研究課題/領域番号 |
22K05411
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
河井 重幸 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (00303909)
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研究分担者 |
橋本 渉 京都大学, 農学研究科, 教授 (30273519)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 褐藻 / アルギン酸 / マンニトール / 油糧酵母 / Yarrowia lipolytica / 油脂 / モノウロン酸 / アルギン酸リアーゼ |
研究開始時の研究の概要 |
我が国の海域を含む世界の海域では膨大な量の炭素が褐藻(コンブやアカモクなど)として海中に固定されている。本研究の目的は、油糧酵母Yarrowia lipolytica (Yli) を用いて「海に固定された炭素(褐藻)から油脂へ」の新しい炭素の流れを創造することである。本研究では、同株のDEH資化能を向上させた上で、褐藻のもう一つの主要成分マンニトールをも資化できるように改変する。さらに、アルギン酸リアーゼを、この改変した株の細胞外で分泌発現させ、細胞外でアルギン酸を糖化(DEHへ変換)する。得られた株を用いて褐藻からの油脂生産の最適条件を明らかにする。
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研究実績の概要 |
我が国の海域を含む世界の海域では膨大な量の炭素が褐藻(コンブやアカモクなど)として海中に固定されている。本研究の目的は、褐藻および褐藻に含まれるアルギン酸とマンニトールから高い効率で油脂を生産できる油糧酵母Yarrowia lipolytica(Yli)株を構築し、そのYli株を用いて褐藻から油脂を生産する油脂生産系を確立すること、すなわちYli株を用いて褐藻から油脂への新しい炭素の流れを創造することである。既に、DEH(褐藻の主要多糖アルギン酸がエンド型およびエキソ型アルギン酸リアーゼで分解されて生成するモノウロン酸)資化に必要な4つの遺伝子をYli Po1f株に導入することによりDEHを資化できるようにした代謝改変Yli株を構築済みである。 目的達成のための基盤研究として本年度は、①代謝改変Yli株におけるDEH代謝の律速段階の特定とDEH資化能の向上、②Yli株のマンニトール代謝機序の解明、③エンド型アルギン酸リアーゼのYli株での分泌発現とYli株で最も多く分泌されるエキソ型アルギン酸リアーゼの特定を試みた。 ①に関しては、DEH資化に必要な4つの遺伝子の各々を代謝改変Yli株で追加発現させたところ、若干のDEH資化能の向上を確認した。②に関しては、RNA-seq解析により、マンニトールの代謝に必要なマンニトールデヒドロゲナーゼ候補遺伝子とマンニトール輸送体候補遺伝子を見いだした。③に関しては、エンド型アルギン酸リアーゼA1-Iの分泌発現プラスミド(XPR2シグナル配列を含む)を導入したYli株を構築し、本株を用いてYli株におけるA1-Iの細胞外発現に成功した。A1-Iの細胞外発現にXPR2シグナル配列が効果的であることが明らかとなった。他方、エキソ型アルギン酸リアーゼ(Atu3025、oalC6、AlyA5)各遺伝子の分泌発現プラスミドを導入したYli株を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3年間で、①DEH代謝の律速段階の特定とDEH資化能の向上、②Yli株のマンニトール代謝機序の解明。Yli株へのマンニトール資化能の付与、③Yli株で最も多く分泌されるエキソ型アルギン酸リアーゼの特定とアルギン酸の糖化、④褐藻を含む様々な炭素源からの油脂生産の最適条件の決定を実施する計画である。 1年目の令和4年度に、①に関しては若干のDEH資化能の向上を確認し、②に関してはマンニトールの代謝に必要なマンニトールデヒドロゲナーゼ候補遺伝子とマンニトール輸送体候補遺伝子を見いだし、③に関してはエンド型アルギン酸リアーゼA1-Iの細胞外発現に成功し、エキソ型アルギン酸リアーゼ(Atu3025、oalC6、AlyA5)各遺伝子の分泌発現プラスミドを導入したYli株を構築した。なお①に関しては、当初計画では律速段階の特定が目的であったが、本研究により一つの反応が律速段階というわけでなく、必要な全ての反応(DEH資化に必要な4つの遺伝子によるDEH取り込み、DEH還元、リン酸化、開裂の各反応)の増強が必要であることが示された。 これらの達成状況から、「おおむね順調に進展している」がふさわしいと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は3年間で、①DEH代謝の律速段階の特定とDEH資化能の向上、②Yli株のマンニトール代謝機序の解明。Yli株へのマンニトール資化能の付与、③Yli株で最も多く分泌されるエキソ型アルギン酸リアーゼの特定とアルギン酸の糖化、④褐藻を含む様々な炭素源からの油脂生産の最適条件の決定を実施する計画である。 令和5年度は基本的には計画通り進めるが、①に関しては、4つの遺伝子の各々でなく、4つの遺伝子全てを発現させることでDEH資化能の更なる向上が可能になることを示唆する結果を令和4年度に得たことから、4つの遺伝子を各々プロモーターとターミネーターに挟み込んだ形で連結し、Yli株に多コピー導入して更なるDEH資化能の向上を図る。また、油脂合成系の強化も進め、DEHからの油脂の大量生産系の構築も図る。②に関しては、令和4年度に見いだしたマンニトールデヒドロゲナーゼ候補遺伝子とマンニトール輸送体候補遺伝子をYli Po1f株に導入し、マンニトール資化能を付与できるかを検証する。③に関しては、令和4年度に構築した、エキソ型アルギン酸リアーゼ(Atu3025、oalC6、AlyA5)各遺伝子の分泌発現プラスミドを導入したYli株を用いて、分泌発現の条件を検討し、最も多く発現されるエキソ型アルギン酸リアーゼを特定する。 これらが達成され次第、最終年度(令和6年度)にかけて、DEH資化能と油脂生産能が大幅に向上した株にマンニトール資化能を付与し、さらにエンド型およびエキソ型アルギン酸リアーゼも発現させて①~③を達成する。こうして得られた株を用いて④褐藻を含む様々な炭素源からの油脂生産の最適条件の決定を実施する。
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