研究課題/領域番号 |
22K05382
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
鈴木 宏和 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (80462696)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ジオバチラス / プラスミド複製 / 好熱菌 / グラム陽性菌 / pUCレプリコン / 環境適応 / 生育阻害応答 / 転位因子 / 進化 / バチラス / 高温 / 変異 / 転位 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,環境に広く分布する好熱菌の適応機構を解析する。転位因子の転位を制御する機構が解明できれば,微生物育種のためのツールに繋がると期待できる。シャペロン様因子が解明できれば,それを植物に移植することで温暖化適応を引き起こせる可能性がある。生育阻害応答が病原菌でも起こるのであれば,関連因子は耐性変異を抑制するための薬剤標的になるかもしれない。本研究の成果は,基礎学術分野のみならず,様々な応用分野にも波及効果をもたらすものである。
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研究実績の概要 |
Geobacillus属好熱菌は様々な環境に遍在し,それには常温環境も含まれる。これは好熱菌の分布としては非常識で,Geobaillus属細菌には幅広い環境に適応できる特異的な能力(高度適応能)があると考えられる。Geobacillus属細菌の細胞利用技術を研究する過程で,代表者は生育阻害に晒されたGeobacillus属細菌が適応に資する様々な応答をすることを見出した。これら生育阻害応答の理解は,生物の適応戦略を知る上で,さらには様々な応用を考える上で興味深い。本研究では,Geobacillus属細菌における生育阻害応答の全体像を明らかにするべく,当該現象に関わる制御因子ならびに実行因子を包括的に解析することを目的としている。この目的において,B株とA株の解析を行った。Geobacillus属細菌のHTA426株から派生したB株は,熱不安定な核酸合成酵素の遺伝子(BSpyrF)をもつが,核酸飢餓に晒されると核酸自給株を発生させる。本現象は,シャペロン様因子の誘導によってBSpyrFを安定化させるためと推察していた。ところが令和4年度の研究の結果,BSpyrF領域がプラスミドとして高コピー化し,その発現量が異常に向上することが核酸自給の理由であることが明らかとなった。この現象は,複製領域に依存せずにプラスミドが複製されることを暗示し,その性質は本菌の適応能力の一環と考えられる。このような現象は報告例がなく,予想外の新たな展開に繋がっている。HTA426株派生のA株は,プロモーターのない核酸合成遺伝子(pyrF)をもつ。これを核酸飢餓に晒すとIS転位が促進され,pyrF上流にISが挿入されることで核酸自給できるようになった株が発生する。この発生はsigX発現によって促進されたことから,令和4年度ではsigX高発現株の網羅的転写変動解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
B株に関する研究では,当初の予想とは大きく異なる結果が得られた。これにより発見された現象は,従来の知見では説明できない極めて興味深いもので,学術的に新しい展開が拓けたと言える。このことから,B株の研究については計画以上の進展と評価した。A株については,次の展開に直接繋がる知見は得られなかったが,予定された実験は着実に行えたことから,順調な進展と評価した。総じて,おおむね順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
B株に関する研究では,高コピー化したプラスミドをサザンブロット解析することで,どのような形態で高コピー化しているのか分析する。また培養温度によって核酸自給株の発生頻度がどう変化するか,その際のプラスミドコピー数はどう変化しているか,なども併せて解析する。後半では,BSpyrF周辺の領域を改変しながら,同様な現象が起こるかを調べる。これにより本現象に必須な領域を明らかにする。A株について行った網羅的転写変動解析では,そもそもsigXが高発現していなかった。細胞のステージによるものなのか,他の原因なのか,などを明らかにする必要がある。令和5年度では,まずsigX高発現株で発生する核酸自給株がIS転位によるものなのか再確認する。つづいて培養段階においてsigX転写がどう変化するかを解析する。然るべき条件が見出された場合には,網羅的転写変動解析の追試を行う。
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