研究課題/領域番号 |
22K05397
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
八代田 陽子 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 副チームリーダー (60360658)
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研究分担者 |
平井 剛 九州大学, 薬学研究院, 教授 (50359551)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 細胞間コミュニケーション / 分裂酵母 / オキシリピン / 生合成 |
研究開始時の研究の概要 |
分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)がオキシリピンをつかって行う同種細胞間コミュニケーションについて、オキシリピンの生合成経路や産生条件を、酵母の遺伝学的解析と質量分析技術を用いて同定する。本研究は、S. pombeの種の生存戦略である細胞間コミュニケーションの意義を、コミュニケーション因子の生合成の観点から明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
細胞が分泌する化合物を媒介物質として行う細胞間コミュニケーションは、微生物が環境に適応するための生存戦略と言える。研究代表者らは、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)が示す奇妙な「適応生育」現象の発見から、S. pombeがオキシリピンをつかって同種細胞間コミュニケーションを行い、窒素源取り込みを制御していることを発見した。本研究では、このオキシリピンの生合成経路や産生条件を、遺伝子過剰発現株ライブラリーと質量分析技術を用いて同定する。また、異種酵母によるNSF産生量も測定し、環境における同種、異種酵母とのコミュニケーションについて考察する。本研究は、S. pombeの「化学コミュニケーション=種の生存戦略」の意義を、コミュニケーション因子の生合成の観点から明らかにすることを目的とする。2023年度は薄層クロマトグラフィーによりS. pombe非必須遺伝子破壊株ライブラリーからのNSF生合成に関与する遺伝子スクリーニングを実施し、NSF生合成に関わる候補遺伝子を1つ見出した。また、ラベル化オレイン酸を用いたBioconversion実験により、NSF生合成の基質がオレイン酸であることを示した。さらに、異種酵母(S. cerevisiae、S. japonicus、S. octosporus)を用いた適応生育試験を行い、NSFがS. pombe特異的な細胞間コミュニケーション因子であることを示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は薄層クロマトグラフィー(TLC)によりNSF(Ac8Z、Hy8Z)を分離させる方法を用いて、NSF生合成に関与する遺伝子スクリーニングを実施した。約3,400個のS. pombeの非必須遺伝子破壊株について、細胞内粗脂質をクロロホルムとメタノールをつかって調製し、細胞内NSF産生量をTLCにより検出した。その中から、野生株からの細胞内粗脂質と比較して、Ac8Zはほとんど検出されない一方でHy8Zが過剰量蓄積している遺伝子破壊株を1株見出した。液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)を用いて定量して検証したところ、その遺伝子破壊株の培養上清にも細胞内にもAc8Zはほぼ検出されず、しかし、Hy8Zは野生株よりも数十倍以上蓄積していた。この結果より、この遺伝子がHy8Zのアセチル化を担う遺伝子をコードしていると示唆された。 また、ラベル化オレイン酸を用いたBioconversion実験を行った。野生株の培養時にラベル化オレイン酸を添加し、LC-MSにより培養上清、細胞内のラベル化NSFの定量を行った。ラベル化オレイン酸の添加量に応じて、培養上清、細胞内にラベル化NSFが検出された。よって、オレイン酸がNSF生合成の基質であることが示された。 さらに、異種酵母を用いて適応生育活性試験を行った。S. cerevisiaeおよびS. japonicus、S. octosporus、S. pombeの培養上清を用いて、寒天培地上でのeca39破壊株の適応生育試験を実施したところ、S. pombe以外はeca39破壊株の適応生育を誘導できなかった。このことからS. pombeの培養上清に含まれるNSFはS. pombe特異的な細胞間コミュニケーション因子であることが示唆された。 以上のことから、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今回同定したAc8Zの生合成を担う遺伝子については、遺伝学的、分子生物学的、生化学的手法を駆使して、その遺伝子産物の特徴づけを行う。Bioconversion実験の結果、オレイン酸が初発基質であることが示されたが、オレイン酸からHy8Zへの変換を担う酵素の候補が未同定であるので、必須遺伝子も含めて候補になる遺伝子を洗い出し、遺伝学的手法のみならず、生化学的手法の確立も検討して、その酵素の同定に挑戦する。また、異種酵母の培養上清、細胞内のNSFをLC-MS等で定量して確認し、NSFがS. pombe 特異的な生成物であるかどうかを検討することにより、環境における同種、異種酵母とのコミュニケーションについて考察する。
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