研究課題/領域番号 |
22K05484
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 中村学園大学短期大学部 |
研究代表者 |
島田 淳巳 中村学園大学短期大学部, 食物栄養学科, 教授 (80289347)
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研究分担者 |
上野 浩司 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (60725068)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | グルタミナーゼ / 阻害物質 / betulinic acid / rotungenic acid / barbinervic acid / ursolic acid / pentacyclic triterpene / 抗うつ作用 / 食用ハーブ / グルタミン酸 / 酵素阻害物質 |
研究開始時の研究の概要 |
中枢神経系(CNS)において、興奮性神経伝達物質のグルタミン酸と抑制性神経伝達物質のγアミノ酪酸(GABA)のバランスが崩れると、精神疾患の発症につながると考えられている。申請者は、グルタミンからグルタミン酸を産生するグルタミナーゼとGABA分解酵素(GABAse)阻害(これ以降、酵素阻害という)作用を食用ハーブ由来成分が示すことを明らかにしており、うつ病モデルマウスを用い、抗うつ効果を示す酵素阻害物質の作用機序を解明し、うつ病予防に寄与する新規機能性表示食品と抗うつ薬開発の端緒を開く。
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研究実績の概要 |
中枢神経系において、興奮性神経伝達物質のグルタミン酸と抑制性神経伝達物質のγアミノ酪酸(GABA)のバランスが崩れると、精神疾患の発症につながると考えられている。本研究では、これまでにグルタミンからグルタミン酸を産生するグルタミナーゼとGABA分解酵素(GABAse)阻害(これ以降、酵素阻害という)作用を食用ハーブ由来成分が示すことを明らかにしており、うつ病モデルマウスを用い、抗うつ効果を示す酵素阻害物質の作用機序を解明し、うつ病予防に寄与する新規機能性表示食品と抗うつ薬開発の端緒を開くことを目的としている。本年度は、① 食用ハーブ由来酵素阻害物質の単離・構造決定、② 酵素阻害物質の構造-活性相関について得られた成果を報告する。 多種多様な機能性成分が報告されている食用ハーブに注目し、数10種類のエキスを用いて脳機能改善に関与する酵素(グルタミナーゼ、GABAse)に対する効果を検討してきた。これまでに、タイムのエキスからbetulinic acid、柿葉のエキスからrotungenic acid、barbinervic acidとursolic acidをそれぞれ単離・構造決定し、高いグルタミナーゼ阻害活性を示すことを明らかにした。Rotungenic acid、barbinervic acidそしてursolic acidはpentacyclic triterpene acid構造を有する類縁体であり、それぞれのグルタミナーゼ阻害活性から水酸基の数が阻害活性を促進することを明らかにし、学術雑誌に報告した(Shimada et al., 2022)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
柿葉エキスは、各種クロマトグラフィーにより精製し、酵素阻害物質を3種類単離した。3種類の酵素阻害物質は構造解析を行い、rotungenic acid、barbinervic acidとursolic acidと同定した。グルタミナーゼ50%阻害濃度は、rotungenic acidが13μM、barbinervic acidが14μM、そしてursolic acidが775μMであった。Rotungenic acid、barbinervic acidそしてursolic acidはpentacyclic triterpene acid構造を有する類縁体であり、それぞれのグルタミナーゼ阻害活性から水酸基の数が阻害活性を促進することを明らかにした。加えて、顕著なグルタミナーゼ阻害活性を示すrotungenic acidとbarbinervic acidを乾燥柿葉約1kgからそれぞれ単離し、うつ病モデルマウスによる抗うつ作用評価に必要な量を確保した。 一方、③ うつ病モデルマウスによる抗うつ効果の確認では、社会的敗北ストレスを与えていない正常なマウスを用い予備検討を実施し、10 mg/kgでは副作用が出ないことから、この濃度で抗うつ効果を検討することとした。社会的敗北ストレスマウスを量産するための専用ケージを設計し、業者にケージの作成を依頼したが、設計通りの寸法で作られておらず、使用できないため作り直している。専用ケージの調達が予定より遅れているが、これ以外の準備は整っているため、社会的敗北ストレスマウスを用い酵素阻害物質の抗うつ作用の検討を令和5年8月から実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度までの研究成果を踏まえて、今後の研究の推進方策について説明する。 1、食用ハーブ由来酵素阻害物質の単離と構造解析:柿葉エキスの他に、スクリーニングで選抜した高い酵素阻害作用を示す食用ハーブ(ローレル・ユーカリ)エキスから、酵素阻害物質を単離し、機器分析により構造解析を行う。 2、酵素阻害物質の抗うつ効果の検討:酵素阻害物質の抗うつ効果を検討するため、酵素阻害物質をうつ病モデルとして利用される社会的敗北ストレスマウスに与え、抑うつ様行動を評価する尾懸垂試験・ポーソルト強制水泳テストに加えて、空間作業記憶を評価するY字型迷路、抗不安効果を評価する高架式十字迷路テスト、自発活動性・情動性を評価するオープンフィールド試験を実施し、抗うつ効果を検討する。実施後、行動実験解析装置ソフトウェアANY-MAZEを使用して解析する。 3、抗うつ効果を示す酵素阻害物質の作用機序の検討:興奮毒性による神経細胞死の機序としては、グルタミナーゼとグルタミン酸受容体の過剰活性化とグルタミン酸輸送体の抑制が知られている(田中、2017)。また、GABA受容体の作用を刺激または増加させる薬物であるGABAアゴニストが、抗うつ作用を示すことが報告されている(神庭ら、2005)。そのため、酵素阻害物質を投与し高い抗うつ効果を示すモデルマウスから摘出した脳の記憶形成の中枢である海馬組織片を用い、免疫染色を行いグルタミン酸受容体であるAMPA受容体とNMDA受容体、そしてGABAA受容体、およびグルタミン酸輸送体とGABA輸送体の発現量と分布を解析ソフトStereo Investigator を用いて解析する。
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