研究課題/領域番号 |
22K05441
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三上 文三 京都大学, 生存圏研究所, 研究員 (40135611)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 非凍結X線結晶構造解析 / 常温X線結晶構造解析 / 酵素のpHによる構造変化 / 酵素反応機構 / β-アミラーゼ / 結晶内酵素反応 / X線結晶構造解析 / 非凍結結晶 / 構造生物学 |
研究開始時の研究の概要 |
酵素の多才な働きは酵素が基質と相互作用するときに生じる酵素タンパク質の構造変化によって発揮されている。タンパク質の構造はタンパク質を結晶化して回折X線を測定する X 線結晶構造解析が最も精度の高い方法である。通常の回折X線の測定ではより高い分解能を得るために凍結結晶を用いて測定されているが、凍結の影響によってタンパク質の微細な構造変化が検出されない場合が多い。そこで、本研究では数種類の酵素の結晶をガラスキャピラリーに封じて非凍結状態で回折データの測定を行い、これらの酵素と基質との複合体構造のpH変化を正確に測定することを目指している。
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研究実績の概要 |
酵素の多才な機能は酵素タンパク質の構造変化によって発揮される。タンパク質の構造変化を研究する手段としてはX線結晶構造解析が最も有効であるが、結晶中のタンパク質は結晶中で対称分子と相互作用しているために、構造変化を捉えるには対象部位の構造変化が結晶中で観察できる結晶を調製する必要がある。一般に行われている回折データの測定では分解能を向上させるため凍結結晶を用いるため、凍結による結晶格子の縮小とpHの変化の影響が大きく、真の構造変化を捉えるのが困難である。さらに、凍結保護剤の影響も無視できない。本研究では簡便なキャピラリー測定法を開発し、非凍結法を駆使した酵素と基質の複合体構造のpH変化を正確に捉えることで酵素機能の解明を行う。対象の酵素としては申請者が研究しているβ-アミラーゼの他、ソーマチン、CYP105A1、プロテイングルタミナーゼ、トランスグルタミナーゼ、コラーゲナーゼ、MHCクラスI分子等について、基質およびリガンドとの複合体のpHの変化による構造変化を明らかにすることを試みている。令和4年度は簡便なキャピラリー測定法の開発とキャピラリーを用いたβ-アミラーゼの基質複合体の非凍結測定を用いた活性部位構造のpH変化およびCYP105Aと非ステロイド系消炎剤との複合体の凍結結晶とキャピラリーを用いた非凍結結晶の構造比較を行った。さらに、ソーマチンのpHによる構造変化を明らかにするために、キャピラリーを用いた測定をpHを3.5~11まで変化させて行った。これらの構造解析の計算の効率化を図るためにファイルサーバーを導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では簡便なキャピラリー測定法の開発と非凍結法を駆使した酵素機能の解明を行っているが、従来のキャピラリー封入法よりも優れた簡便な非凍結結晶試料の調製法の開発については難航している。その理由は対象の結晶によって、大きさや結晶化母液が大きく異なり、操作の一般化が難しいのと短時間での結晶の周りの溶媒の除去および結晶サンプルの気密性の維持が難しい点にあり、現在更なる改良を試みている。一方、キャピラリー封入法を用いた非凍結結晶の解析については順調に進展し、β-アミラーゼのグルコースおよびマルトース複合体構造のpH依存性およびβ-アミラーゼ変異体酵素(E186AとE380A)と基質のマルトテトラオース複合体構造のpH依存性については回析データ収集と構造の精密化をほぼ終了している。また、CYP105Aと非ステロイド系消炎剤との複合体の凍結結晶とキャピラリーを用いた非凍結結晶の構造比較を行った結果、凍結保護剤が非ステロイド系消炎剤の結合に影響を及ぼしていることを明らにした。さらに、ソーマチンについては構造のpH変化を明らかにするために、キャピラリーを用いた測定をpHを3.5~11まで変化させて行い凍結結晶の回折データも収集し、高分解能での構造比較を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
1.非凍結晶サンプルの簡便な測定法と連続測定法の開発―については更なる改良を行うが、当面の非凍結結晶の構造解析には従来のキャピラリー封入法を活用する。また、1個の結晶から複数の異なる条件での非凍結測定を連続的に行う方法の開発については、シンクロトロンの強いX線を用いた場合、結晶のX線損傷が大きいため非現実的でありその開発を中止する。 2.機能解析用の結晶化スクリーニングキットの作製―については硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムカリウム等を結晶化剤とするスクリーニングキットの作製の検討を引き続き行う。また、ポリエチレングリコール(PEG)を結晶化剤として得られた結晶の母液を塩に置き換えて結晶の長期保存を行う方法についても検討する。 3.β‐アミラーゼの反応機構の解明―については既に得られている非凍結結晶の構造解析結果(グルコース複合体構造とマルトース複合体のpH依存性およびβ-アミラーゼ変異体酵素(E186AとE380A)と基質のマルトテトラオース複合体構造のpH依存性)について論文発表を行う。 さらに、マルトトリオース複合体についての非凍結回折データの収集を行う。 4.その他の酵素の機能解析と応用―については申請者が今まで構造を明らかにした酵素、タンパク質の中からソーマチン、P450、プロテイングルタミナーゼおよびトランスグルタミナーゼ、コラーゲナーゼ、MHCクラスI分子等について、異なるpHでの非凍結結晶の回折データの測定と構造解析の予備実験を行う。
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