研究課題/領域番号 |
22K05419
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
中井 忠志 広島工業大学, 生命学部, 教授 (00333344)
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研究分担者 |
岡島 俊英 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (10247968)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ゲノム編集 / 補酵素の生合成 / タンパク質工学 / 酵素触媒機構 / Paracoccus denitrificans / 広宿主域ベクター / 発現制御機構 / 翻訳後修飾 |
研究開始時の研究の概要 |
キノヘムプロテイン・アミン脱水素酵素(QHNDH)を対象とし、最後まで未解明のままになっているCTQの生成機構を明らかにすることで、多段階の翻訳後修飾反応によるQHNDHの生合成プロセスを統合的に解明する。また、本研究を飛躍させるために、QHNDHの生産菌であるParacoccus denitrificansに適用可能な、細菌の低細胞毒性ゲノム編集技術を確立する。まずは光誘導型蛍光タンパク質の融合により発現の制御を実現する。次にプライム編集法によるゲノム編集を適用することで、細菌において高い性能と汎用性を併せ持つゲノム編集技術を開発する。
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研究実績の概要 |
本研究では、タンパク質の翻訳後修飾反応により形成されるビルトイン型キノン補酵素、システイントリプトフィルキノン(CTQ)を有するキノヘムプロテイン・アミン脱水素酵素(QHNDH)を対象とした。特に、最後まで未解明のままになっているCTQの生成機構を明らかにすることで、多段階の翻訳後修飾反応によるQHNDHの生合成プロセスを統合的に解明することと、QHNDH生産菌であるParacoccus denitrificansに適用可能な細菌の低細胞毒性ゲノム編集技術を確立することも目的とした。 2023年度の主要な研究活動は以下の二つである。 (1)広宿主域ゲノム編集用プラスミドを用いたP. denitrificansの塩基編集:シチジンデアミナーゼ(CBE)融合Cas9遺伝子を含む塩基編集プラスミドと、qhpAを標的とするgRNA発現プラスミドを構築した。これらを用いて、蛍光回復を指標とする目視可能なゲノム編集のシステムを開発した。IPTGを添加して誘導されたP. denitrificansの蛍光コロニーから、GFPの塩基配列解析を通じてCからTへの変異が確認されたが、qhpA遺伝子の編集は成功していない。 (2)QHNDHのヘム結合サブユニットQhpAのCTQ生合成への寄与の解析:QhpAのペリプラズムへの分泌を目的として、大腸菌を宿主とする分泌発現系を構築した。異なるシグナル配列を試験した結果、PelBシグナルを用いることでヘムの取り込みとペリプラズムへの分泌が効果的に行われることが判明した。さらに、精製したQhpAはペルオキシダーゼ活性を示し、この活性がCTQの生合成における酸化段階に関与している可能性が示唆された。 今後は、qhpA遺伝子の編集成功率を向上させる方法を模索し、QhpAの活性化機構とその生合成経路への寄与についてさらに詳細な解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗状況が「やや遅れている」とした理由は、2023年度までの研究過程でP. denitrificansにおけるゲノム編集の成功が限定的であったためである。広宿主域ゲノム編集用プラスミドの構築は、大腸菌とP. denitrificansの両方に導入することが可能であり、これらの宿主において形質転換体を確実に取得できた。しかし、ゲノム編集の成果に関しては大腸菌でのみ変異導入が確認され、P. denitrificansではまだ成功していない。P. denitrificansでプラスミドDNAへの変異導入が確認できているため、技術的にはゲノムへの変異導入も可能であると考えられるが、ゲノム編集の成功率が期待通りには達していない。 特に、P. denitrificansにおけるゲノムへの変異導入の評価が困難であった主要な原因は、変異導入の成否を判定するために用いるマーカーシステムの不在にある。プラスミドに対する変異導入では、GFPをマーカーとして効率的に判定できるシステムを用いたが、ゲノム編集では同様の効果的なマーカーが用いられていない。これにより、変異導入の検出が困難であり、進捗が遅れる原因となった。 今後は、P. denitrificansにおけるゲノム編集の効率と成功率を向上させるために、マーカーシステムを改善し、より高精度な変異導入およびその検出方法を開発することが求められる。これにより、研究の進捗を加速させることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、以下の二つの方策を中心に研究を推進する。 (1)広宿主域ゲノム編集用プラスミドを用いたP. denitrificansの塩基編集の強化:P. denitrificansゲノムでの編集効率の向上を図るため、編集の有無が容易に判定できる遺伝子を用いた予備実験を実施する。これにより、目的の遺伝子への変異導入の前段階として、編集システムの検証を行う。さらに、より制御が厳密で強力な発現誘導が可能なプロモーターやgRNA配列の改良にも着手する。これらの改良を通じて、P. denitrificansにおけるゲノム編集の精度と効率を向上させる。 (2)QHNDHのヘム結合サブユニットQhpAのCTQ生合成への寄与の解析:QhpAがCTQ生合成において重要な役割を果たしているとの仮説に基づき、生化学的な解析を進める。具体的には、QhpAのペルオキシダーゼ活性がオルトキノール型のCTQ形成中間体をキノン型に酸化する過程を詳細に調べる。この活性の解析により、CTQの生合成過程におけるQhpAの具体的な作用機序を明らかにする。 これらの研究方策を通じて、P. denitrificansのゲノム編集技術の確立とQHNDHの機能解明を目指す。
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