研究課題/領域番号 |
22K05472
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
吉澤 史昭 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10269243)
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研究分担者 |
豊島 由香 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (70516070)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | トリプトファン / タンパク質合成 / 肝臓 / シグナル伝達 / ラット |
研究開始時の研究の概要 |
トリプトファンが肝タンパク質合成を促進する作用をもつことは古くから知られているが、その作用解析は十分ではない。これまでの研究で、トリプトファンはmTORシグナル伝達経路を介して翻訳開始段階を刺激して肝タンパク質合成を促進することが示唆されているが、その作用点は明確になっていない。本研究は、トリプトファン自体をシグナル伝達物質として捉えて、トリプトファンの肝タンパク質合成促進シグナルの作用点を明らかにすることを目的としている。
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研究実績の概要 |
初代培養肝細胞を用いて、トリプトファンの肝タンパク質合成促進作用の評価系の確立を目指して研究を進めた。タンパク質合成の活性は、ラットを用いた実験でトリプトファン刺激に鋭敏に応答することが明らかになっている翻訳開始調節因子であるS6K1(ribosomal protein S6 kinase 1)のリン酸化度を指標にして評価した。トリプトファンの処理濃度および処理時間を変化させて細胞の応答を調べたが、in vivoで観察されたトリプトファンのタンパク質合成促進作用を再現できる実験条件の確立には至らなかった。また、ラット肝癌由来 H4IIE 細胞を用いてトリプトファンのタンパク質合成促進作用の検出を試みたが、タンパク質合成の促進作用は確認出来なかった。培養細胞を用いた実験と並行して、トリプトファンがラット肝臓の総タンパク質合成に与える影響を、ピューロマイシンを用いたSUnSET(Surface Sensing of Translation)法でタンパク質合成速度を測定することで調べた。18時間絶食させたラットに、水に懸濁させたトリプトファンを体重100gあたり135mg経口投与した結果、1時間後に肝臓のタンパク質合成速度が有意に増加した。このことから、トリプトファンは翻訳開始を刺激することで肝臓の総タンパク質合成を増加させることが確認された。生体内の肝臓で確認できる現象が肝細胞では確認できない原因について引き続き考察を続け、トリプトファンの肝タンパク質合成促進作用のin vitro評価系の確立を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的を達成するために、3つのマイルストーン「1. トリプトファンの肝タンパク質合成促進作用の培養細胞を用いたin vitro評価系の確立」、「2. トリプトファンによるオルニチン脱水素酵素(ODC)の活性変化のラット肝臓および初代培養肝細胞での確認」、「3. オルニチン代謝に関わる酵素(オルニチンアミノ基転移酵素(OAT)とODC)の関与の明確化」を設定して研究を進める計画である。本年度は上記の項目1を中心に研究を進めた。in vivoの肝臓で観察されたトリプトファンの肝タンパク質合成促進作用を再現できる培養細胞を用いたin vitro評価系の確立を目指して、初代培養肝細胞およびラット肝癌由来 H4IIE 細胞を用いて検討した結果、トリプトファンの作用について有用な追加情報を得ることが出来たが、評価系の確立には至らなかった。次年度以降に項目2および3を進めるにあたり、in vitro評価系の確立は非常に重要であることから、引き続き項目1を最優先に進める必要がある。また、トリプトファンがラット肝臓の総タンパク質合成を増加させることが確認されたことは、次年度以降に項目2を進めるための有用な追加情報である。 以上から総合的に考えて、現在のところ研究は当初の予定よりやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、目的を達成するために3つのマイルストーン「1. トリプトファンの肝タンパク質合成促進作用の培養細胞を用いたin vitro評価系の確立」、「2. トリプトファンによるODCの活性変化のラット肝臓および初代培養肝細胞での確認」、「3. オルニチン代謝に関わる酵素(OATとODC)の関与の明確化」を設定して研究を進めている。本年度は上記の項目1を中心に研究を進めたが、in vitro評価系の確立には至らなかったため、次年度も引き続き項目1の達成を最優先として、トリプトファンの処理濃度、処理時間の検討に加え、基本培地の組成も含めて実験条件の検討を進める。そして、次年度は「2. トリプトファンによるODCの活性変化のラット肝臓および初代培養肝細胞での確認」を主目的とする。現状ではin vitro評価系が確立されていないため、まずラット肝臓でのODCの活性測定法の習得に着手して、トリプトファンによるODCの活性変化を肝臓で確認する。in vitro評価系が確立され次第、その評価系を用いてトリプトファンによるODCの活性変化を測定するとともに、項目3を行う準備を進める。
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