研究課題/領域番号 |
22K05386
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
山城 哲 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00244335)
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研究分担者 |
橘 信二郎 琉球大学, 農学部, 准教授 (70447655)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 紅麹 / コレラ菌 / コレラ毒素 / コレラ菌の運動 / 紅麹菌 / コレラの治療 / 逆行性細胞質内移動 |
研究開始時の研究の概要 |
紅麹菌発酵物をヘキサンで抽出した画分(MFE-H)でCHO細胞を前処理すると、その後のコレラ毒素(CTx)の添加によるCHO細胞の伸長・変形が有意に減じられた。これはMFE-HがCTxの生物活性を減殺することを示唆した。本研究では、1. MFE-Hに含まれるCTx生物活性を減殺する責任コンパウンドMFE-H(X)を同定すること、2. MFE-H(X)が示す機序を解明すること、3. MFE-H(X)によるCTx生物活性の減殺が、in vivoでも再現されるかを確認することを研究の目的とする。
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研究実績の概要 |
紅麹粗抽出物(MFRE)中に含まれる、下痢原性細菌と動物細胞の双方に作用して下痢症を抑制する可能性がある有効成分を絞り込み、動物細胞等を用いて作用機序を解明し、モデル動物で下痢症抑制効果の有無を検証することを目的とする。3年間の全体計画として、MFRE中に含まれる有効成分の絞り込み、MFREによるコレラ毒素(CTx)の細胞内液過剰漏出抑制の機序解明、下痢症モデル動物を用いた、MFREによる下痢症抑制効果の検討、MFREの更なる下痢症抑制効果の検討を掲げた。令和4年度は、以下の研究成果があげられた。1.MFREから極性の異なる成分5画分(Fr.1-Fr.5)を、それぞれ5ないし10mLずつHPLC等を用いて分取した。研究に供するに十分な量と思われる。MFREはGM1ガングリオシドと結合すること、またその結果コレラ毒素Bサブユニット(CTx-B)のVero細胞表面の結合が阻害されることを見出した。MFREの抑制は複数の機序が関与するものと思われる。MFRE前処理コレラ菌群は、未処理群と比較して、CTxの産生量が低下する可能性が示唆された。また、MFREはコレラ菌の活発な鞭毛による運動を抑制することが我々の研究で示されていたが、今年度MFREを構成する5画分の内のFr. 2及びFr. 4が運動抑制の有効成分であることを見出した。さらに上記5画分の内、Fr.1、Fr.2、Fr.4が他の成分と比べて効果的にCTxの持つ生物活性を抑制する効果が大きいことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
MFRE中に含まれる、CHO細胞に作用してCTxの生物活性を減殺する作用を持つ責任コンパウンドの分離・同定に関して、MFREから極性の異なる成分5画分(Fr.1- Fr.5)を、それぞれ5ないし10mLずつHPLC等を用いて分取した。5画分の内、Fr.1、Fr.2、Fr.4が他の成分と比べて効果的にCTxの持つ生物活性を抑制する効果が大きいことが示唆された。 責任コンパウンドの機序の解明に関して、MFREはGM1ガングリオシドと結合すること、またその結果コレラ毒素Bサブユニット(CTx-B)のVero細胞表面の結合が阻害されることを見出した。MFREの抑制は複数の機序が関与するものと思われ、引き続き機序の解明を続ける。 上記が当初の研究計画であるが、今年度はそれに加えて、MFRE前処理コレラ菌群は、未処理群と比較して、CTxの産生量が低下する可能性が示唆されたこと、さらに、MFREはコレラ菌の活発な鞭毛による運動を抑制することが我々の研究で示されていたが、MFREを構成する5画分の内のFr. 2及びFr. 4が運動抑制の有効成分であることを見出した。これらは研究を進める中で得られた派生的な興味深い観察であると思われた。
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今後の研究の推進方策 |
1.MFRE中に含まれる有効成分の絞り込み。 MFREから分取した5画分のうち、どの画分が1)コレラ菌の運動を抑制する有効成分、及び2)CTxの動物細胞に及ぼす生物活性を阻害する有効成分を豊富に含むのかを検討する。1)に関しては、暗視野顕微鏡を用いた運動性、及びATP産生の阻害を解析する。2)に関しては、CTx生物活性の指標である、細胞内cAMP産生量を指標とする。2.MFREによるCTxのヒトを含む動物細胞に及ぼす生物活性を阻害する機序の解明。 MFREは、CTxの細胞表面への結合を阻害したが、同時にCTxの細胞内逆行性移行を阻止するかを検討する。逆行性移行のどのポイントを阻害するのか、そのポイントは1箇所か複数箇所かの解析を行う。3.MFREによるコレラ菌の運動を抑制する機序の解明。 MFREから分取した5画分を用いて、コレラ菌の鞭毛を用いた運動の動力源となる、細胞膜の脱分極程度、及びATP産生効率を用いて検討する。4.下痢症モデル動物を用いたMFREによる下痢症抑制効果の検討。 モデル動物を麻酔科で小腸結紮ループ試験を用いて検討を行う。個別の結紮小腸ループに、それぞれPBSのみ、MFREのみ、PBS+CTx(下痢コントロール)、MFRE+CTxの標品を注入し、MFREを混合した標品が、下痢コントロールと比較して、効率よく下痢症を抑制するかを検討する。5.MFREによるCTx産生(または分泌)抑制効果の検討。 MFREによるコレラ菌処理により、コレラ菌培養培地中へ放出されるCTxの量(濃度)が減少した。その現象は特にEl Tor生物型で顕著であった。その減少が、CTx産生量の低下によってもたらされるのか、産生されても分泌等が抑制されるために起こるのかを検討する、
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