthesis of poly(3-hydroxybutyrate)2023

    • 著者名/発表者名
      Hirotaka Kudo, Sho Ono, Kenta Abe, Mami Matsuda, Tomohisa Hasunuma, Tomoyasu Nishizawa, Munehiko Asayama, Hirofumi Nishihara, Shigeru Chohnan
    • 雑誌名

      Microbial Cell Factories

      巻: 22 号: 1 ページ: 75-75

    • DOI

      10.1186/s12934-023-02083-5

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Cupriavidus necator H16由来パントテン酸キナーゼの酵素学的諸性質2024

    • 著者名/発表者名
      入野晃郁、濱田美志、長南茂
    • 学会等名
      日本ゲノム微生物学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] マロニル-CoA生合成が改善された大腸菌における脂肪酸蓄積に対するfabRおよびfadRの効果2023

    • 著者名/発表者名
      中川満美子、田中真大、長南茂
    • 学会等名
      日本農芸化学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] マロニル-CoA生合成を強化した大腸菌での遊離脂肪酸生産2022

    • 著者名/発表者名
      濱田美志、中平洋一、西澤智康、長南茂
    • 学会等名
      日本生物工学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [備考] researchmap

    • URL

      https://researchmap.jp/read0060032

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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