研究課題/領域番号 |
22K05515
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
小西 良子 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (10195761)
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研究分担者 |
三宅 司郎 麻布大学, 生命・環境科学部, 教授 (00575128)
服部 一夫 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (10385495)
大仲 賢二 麻布大学, 生命・環境科学部, 准教授 (60257293)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 乳酸菌 / 表面プラズモン共鳴法 / カビ毒 / カイネティックス解析 / 結合能 / 機能性食品 |
研究開始時の研究の概要 |
カビ毒は食品衛生上重要なハザードである。近年、カビ毒の汚染は温暖化などで増加し、カビ毒の暴露を減らすかが急務である。ある種の乳酸菌はカビ毒との結合能を有しており腸管吸収を抑制する。カビ毒の溶解性によって結合する菌種や結合能が異なるが、細胞壁マトリックス構造が関連していると考えられている。 本申請課題では、カビ毒と乳酸菌の結合能をSRPにより定量的カイネティックス解析し、溶解性の異なるカビ毒と細胞壁マトリックス成分の結合性を明らかにするとともに、メタ解析と比較検討する。これらの知見は、多様なカビ毒に結合効果のあるカクテルを作成しカビ毒の抽出ツールや機能性食品開発などへの応用の基盤とする。
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研究実績の概要 |
目的:アフラトキシン(AF)は、天然物で最も強力な発がん物質として知られている。AFは主にとうもろこしなどの食品を汚染し、自然に体外に排出されず体内に蓄積するといわれている。近年野菜由来のある種の乳酸菌が食品中のAFと結合し菌体とともに体外へ排出することが明らかにされているが、それらの具体的な結合メカニズムは解明されていない。そこで本研究ではきゅうり由来乳酸菌(きゅうり由来菌、Lactcoccus lactis subsp. Lactis NCDO 604T)の生菌、熱処理死菌体および酸処理死菌体を用いて、AFとの結合様式を表面プラズモン共鳴法により明らかにすることを目的とした。さらに結合形態について考察を行った。 実験方法:乳酸菌は、常法で培養したものを生理食塩水で洗浄したもの(生菌)、オートクレーブで121℃、15分熱処理したもの(熱処理死菌体)、pH 2の塩酸溶液に2時間暴露させたもの(酸処理死菌体)を作成した。 結合能の測定は、乳酸菌とAFを試験管内で1時間振とうする方法(バッチ法)とカビ毒のリガンドを用いて直接的にカビ毒との結合を測定する方法(表面プラズモン共鳴法、フロー法)を比較検討した。カビ毒リガンドとして市販品である牛血清アルブミン(BSA) -AFM1、オボアルブミン-デオキシニバレノール(OVA-DON)を用いた。 結果及び考察:SPRを用いた測定では、生菌はBSA-AFM1に強い結合がみられ、OVA-DONには結合しなかった。熱処理及び酸処理死菌ではいずれのリガンドにも結合がみられなかった。一方バッチ法では生菌死菌とも70%程度の結合が見られた。この結果から、死菌は沈殿を伴うバッチ法ではAFは結合するが、フロー状態では結合しない、すなわち、流動的な体内での条件では生菌のみが結合能を有する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SPRでの測定条件の設定に、当初想定しなかった問題が発生したため、研究計画がやや遅れている。すなわち現在SPR測定に用いている基本緩衝液は、牛血清アルブミン含生理食塩水‐リン酸バッファー(pH7.4)であるが、この条件でのリガンドにおけるカビ毒の位置的状況については、水溶性カビ毒ではたんぱく表面に、疎水性カビ毒では内面に存在すると考えられる。そのため、今年度の測定では、水溶性カビ毒のリガンドを用いて行った。 今後疎水性カビ毒への結合性を測定する場合に対する基本緩衝液を選定する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度からの研究計画は以下の3つの課題を掲げる。 ①初年度で問題となったSPRでの測定条件の詳細な検討:疎水性カビ毒をもつリガンドと乳酸菌が結合しやすい条件をSPRで検討する。基本緩衝液にアルコールまたは有機溶媒を加えることによるたんぱくへの影響などを検討する必要がある。 ②乳酸菌の画分への結合性の測定と結合様式の解析:乳酸菌の細胞壁画分は、粗細胞壁画分、細胞壁画分、ペプチドグリカン画分、テイコ酸含有画分にわけ、それぞれのカビ毒に対する結合能をSPRで測定する。具体的には きゅうり由来菌(2.4×1011 cfu/10 mL in DW)の生菌を2時間ソニケートして菌体を均一化し、菌を破壊するためにホモジナイザーで3時間ホモジナイズした。これを粗細胞壁とする。次に本画分を4.5%SDS溶液と混合して100℃で1時間反応後、洗浄して沈殿をproteinase K溶液で、37℃で1時間反応させる。さらに沈殿をDNase RNase溶液で、37℃で1時間反応後、ペプシン溶液を37℃で24時間反応させ、凍結乾燥後に秤量し、細胞壁とする。この画分を10%トリクロロ酢酸(TCA)溶液と80℃で10分間反応後、上清を透析してテイコ酸画分とし、沈殿にproteinase K処理を行い、ペプチドグリカン画分とする。 ③酵母および他の乳酸菌のSPRを用いたカビ毒結合能のスクリーニング:乳酸菌以外にもカビ毒に結合能を示す微生物は報告されている。とくに酵母、特に細胞壁はカビ毒吸着材として市販されているものもある。そこで、SPRを用いた結合能のスクリーニング法を、乳酸菌および酵素で確立し、サプリメント等に有益な微生物の簡易迅速に検出する技術に資する。
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