研究課題/領域番号 |
22K05425
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浜本 晋 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (10533812)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 出芽酵母 / 浸透圧応答 / イオンチャネル / オルガネラ膜 / 電気生理学 / イオン輸送体 / 液胞 / ミトコンドリア / オルガネラ間相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
異なる二つのオルガネラの生体膜が接触するオルガネラ間コンタクトサイト(MCS)は脂質の輸送に重要な分子機構であり、出芽酵母のMCSに多くのイオン輸送タンパク質が存在することが報告されているにも関わらずMCSにおけるイオン輸送体の役割は知られていない。モデル真核生物である出芽酵母を用いて得られた知見は、広く真核生物に応用することが可能であり、MCSの異常により発症する神経疾患などの様々な疾病の原因解明への寄与が期待される。
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研究実績の概要 |
TRPチャネルは、環境変化に応答する陽イオンチャネルとして多くの真核生物に保存されている。出芽酵母のホモログであるTRPY1は液胞膜に発現して細胞外の浸透圧変化に応答して液胞から細胞質にCa2+を放出しているが、その浸透圧変化を感知する分子機構は不明である。本研究では、TRPY1による高浸透圧応答に関わる制御因子の同定を目的に、出芽酵母の一遺伝子破壊株コレクション5100株にイクオリン遺伝子を導入してCa2+の発光検出を行った。その結果、43株において高浸透圧ストレス応答に変化が観察された。さらに、43株において破壊されている遺伝子を野生株よりクローニングし、出芽酵母に過剰発現させたところ、7つの遺伝子発現株において野生株よりも高い高浸透圧応答活性が示された。本研究では、イクオリンアッセイによる細胞内Ca2+の検出、タンパク質相互作用、電気生理学的解析手法の一つであるパッチクランプ法を用いてTRPY1のイオンチャネル活性の測定を行い、これらの候補制御因子によるTRPY1の活性制御機構の解明を目指す。 多くのオルガネラはサイズが小さいことからパッチクランプ法の適用が難しい。そのため、オルガネラ膜局在性イオンチャネルの研究は遅れている。出芽酵母の液胞は比較的大きいことからパッチクランプ法の適用が可能であり、これまでに幾つかのイオンチャネル活性の測定に成功している。本研究では、オルガネラ膜局在性イオンチャネルを出芽酵母液胞膜に局在化させるシグナル配列の開発を行い、出芽酵母液胞膜を用いた機能解析系の構築を目指している。前年度までに見出したシグナル配列(X18タグ)の付加により、チラコイド膜局在性イオンチャネルを出芽酵母液胞膜に発現させることに成功しているが、未だ多くのイオン輸送体においては液胞膜への局在化が達成されていない。本年度以降の研究においてシグナル配列の改良を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
出芽酵母一遺伝子破壊株コレクションを用いたスクリーニングにおいて、これまでに、7株が候補株として得られているが、データベース上の機能からはTRPY1との機能的な関連性は見出されていない。七つの候補因子のうちの一つは、哺乳類細胞において小胞体(ER)のCa2+恒常性に寄与していることが報告されているが、その分子機能は不明である。出芽酵母において七つの候補因子を過剰発現する株を作成してイクオリンアッセイを行ったところ、いずれもTRPY1の活性を向上させた。TRPY1と候補因子の相互作用解析の検討を目的に、TRPY1のN末端とC末端の細胞質領域のタンパク質の発現精製をpET発現系を用いて行ったが、いずれも封入体の形成が見られた。次に、pCold発現系を用いたところ可溶性画分への発現が確認された。次に候補因子のタンパク質発現と精製をpCold発現系を用いて行い、TRPY1のN末端領域とC末端領域とのプルダウンアッセイを行った。しかし、プルダウンアッセイ後のウェスタンブロットではいずれの制御因子も検出されなかった。 本研究で見出したC18タグを複数のオルガネラ膜タンパク質に付与したが、チラコイド膜イオン輸送体Yのみが液胞膜へ局在化した。より多くのオルガネラ膜タンパク質の出芽酵母液胞膜への発現を目指し、一部の液胞膜局在性タンパク質で確認されているN末端細胞質領域のdi-leucineモチーフ(XLL、Xは多くの場合Pro)とC18タグの併用を試みたが、液胞膜への局在化は見られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
高浸透圧応答活性の変化が見られた7つの候補遺伝子について、過剰発現株もしくは遺伝子破壊株を用いてパッチクランプ法による電気生理学的解析を行い、TRPY1チャネルの活性化もしくはコンダクタンスに変化が見られるか検討する。さらに、相互作用解析を目的に、蛍光タンパク質を融合させた候補因子とTRPY1を用いて出芽酵母の細胞内における相互作用を共焦点顕微鏡を使用して検討する。幾つかの候補因子は、液胞膜とミトコンドリア外膜とのオルガネラ結合(vClamp)に関わる液胞膜タンパク質VPS39との相互作用が報告されている。VPS39以外にも複数の膜タンパク質がvCLAMPの構築に関わっていることが報告されているため、これらの遺伝子欠損株を用いてイクオリンアッセイを行い、vClampがTRPY1の浸透圧応答に寄与しているか検討する。 出芽酵母の液胞膜に発現しなかったオルガネラ膜局在性イオンチャネルはいずれも出芽酵母のERへの発現が確認されているため、これらのタンパク質はいずれもER膜への挿入は行われていたと考えられる。このことから、ER膜からゴルジ体への小胞輸送において、目的の膜タンパク質が積荷タンパク質として認識されていないことが予想されるため、これまでに検討を行ったdi-leucineモチーフ以外のER exitシグナルをオルガネラ膜局在性イオンチャネルに付与し、液胞膜への発現効率が上昇するか検討する。本実験では、diacidicモチーフ(DXE)、diaromaticモチーフ(FF、YY)を各イオンチャネルのN末端もしくはC末端へ付与し、局在性を検討する。
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