研究課題/領域番号 |
22K05458
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38040:生物有機化学関連
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研究機関 | 岐阜医療科学大学 |
研究代表者 |
野下 俊朗 岐阜医療科学大学, 薬学部, 教授 (50285574)
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研究分担者 |
田井 章博 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 教授 (70284081)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ホモイソフラバン / アセチルコリンエステラーゼ阻害活性 / 神経突起伸長促進作用 / 構造活性相関 / 脳機能障害の改善 / 神経突起伸長作用 / AChE阻害作用 / ホモイソフラボノイド |
研究開始時の研究の概要 |
加齢に伴う脳機能障害は神経障害によるアセチルコリンの減少と神経細胞の老化による脳の神経ネットワーク形成能の低下が大きな要因であることから、アセチルコリンの働きを補完する作用と神経突起伸長活性とを指標としたハイブリッド活性化合物の作出が本研究の目的である。 Dracaena cambodiana由来の「龍血」から単離されたホモイソフラバンおよび数種の類縁体にアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害活性のみならず神経細胞分化のモデルとして使用されるPC-12細胞に対する神経突起伸長促進作用が見出されたことから、この化合物の構造をもとに新規な脳機能障害治療薬の開発につながる化合物の作出を目指す。
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研究実績の概要 |
Dracaena cambodiana由来の「龍血」から単離されたホモイソフラバンを基に作出された4-(chroman-3-ylmethyl)benzene-1,2-diolは高いAChE阻害活性を示すだけでなく顕著な神経突起伸長促進作用を示したことから本化合物の構造を基にしたより高活性の化合物を作出することを目的とし、2022年度はホモイソフラバノン骨格の構築法の確立とホモイソフラバンB環の水酸基をハロゲンに置換した化合物の合成および生物活性試験の実施・解析を第一の目標とした。 従前の経路での合成はその過程(4H-chromen-4-oneからchromaneへの一段階での接触水素還元)に於いて反応の再現性の低さと多くの副生成物の生成といった問題がありベンズアルデヒド誘導体を出発原料とし、benzo[f][1,4]oxazepineを経由、"N-atom delection"を行ない最終的にホモイソフラバンへと変換する合成経路を確立し、いくつかの類縁体の合成を完了した。しかしながら本経路は多数の類縁体を短時間で合成するには不向きでありより簡便な方法、すなわち4-chromanone/α-1-tetraloneとベンズアルデヒドからアルドール反応によって基本骨格を構築、得られたホモイソフラボノンを超音波照射下、Pearlman触媒を用いた接触水素添加によって一段階で目的物を得る方法を確立した。本法を用いて得られた類縁体を生物活性試験に供したところC環の酸素を炭素に置換した類縁体が4-(chroman-3-ylmethyl)benzene-1,2-diolと同程度の神経突起伸長促進作用とより顕著なAChE阻害活性を示すことを明らかにした。今後はこの化合物を基にした類縁体の合成を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
従前の合成は、4H-chromen-4-oneからchromaneへの還元を1回の接触水素還元で一気に行うものであった。本反応を実施したところ再現性の低さと多くの副生成物の生成といった問題が発生する。そこで令和4年度は、接触水素化を用いない別経路(benzo[f][1,4]oxazepineを経由し"N-atom detlection"を行なう経路)を計画し、目的としたホモイソフラバン誘導体へと導く経路を確立した。この経路によってホモイソフラバンB環の4位にフッ素,塩素,ヨウ素をそれぞれ導入した3-(4-harobenzyl)chromaneの合成を完了したものの、本法は実施に手間がかかることからより簡便な4-chromanone/α-1-tetraloneとベンズアルデヒドからアルドール反応によって基本骨格を構築、得られたホモイソフラボノンを還元することで目的物へと導く経路へと変更した。種々検討の結果、4H-chroman-4-oneからchromaneへの還元は、使用する触媒をPearlman触媒へと変更し、さらに超音波を照射しながら反応させることでの再現性の低さを克服できた。 この方法を用いることで令和5年度には約20種の類縁体の合成を達成でき生理活性試験も実施できた。その結果C環の酸素を炭素に置換した類縁体が4-(chroman-3-ylmethyl)benzene-1,2-diol以上に高いAChE阻害活性と神経突起伸長促進作用を示すことを明らかにできた。 以上、新経路でのホモイソフラバン類の合成法を確立し、生理活性試験も実施できたことから研究自体はおおむね順調に進展しているものの、学会発表・論文の公表には至っておらず総合的にやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度までの研究で行ってきたA環およびB環の構造に注目した類縁体の合成に加えて、令和5年度はC環に関しても化学的改変を行った類縁体の合成を行なった。その結果、C環の酸素を炭素に置き換えた類縁体がより有用な化合物である可能性を明らかにすることができた。そこで今年度はC環をさらに改変した類縁体の調製を行ないつつB環とC環とを連結する炭素数を変化させた類縁体の合成も行う。合成を完了したものから適宜、AChE阻害活性試験および神経突起伸長促進作用活性試験を実施していく。その過程で両活性を併せ持つ化合物に必要な構造的な条件を確定する。
なお、本研究で多数のホモイソフラバン誘導体を合成することである程度のホモイソフラバン誘導体のライブラリーとなるので、これを用いた新規な生物活性も追求することができる。これも本年度の課題とし、研究を行う。
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