研究課題/領域番号 |
22K05378
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
鈴木 一史 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00444183)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | Small RNA / 遺伝子発現制御 / Csrシステム / 細菌 |
研究開始時の研究の概要 |
RNA結合タンパク質に結合してその機能を阻害するsmall RNA (sRNA) は、環境に応答して安定性が制御されることで、RNA結合タンパク質の機能を調節している。また、キチン分解酵素と分解産物取り込みの2つの遺伝子発現を制御するアンチセンス型sRNAは、標的mRNAを切り替えることで両者の発現を連動させる。これら2種のsRNAにおける新たなsRNA安定性制御と遺伝子発現機構を解明する。
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研究実績の概要 |
細菌のタンパク質結合型とアンチセンス型の2種類のsmall RNA(sRNA)による新たな遺伝子発現調節機構の解明が本研究の目的である。CsrシステムのsRNA CsrB/Cは、RNA結合タンパク質に結合して機能を阻害するが、環境に応答して分解される。その結果、必要時に瞬時にRNA結合タンパク質が開放され、転写後の発現調節が効率的に行われる。これらsRNAの安定性を制御するCsrDホモログを有するAeromonas salmonicidaのCsrシステムを解析した結果、csrD欠損株においてsRNAの安定化が認められ、CsrDホモログは大腸菌と同様にsRNAの安定性を制御していることが確認された。RNA結合タンパク質をコードするcsrA遺伝子の欠損株は運動性が低下し、鞭毛合成を制御する遺伝子の発現が低下していることが明らかになった。それらの遺伝子の欠損株は運動性が低下したことから、CsrAが鞭毛合成に関連する遺伝子の発現を制御することで運動性が変化することが示唆された。大腸菌においてlacZとCsrB sRNAのターミネーター領域との融合遺伝子を作製した結果、リボヌクレアーゼの切断部位の有無が発現に影響する可能性が認められた。Serratia plymuthicaのアンチセンス型sRNA ChiXのターゲットとなるchiPQ-ctb mRNAにおいて、ChiXとの塩基対形成の場となる5′UTRが他の領域と異なる存在量と安定性を示す結果が得られた。これはChiXによる翻訳制御のメカニズムに関する可能性があるため、引き続き検討を行う。ChiX-ChiRの調節機構の支配下にあるcbp遺伝子は、chiR破壊株においても転写が認められ、従来の考えとは異なる制御の可能性が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンパク質結合型sRNAについて:大腸菌でのみ明らかとなっているCsrDによるsRNA安定性制御機能の普遍性を明らかにするため、分子系統解析により大腸菌CsrDとの相同性の低いCsrDを持つ細菌としてAeromonas salmonicidaの解析を引き続き行なった。csr遺伝子破壊株の解析により、本菌株のCsrシステムは運動性及びキチナーゼ生産性にを制御し、運動性では鞭毛合成関連遺伝子、キチン分解性ではキチナーゼ遺伝子の発現に影響を与えることを明らかにした。さらに、本菌株においてもCsrDがsRNAの安定性制御を示すことが判明した。これらの結果を学術雑誌に投稿することができ、掲載が認められた。その他の研究についても順調に進めることができた。 アンチセンス型sRNAについて:Serratia plymuthicaにおいて、sRNA ChiXのターゲットとなる遺伝子のmRNA 5′UTRの存在量と安定性について研究を進め、塩基対形成領域はその下流側の領域より多く存在し、さらに、安定である新たな現象を見出した。これについては、さらに検証を進める必要がある。sRNAの機能に関与するRNAシャペロンHfqのmRNA 5′UTRのヘアピン構造形成と翻訳制御への関与について明らかにすべく、HfqのRNA結合に重要なアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換して変異Hfqの構築をすることに成功した。このように、概ね順調に研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
タンパク質結合型sRNAについて:CsrDによるsRNA安定性制御機構の解明として、A. salmonicida Csrシステムのターゲットとなる遺伝子の機能解析を引き続き実施する。特に、CsrAによる鞭毛合成関連遺伝子の発現制御について、lacZ融合遺伝子を構築しての大腸菌内での実験やRT-PCRなどで確認する。CsrD依存となる融合遺伝子の発現については、大腸菌でのmRNAの安定性などの解析を進め、CsrDで安定性をコントロールできるmRNAの構築を目指す。また、大腸菌のCsrD依存sRNAであるCsrCの初発の分解部位解析のためにRNA分解酵素遺伝子破壊株の構築を進め、それを用いて、CsrA結合部位と安定性の関係を調べ、CsrBとの相違点を明らかにする。 アンチセンス型sRNAについて:S. plymuthicaのsRNAの機能に関与するRNAシャペロンHfqが関与するmRNAの二次構造と翻訳制御についての解析を、lacZとの融合遺伝子やRT-PCR等を用いて進める。また、Hfq変異体を発現するプラスミドをS. plymuthicaのhfq欠損株で発現させ、HfqによるchiR発現に関与するアミノ酸残基を特定する。さらに、sRNA ChiXのターゲットとなるchiPQ-ctbオペロンのmRNAについて、5′UTRの安定性を中心に解析を進める。ChiX相補配列部分をchiPの配列に置き換えたchiR mRNA 5′UTRは、RT-PCRで検出できないにも関わらずChiXによるchiRの発現抑制を解除した。この現象の原因を明らかにするため、相補配列の長さや位置、安定性などについて解析する。
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