研究課題/領域番号 |
22K05470
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38040:生物有機化学関連
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研究機関 | 公益財団法人サントリー生命科学財団 |
研究代表者 |
村田 純 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 主席研究員 (90500794)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 根分泌物 / 根圏環境適応 / 植物ー植物相互作用 / 植物-微生物相互作用 / 植物生長 |
研究開始時の研究の概要 |
植物が土壌微生物を感知し応答する分子機構に関する研究の多くは、植物1個体と微生物との関係性に限定して着目しており、土壌微生物の影響を受けた複数の植物個体同士の間に何らかの相互作用があるのか、ほぼ不明である。我々は近年、土壌微生物により生長抑制を受けたシロイヌナズナ個体同士が根分泌物を介して相互作用し、隣接個体の生長に影響を与えることを見出した。そこで本研究ではこの活性成分を回復誘導因子(Resilience inducing factor (RIF))と名付け、RIFの同定と機能解析を通じて、植物の「個体群」としての新規生存戦略の解明を目指すこととした。
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研究実績の概要 |
これまでの予備実験から根分泌物中にあると予想される、植物生長抑制低減活性、Resilience-Inducing Factor (RIF) の精製と同定を試みた。シロイヌナズナ(Col-0)の根抽出物をイオン交換、続いてODSによる多段階分画を行い、得られた各画分をあらかじめ塗布した寒天培地にシロイヌナズナ(Col-0)幼植物を移植した。Bacillus属との非接触的共培養時に、根抽出物を塗布しない場合に観察される主根伸長抑制、植物生長抑制が低減される画分を探索したところ、連続した画分にまたがる活性画分領域を3つ(RIF-B, RIF-C, RIF-D)見出した。活性画分に含まれる化合物をLC-Orbitrap MSおよびGC-MSにより分析した結果、RIF-Cから活性の消長と呼応する分子イオンピーク複数を得た。これらの分子イオンの断片化パターンのライブラリとの照合結果に基づいて候補化合物の標品を入手し、それら標品を寒天培地に塗布し、上記バイオアッセイに供した結果、2つの活性候補化合物A, BがRIF活性を示すことを見出した。活性候補化合物A, Bは根から分泌されるため、これらは有力なRIF候補であると判断された。さらに活性候補化合物Aの予想生合成酵素を単離し、大腸菌にて発現させ、活性試験を行ったところ、同遺伝子産物が活性候補化合物Aの生合成を触媒する酵素であると判明した。このin vitro実験結果を基に、次年度は既に入手した当該遺伝子破壊株系統におけるRIF生合成、分泌、Bacillus属との共培養時の生長抑制レベルを評価し、in plantaでのRIFの機能検証を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Bacillus属との非接触的共培養時に観察される植物生長抑制を低減する活性、Resilience-Inducing Factor (RIF) の精製と同定に向けて、シロイヌナズナ(Col-0)の根抽出物をイオン交換、続いてODSによる多段階分画を行った。得られた各画分をあらかじめ塗布した寒天培地にシロイヌナズナ(Col-0)幼植物を移植し、Bacillus属との共培養に供し、RIF活性を示す画分の探索をおこなった。その結果、RIF活性を示す連続した画分領域3つ(RIF-B、RIF-C、RIF-D)を見出した。このことから、RIF活性は複数存在する可能性と共に、活性の分画中にRIFが部分分解している可能性も考えられた。RIF-B, C, Dに含まれる化合物をLC-Orbitrap MSおよびGC-MSにより分析した結果、RIF-Cにおいて活性の消長と呼応する分子イオンピークを見出した。一方RIF-B, Dからは、そもそも検出された分子イオンピーク強度が低く、活性候補と目される分子イオンピークは見出されなかった。
RIF-Cから見出された、RIF活性と呼応する分子イオンピークの断片化パターンをライブラリと照合して得られた予想構造情報に基づいて標品を入手し、それら標品のRIF活性を上記バイオアッセイにて検証した結果、2つのRIF候補化合物AとBが、濃度依存的にRIF活性を示すことを見出した。さらに、シロイヌナズナの根から寒天培地にRIF候補化合物A、Bが分泌されること、その分泌量はBacillus属との共培養時に増大することも確認した。
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今後の研究の推進方策 |
まずRIF候補化合物Aに注力し、機能検証を進める。具体的には、(1)RIF候補化合物A標品を、これまで実施したシロイヌナズナ根抽出液の分画・精製スキームに供し、RIF-Cと同様の画分領域に溶出されるかを確認する。また、(2)RIF候補化合物Aのin plantaでの活性確認を行う。RIF候補化合物Aの生合成酵素遺伝子は別植物で既に見出されていたため、配列相同性に基づいてシロイヌナズナにおける当該遺伝子を探索し、大腸菌にタンパク質を発現させ活性試験に供した結果、RIF候補化合物Aを生成する活性を示すことを確認している。このin vitroで得られた予想活性情報を基に、当該遺伝子の破壊株系統を入手し、それら破壊株におけるRIF候補化合物Aの生合成、蓄積、根からの分泌量、およびBacillus属との共培養時における生長抑制を野生株と比較する。さらに、(3)RNASeq解析によりBacillus属と共培養した場合の同破壊株の遺伝子発現プロファイルを調べ、野生株と比較することで、シロイヌナズナのRIFへの応答機構に関わる遺伝子を探索する。
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