研究課題/領域番号 |
22K05489
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
平井 静 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 准教授 (90432343)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 妊娠期糖質制限 / ケトン体 / βヒドロキシ酪酸 / 肥満 / 糖・脂質代謝 / マウス / 胎生期低栄養 / 腸内細菌叢 / 糖質制限 / 生活習慣病 |
研究開始時の研究の概要 |
我々はこれまでの研究において、マウスの妊娠後期のたんぱく質制限が出生仔において高脂肪食誘導性の肥満や糖・脂質代謝異常を増悪化するのに対して、糖質制限では出生仔の肥満や糖代謝が改善されることを見出している。また、妊娠期糖質制限によって胎仔の血中ケトン体濃度が上昇するとともに、出生後には腸内細菌叢が変化し、それが肥満や糖代謝改善に寄与する可能性が高いことを見出している。そこで本研究では、マウスの妊娠期にケトン体を投与することで、妊娠期糖質制限による次世代の腸内細菌叢変化や糖代謝改善がケトン体によって誘発されているのか否かに関して検証を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では、妊娠後期糖質制限が出生仔の生後初期の腸内細菌叢を変化させ、成獣後の高脂肪食誘導性の糖・脂質代謝異常を改善するメカニズについて検討するため、糖質制限時の母獣および胎仔の血中で上昇するケトン体(βヒドロキシ酪酸:βHB)に着目し、その関連性の解明を目的に実験を行っている。昨年度の実験では、C57BL/6J雌マウスの妊娠後期(妊娠10.5日目以降)に普通食を給与するとともに、5倍(高濃度)または10倍(低濃度)に希釈した40%βHB溶液を2 mL/dayで飲水させ、出産させた。出産後の母獣には普通食と水道水を摂取させ、仔は生後3週齢で離乳させた。仔マウスの出生時および授乳時の体重には群間で有意差は認められなかった。今年度はその飼育の続きとして、成獣となった仔マウスに60%kcal高脂肪食を15週間摂取させ、解剖を行った。高脂肪食負荷期間における仔マウスの体重増加量は、βHB投与によってやや低下する傾向が認められたものの、有意な差はなかった。しかし、雄の仔マウスにおいては、肝臓およびいくつかの白色脂肪組織重量がβHB投与によって有意に低下し、高濃度βHB投与では肝臓中トリグリセリド含量も有意に低下した。また空腹時血糖値およびインスリン値からインスリン抵抗性の指標であるHOMA-IRおよびインスリン感受性の指標であるQUICKIを算出したところ、βHB投与濃度依存的なHOMA-IRの低下とQUICKIの上昇が認められた。雌の仔マウスでは、雄ほどの顕著な差は認められなかった。以上の結果から、妊娠後期におけるケトン体摂取は、特に雄の出生仔における高脂肪食誘導性の脂肪肝とインスリン抵抗性を改善することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、動物飼育室の空調機故障により動物実験開始が遅れたため、当初の予定よりやや遅れが生じていたが、本年度はマウスの飼育が終了し、当初は次年度に予定していた仔マウスの解析を進めることができた。一方で、今年度予定していた腸内細菌叢解析については、解析法の確立に時間を要したため、次年度に実施することとした。したがって、全体としては概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
妊娠後期におけるβHB投与が、雄の仔マウスにおける脂肪肝と糖代謝異常を改善することが示唆されたため、今後はそのメカニズムについてさらに検討を行う。具体的には、肝臓におけるトリグリセリド蓄積および脂肪酸酸化や、インスリン抵抗性に関わる脂肪組織の慢性炎症や脂肪細胞分化に関して、組織化学的・分子生物学的な解析を進める。また、仔マウスから採取した糞便の腸内細菌叢解析を行い、βHB投与による影響を、過去に行った妊娠期糖質制限による影響と比較検討していく予定である。
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