研究課題/領域番号 |
22K05507
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
谷野 孝徳 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (50467669)
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研究分担者 |
大嶋 孝之 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (30251119)
松井 雅義 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (50415791)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 損傷菌 / パルス電界殺菌 / 殺菌 / パルス電界 |
研究開始時の研究の概要 |
パルス電界殺菌は電界効果による微生物構造の物理的な破壊を殺菌原理としており、食品の風味・食感・栄養成分等の品質を損なわない加熱が少なく温和な非加熱殺菌処理技術として注目される技術の一つである。近年、温和な殺菌処理で殺菌ストレスに曝された微生物の一部は、生理機能に障害を受け増殖能が消失しつつも死に至らない「損傷菌」となり得ることが広く認識され始めている。本研究は各種因子が損傷菌の回復・死滅に及ぼす影響を解明し損傷菌をも考慮に入れたパルス電界殺菌技術の殺菌効果の評価指針の確立する。またその科学的根拠を担保するために損傷菌に生じる生理機能障害と損傷回復時のストレス応答を明らかとする。
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研究実績の概要 |
損傷菌をも考慮に入れたパルス電界殺菌技術の殺菌効果の評価指針の確立を目的として、研究実施計画で計画した通りモデル微生物の大腸菌を対象生物として半致死的損傷菌の回復に必要な補助因子ならびに死滅を引き起こす選択圧となる因子の調査を実施した。また電界殺菌処理の有無に関わらず補助因子や選択圧の存在下で回復や死滅を示す事前損傷菌の存在を確認し、殺菌効果の評価指針として純粋にパルス電界殺菌で生じた損傷菌を評価する手法を考案した。 化学成分因子として3%塩化ナトリウム、3%塩化カリウム、3%エタノール、5%エタノールを選択圧とすることで全損傷菌(事前損傷菌+パルス電界で生じた損傷菌)を対象とした評価では優位な死滅を引き起こすことを確認した。一方でパルス電界殺菌で生じた損傷菌のみに着目した評価では3%エタノールを選択圧とした場合には優位な死滅は確認されないことが明らかとなり、特定の化学成分因子存在下では事前損傷菌とパルス電界殺菌で生じる損傷菌は異なる挙動を示すことが確認された。挙動の差は物理化学因子として14%スクロースによる浸透圧を選択圧として用いた場合にも確認され、事前損傷菌は死滅を引き起こしたのに対し、パルス電界殺菌で生じた損傷菌は回復傾向を示した。他の物理化学的因子として温度を選択圧とした場合において、事前損傷菌とパルス電界殺菌で生じた損傷菌は回復・死滅において逆の挙動を示すことが確認された。また温度と化学成分因子の組み合わせでは、化学成分因子が支配的な影響を及ぼすことも明らかとなった。 これらの結果から、大腸菌を対象としたパルス電界殺菌の殺菌効果を評価する上で殺菌後の温度環境を十分に顧慮に入れる必要があること、殺菌対象中に含まれる成分はパルス電界殺菌効果を決定する非常に重要なパラメータとなることを明らかとした。これらの結果は、パルス殺菌の産業利用において有益な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究実施計画にそっておおむね順調に進展している。 半致死的損傷菌の回復・死滅に影響する環境因子の解明による評価指針の確立を目的とした研究においても、対象微生物としてモデル微生物の大腸菌を用いた検討を一通り終了し、より産業的に有用な知見を集約するために黄色ブドウ球菌やサルモネラ菌を対象とした検討に取り組み、すでに研究結果が得られ始めている。 損傷菌に生じる生理機能障害と損傷回復時のストレス応答の解明を目的とした研究においても、大腸菌遺伝子欠損株ライブラリーを取得済みであり、実験を開始する準備は整っている。 これらの理由から研究は概ね順調に進展しているものと自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後も交付申請初期に記載した研究実施計画に従って研究を遂行する。 半致死的損傷菌の回復・死滅に影響する環境条件因子の解明による評価指針の確立については、黄色ブドウ球菌・サルモネラ菌を対象とし、大腸菌と同様に種々の化学成分因子ならびに物理化学的因子が事前損傷菌とパルス電界殺菌で生じる損傷菌の回復・死滅に及ぼす影響を体系的に調査する。 損傷菌に生じる生理機能障害と損傷回復時のストレス応答の解明については、大腸菌の遺伝子欠損株ライブラリーを用 いて死滅選択圧下・回復補助因子存在下でスクリーニングを行い、原因・関与タンパク質の同定に より生理機能障害とストレス応用を明らかとする。損傷およびストレス応答に関与する分子が複数に 及んでいる可能性も考えられ、遺伝子一重欠損株を用いた単純な生育の有無だけではスクリーニン グで検出できない場合も考慮し、増殖遅延、細胞形態の変化などにも着目して研究を実施する。
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