研究課題/領域番号 |
22K05451
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38040:生物有機化学関連
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山田 早人 名古屋大学, 学際統合物質科学研究機構, 特任助教 (70778258)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 休眠 / ケミカルバイオロジー / カイコ / RNA-seq |
研究開始時の研究の概要 |
昆虫の繁栄を支える環境適応応答の分子基盤の解明は、地球温暖化による生態系、生物多様性、農業生産への悪影響を克服する突破口となるため、喫緊の課題の1つとして位置付けられる。昆虫の環境適応応答は休眠と呼ばれ、胚期で休眠するカイコの休眠制御機構の研究が先行しているが、その詳細は未だ明らかでない。本研究では、休眠開始シグナルを自在に操作する低分子化合物 (カイコ休眠操作分子) とRNA-seqを組み合わせたケミカルゲノミクスを実施する。これにより、休眠開始シグナル下流因子の同定と機能解析を推進し、カイコ休眠誘導機構の全容解明を目指す。
|
研究実績の概要 |
昆虫の繁栄を支える環境適応応答の分子基盤の解明は、地球温暖化による生態系、生物多様性、農業生産への悪影響を克服する突破口となるため、喫緊の課題の1つとして位置付けられる。昆虫の環境適応応答は休眠と呼ばれ、胚期で休眠するカイコの休眠制御機構の研究が先行している。カイコでは休眠ホルモンを基点とするシグナル伝達によって休眠が実行されることが知られているが、その詳細は未だ明らかでない。 カイコ休眠制御機構を解明するため、われわれは休眠ホルモンシグナルの下流に存在する休眠誘導シグナルに焦点を当て、そのシグナル制御因子を作用標的とする化合物 (カイコ休眠制御分子) の探索を進めた。これまでにin vitroスクリーニングを実施し、休眠制御分子候補となる6種類の化合物を見出した。続いて、最も活性の高い化合物Xとシアニジンを用いたin vivoアッセイを実施したが、いずれの化合物投与においてもカイコ卵に対する休眠制御効果は認められなかった。そこで、研究計画を一部修正し、カイコ培養細胞とシアニジンを用いたin vitroでのケミカルゲノミクスを実施した。具体的には、カイコ培養細胞に休眠開始シグナルを入力し、休眠制御分子シアニジンの有無による遺伝子発現変動をRNA-seq解析により比較した。シグナル伝達に伴う経時的な遺伝子発現変動を追うため、シグナル入力後1.5, 3, 6, 12, 24, 48時間で調製した細胞サンプルを用いた。その結果、カイコ休眠開始シグナルの下流因子候補として、56個の遺伝子を同定することができた。今後はin vivoアッセイ系の再検討を進めるとともに、同定した下流因子候補の詳細な機能解析を行うことでカイコ休眠制御機構の解明を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度の研究計画としては、in vitroスクリーニングによって見つけたカイコ休眠制御分子候補についてin vivo活性評価を行い、これらが休眠開始シグナル拮抗剤か作動剤であるかを判定することを目標としていた。in vivo活性評価では、in vitroスクリーニングで最も活性の高かった化合物Xと、以前に我々がカイコ休眠制御分子候補として同定していたシアニジンを用いた。DIPA-CRISPR (Cell Rep. Methods, 2022, 16:100215) を参考にカイコ蛹へ化合物を投与し、次世代卵の休眠性を制御できるかどうかを評価したが、いずれの化合物投与もカイコ卵に対する休眠制御効果は認めらなかった。さらに、産卵直後のカイコ卵へマイクロインジェクション法による化合物投与も実施したが、休眠制御効果は認められず、化合物のin vivo活性評価は困難であると結論づけた。そこで、化合物のin vivo活性評価に基づく令和6年度の研究計画を一部変更し、カイコ培養細胞を用いたin vitroでのケミカルゲノミクスによってカイコ休眠開始シグナルの下流因子を同定する方向で研究を進めた。具体的には、カイコ培養細胞に休眠開始シグナルを入力し、休眠制御分子シアニジンの有無による遺伝子発現変動をRNA-seq解析により比較した。シグナル伝達に伴う経時的な遺伝子発現変動を追うため、シグナル入力後1.5, 3, 6, 12, 24, 48時間で調製した細胞サンプルを用いた。RNA-seq比較解析の結果、休眠開始シグナルに応答して発現変動する56個の遺伝子を同定することができた。以上のことから、研究計画の修正はあったものの、休眠制御分子を用いたin vitroでのケミカルゲノミクスにより、休眠開始シグナルの下流因子の同定を着実に進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
RNA-seq比較解析によって得られた休眠開始シグナルの下流因子候補について、文献調査や相同体検索を進め、有力な候補因子の絞り込みを行う。その後、それらの因子についての一過性発現解析やノックダウン解析およびゲノム編集によるノックアウトカイコ系統の作出を進め、休眠開始シグナルに関わるコア因子を同定する。 in vivoアッセイ系についても再検討を進める。具体的には、DMSO処理によるカイコ卵への化合物の取り込みが報告されていたため (PLOS ONE, 2013, 5, e64124)、これを参考にカイコ卵へのシアニジン投与を実施し、次世代卵の休眠性を制御できるかどうかを明らかにする。
|