研究課題/領域番号 |
22K05466
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38040:生物有機化学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
岩岡 道夫 東海大学, 理学部, 教授 (30221097)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | セレノトレオース / セレノトレオ核酸 / エナンチオマー / セレン創薬 / セレノ糖 / セレノ核酸 / 有機合成 / 抗生物活性 |
研究開始時の研究の概要 |
セレンは生体必須の微量栄養素であり、生体内において強い抗酸化作用や抗炎症作用を示します。しかし、セレンは同時に毒性の強い元素でもあり、実際にセレン化合物が医薬品として応用された例はありません。本研究では、生体親和性が高いセレノ糖やセレノ核酸といった生体分子のセレンアナローグに着眼しました。これらのセレンアナローグは実際に生体中にごく微量に存在するものです。これらのセレノ糖分子やセレノ核酸分子を新しく創製し、その生理作用や細胞毒性を評価し、セレン化合物を薬として応用するための基礎データの収集を行います。この研究を推し進めることによって、セレン創薬に向けた第一歩を踏み出すことができます。
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研究実績の概要 |
近年、セレン化合物が筋萎縮性側索硬化症(ALS)やCOVID-19感染症の治療候補薬として注目されており、セレン創薬への期待が高まっている。しかし、セレンには強い毒性があり、副作用の克服が医薬品応用へのボトルネックとなっている。そこで本研究では、生体親和性が高いと期待される生体分子セレンアナローグを用いることで、セレンの毒性の問題を克服し、セレン創薬の実現に向けた基礎データを収集することを計画した。具体的には、研究代表者が最近報告したトレオース骨格をもつセレノ糖およびセレノ核酸誘導体の合成に関する研究成果を基盤として、その光学活性体および種々の核酸塩基を導入した4'-セレノトレオ核酸誘導体を新たに多数創製し、その構造活性相関や細胞毒性を調べることを目的としている。 2022年度は研究の初年度であり、4-セレノトレオース誘導体のエナンチオマー(L体)の合成を検討した。研究代表者の研究室での以前の研究ではラセミ体の合成に成功していたが、研究計画に従ってエナンチオマーの合成を検討した。検討の結果、L-酒石酸を出発原料とする新たな合成ルートを確立し、目的とする4-セレノ-L-トレオース誘導体を約10種類合成することに成功した。合成したセレノ糖は、NMR解析とMS分析によって構造を決定し、光学純度に関してもキラルカラムを用いたHPLC分析によって光学純度が100%であることを確認した。 さらに、プメラー転位反応を用いて合成した4-セレノ-L-トレオース誘導体に核酸塩基を導入することについても検討を始め、塩基導入の反応条件の検討も進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、セレノ糖を10種類程度、各100 mg程度合成する予定であった。実際に、誘導体を含めて10種類以上の新規セレノ糖を合成することができた。合成物の量に関しても、目標とした100 mg以上を得ることができた。既に合成経路を確立できたので、今後はグラムスケールの合成が可能である。 合成した化合物の同定については、計画ではX線構造解析も行う予定であったが、良い結晶を得ることができず、今のところはX線構造解析による構造決定はできていない。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目は、1年目に合成した4-セレノ-L-トレオース誘導体を用いて、これに各種の核酸塩基を導入することで、4'-セレノ-L-トレオ核酸誘導体の合成を検討する。核酸塩基としては、6-クロロプリンなどのプリン塩基やウラシルやチミンなどのピリミジン塩基の導入を検討する。目標として、約10種類の4'-セレノ-L-トレオ核酸誘導体をそれぞれ50 mg程度合成する計画である。核酸塩基の導入反応では、収率が悪いこと(約60%)、α/βアノマー選択性を制御することが難しいことがこれまで問題であった。本研究では、反応の遷移状態をab initio計算で求めるなどして、反応条件の検討をより効率的に行なう計画である。2023年の8月から9月にかけて、合成したサンプルの生物活性試験を行うことも計画している。
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