研究課題/領域番号 |
22K05415
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中島 琢自 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, 上級研究員(研究院教授) (40526216)
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研究分担者 |
安藤 正浩 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, 次席研究員(研究院講師) (50620803)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 植物内生放線菌 / 二次代謝産物 / 植物成長促進 / トレハンジェリン / 新規二次代謝産物 / PC screening / 植物協生放線菌 |
研究開始時の研究の概要 |
土壌から分離される放線菌はStreptomyces属が中心であるが、植物から分離される放線菌はStreptomyces属以外の多様な希少放線菌が分離される(Matsumoto A. and Takahashi Y. J. Antibiot. 70, 514-519, 2017)。植物個体の表面および内部に存在する協生微生物(エンドファイト)、特に協生放線菌に着目し、それらが生産する二次代謝物を解析することにより、植物と協生放線菌との相互作用を化合物中心に理解し、植物と協生放線菌の相互関係を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
植物内生放線菌が生産する二次代謝産物が植物に与える影響について検討した。使用した植物は入手の容易性からダイズを選択した。ダイズの根から分離した放線菌が生産する新規な二次代謝産物を探索すると同時に、植物内生放線菌の代謝物として得られたトレハンジェリンを評価した。 新規物質探索には化合物の物理化学的性状を指標とするphysicochemical screeningにラマン分光法を組み入れた手法で実施した。その結果、ラマンスペクトルよりジスルフィドを含有する化合物が見いだされ、構造解析を進めた結果、アントラセン骨格を有する既知化合物であった。その基本骨格とジスルフィド結合のラマンバンドが近くに現れることがわかった。現在、硫黄原子が示す複数のラマンバンドを組み合わせてスクリーニングを実施している。 トレハンジェリン(THG)のダイズへの影響を調べるため、試験管にムラシゲ・スクーグ溶液を分注し、発芽させたダイズを静置した。明暗環境下でインキュベート後、初生葉まで成長したダイズを回収し、各種分析に用いた。THGを添加することでダイズの全長および湿重量の増加が認められた。ダイズ含有イソフラボン類(ISO)を測定した結果、マロニルダイジンが最も多く検出され、次いでマロニルゲニスチンであった。総イソフラボン量は、THGを投与することにより濃度依存的に低下した。一方、クロロフィルの代謝物であるフェオホルバイド類は濃度依存的に増加した。ダイズはISOを根外へ分泌して根圏微生物叢を形成することが知られている。マロニル体や配糖体はアグリコンへ変換され、根外へ分泌されることが知られており、THGはマロニル体や配糖体からアグリコンへ変換を促進し、より多くのISOを根外へ分泌している可能性が考えられる。これらの結果から、THGを添加することにより、ダイズ初期生育において、成長を促進していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標としていた植物内生放線菌400株は保存できた。培養液抽出物作製も順調に進んでいる。新規物質を取得するために、これまで実施してきたUVやMSスペクトルで新規性を確認し、培養・精製・構造決定を行うphysicochemical screeningに加え、新たにラマンスペクトルにより化合物の官能基に注目して探索研究を行った。Streptomyces sp. 株が生産する二次代謝産物の中にジスルフィド結合を有すると推定される500 cm-1付近にピークを有する化合物が含まれていた。各種クロマトグラフィーにより目的物質を精製し、質量分析で構造を推定した結果、アントラセンを基本骨格に有するgalvoquinone Bと推定された。Galvoquinone Bはジスルフィド結合を有しておらず、化学計算ソフトSpartanを用いて解析した結果、500 cm-1付近のラマンバンドは基本骨格である3員環に由来していることがわかった。早急に、ラマンスペクトルでの評価基準を見直し、新たな標的物質を探索した。現在、最終段階の精製工程である。 一方、トレハンジェリンのダイズ成長促進活性は新規な生物活性である。トレハンジェリンはダイズの初期成長において影響し、ダイズの伸長を促進し、重量を増加させた。また、ダイズに含まれるイソフラボン量およびクロロフィル関連物質であるフェオホルバイド量を変化させることがわかった。マロニル体を含む配糖体をイソフラボングルコシダーゼ(ICHG)がアグリコンに変換し、根外への分泌されることが報告されており、トレハンジェリンはICHG活性に寄与している可能性がある。今後、ICHG活性やダイズ各成分の経時的変化を測定することで、ダイズ成長に対するトレハンジェリンの影響を明らかにしていく。
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今後の研究の推進方策 |
新規物質を取得するために、Physicochemical screeningに加え、新たにラマンスペクトルにより化合物の官能基に注目して探索手法を構築している。特に、ヘテロ原子を有する化合物探索のため、特徴的なラマンバンドを培養液抽出物から検出し、質量分析と合わせて構造を推定する。新規と確認できた化合物については精製および構造決定を進める。 トレハンジェリンのダイズ成長促進活性の研究は、大豆イソフラボンやクロロフィル関連物質の種類や濃度変化を捉え、詳細な植物体への影響を解析する。また、トレハンジェリンの植物内動態を顕微ラマン分析に挑戦する。
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