研究課題/領域番号 |
22K05442
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福田 庸太 大阪大学, 大学院薬学研究科, 助教 (20783179)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 乾燥耐性 / 結晶構造解析 / 構造生物化学 / 浸透圧ストレス / 酸化ストレス |
研究開始時の研究の概要 |
地球上には、われわれヒトの生存環境からは想像もつかない過酷な環境に適応できる生物が多数存在する。例えば極度の乾燥状態や高塩濃度環境下で細胞は深刻な浸透圧ストレスにさらされ、損傷を受けるが、こうした極限環境を造作もなく生き抜く生物がいる。本研究の目的は、こうした浸透圧ストレスを克服できる生物に幅広く存在する新規なタンパク質の構造と機能をつまびらかにし、浸透圧ストレス耐性の分子基盤に関する新たな知見を得ることである。また、その応用利用を視野に入れ、異種生物由来の浸透圧ストレス関連タンパク質を用いて、極限環境ストレス耐性を細胞に付与することが可能かどうかを検討する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、浸透圧ストレスを克服できる生物に幅広く存在する新規なタンパク質の構造と機能をつまびらかにし、浸透圧ストレス耐性の分子基盤に関する知見を得ることである。本年度は、厳しい乾燥に耐える動物や植物、極限環境耐性を持つ生物が共通して有していながら構造及び機能が未知であるタンパク質Aの解析をこころみた。 タンパク質Aは、構造が既知のタンパク質との配列相同性を示さないいっぽうで、多様なドメイン・界の生物にホモログが見つかることがわかっており、とりわけ乾燥に強いとされる動物や植物に存在している。本研究ではまず高い乾燥耐性能を持つクマムシ由来のタンパク質を、大腸菌を用いて組換え体タンパク質として生産し、これを高純度精製した後にX線結晶構造解析を用いて立体構造を決定した。得られた立体構造から、タンパク質Aは金属結合部位を有していることが明らかになった。また、金属原子からの異常散乱を利用し、この金属が亜鉛であることを突き止めた。タンパク質内部に亜鉛結合部位を持つこと、分子表面から亜鉛結合部位までトンネル状構造があることなどから、本タンパク質が何らかの酵素であるという仮説を立てた。仮説に基づき、脱リン酸化活性を測定したところ、本タンパク質が幅広い基質に対して脱リン酸化活性を持つことが明らかになった。活性中心周囲のアミノ酸に変異を導入した変異体タンパク質も精製し、その活性についても検討した。また、本タンパク質をHEK293細胞に導入し、その細胞内局在を調べたところ、細胞内の様々な部位に存在しうることが明らかになった。なお、本タンパク質の菌類由来ホモログは小胞体に局在すると報告されていたが、クマムシ由来タンパク質は(少なくともヒト細胞で発現させた際には)小胞体上には観察されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
浸透圧ストレスを克服できる生物に幅広く存在する新規なタンパク質の構造と機能の解析について一定の成果を得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況に示したタンパク質の植物ホモログも大腸菌を用いて組換え体として発現させようと試みたが、封入体を形成してしまった。リフォールディングも試したものの、良好なサンプルは得られなかった。可溶化促進タグの挿入をはじめとして複数のコンストラクトを検討したが、芳しい結果が得られなかったため、今後は植物(タバコ)を用いた組み換え体作成を検討する。植物を用いて組換え体が得られれば、植物由来ホモログもクマムシ由来タンパク質と同様の活性を示すのかについて検討したい。
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