研究課題/領域番号 |
22K05510
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
北口 公司 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (50508372)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 食物繊維 / ペクチン / フェルラ酸 / マクロファージ / 炎症 / 腸管免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
食物繊維が,腸内細菌を介して保健機能を示すことが明らかとなりつつある。その一方で,特定の食物繊維が腸管構成細胞に作用し,細胞の機能を制御していることも示唆されている。研究代表者らは,水溶性食物繊維の一種であるペクチンが腸管免疫系細胞に直接作用し,炎症を抑制していることを発見した。しかしながら,ペクチンがどのように腸管免疫細胞の活性化を制御しているのかは不明である。本研究では,ペクチンを構成する多糖を認識し,免疫細胞の機能を制御するペクチン認識受容体を同定し,腸内細菌に依存しない食品由来多糖による新規な腸管免疫調節機構を解明する。
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研究実績の概要 |
食物繊維の摂取が腸内細菌を介して様々な疾患に対して保護的に働くことが示唆されている。一方で、特定の食物繊維が腸管細胞に直接働きかけ、その機能を制御している可能性も示唆されている。これまでに研究代表者らは、水溶性食物繊維の一種であるペクチンを摂取すると、小腸パイエル板のCD11c陽性細胞や大腸マクロファージにペクチンが直接作用し、腸内細菌非依存的に炎症応答を抑制することを明らかにした。しかしながら、その炎症制御機構は不明である。本研究では、ペクチンを認識する炎症制御分子の存在を仮定し、その分子の同定と作用機構を明らかにすることを目的とした。 これまでに研究代表者らは、ペクチン主鎖に付加した中性糖側鎖が、炎症性サイトカイン発現の負の制御に重要であることを見出しており、マクロファージからペクチン側鎖と特異的に結合するタンパク質を探索したが、ペクチン側鎖認識分子の同定には至らなかった。ペクチン側鎖のアラビナン領域あるいはガラクタン領域にはフェルラ酸がエステル結合していることが知られている。そこで、ペクチンによる抗炎症活性の本体は、ペクチン側鎖に付加したフェルラ酸である可能性も考え、フェルラ酸による炎症抑制効果を調査した。マウスマクロファージ細胞株RAW264.7へのフェルラ酸添加によりLPSで誘導される炎症性サイトカイン発現量が有意に低下した。さらに、LPSを投与することで全身性の炎症を誘導したマウスヘフェルラ酸を給餌するとエンドトキシンショックによる体温低下が緩和された。一方で、炎症性サイトカイン発現の抑制パターンはペクチン給餌マウスとフェルラ酸給餌マウスでは異なっていたことから、ペクチンの炎症抑制活性はフェルラ酸以外のオリゴ糖領域も関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ペクチン結合タンパク質の探索で特異的な分子が同定できておらず、当初の仮説に基づいた抗炎症作用メカニズムの解析がやや遅れている。一方で、ペクチン側鎖に付加したフェルラ酸が抗炎症作用の一部を担っている可能性やペクチン主鎖のメチルエステル基の修飾とインテグリンシグナルが関連する可能性が新たに浮上した。これら新たに得られた知見を加味して、免疫細胞におけるペクチンの認識機構の解析を側鎖以外の観点からも進めることが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
マクロファージからのペクチン側鎖の結合タンパク質の探索実験は引き続き実施し、ペクチン側鎖認識分子の同定を目指す。加えて、これまでは遊離フェルラ酸を使用して実験を行ってきたが、ペクチンに結合したフェルラ酸の含量や生理機能の調査、ならびにフェルラ酸認識分子の同定と炎症調節機構の解析を行う予定である。さらに、ペクチン受容体の候補としてフィブロネクチンが関与する可能性が示唆されたため、フィブロネクチンとインテグリンの結合や炎症誘導シグナル・接着分子発現に関するシグナル伝達経路にペクチンがどのような影響を及ぼすのかを解析する予定である。
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