研究課題/領域番号 |
22K05519
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
小竹 英一 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (20547236)
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研究分担者 |
今場 司朗 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (20332273)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 貧血 / ミネラル / ビタミン / 腸管吸収 / Caco-2 / 乳化剤 |
研究開始時の研究の概要 |
ミネラル・ビタミン不足による貧血は、精神の不調を引き起こし、不妊や引きこもり等の社会問題にも直結する。 本研究は、貧血に関わる鉄、水溶性の葉酸とビタミンB12の消化吸収を促進して栄養不足を解消することを目的とする。脂溶性ビタミンは水に溶けにくいが、脂質や乳化剤と一緒に摂取することで消化吸収が高まる。 一方の水溶性ビタミンやミネラルは水に容易に溶けると思われがちであるが、実は溶けにくい。これらに対しても、脂溶性成分同様、脂質や乳化剤を使って消化吸収を高めることが可能かもしれないと考えた。消化吸収促進の鍵となる脂質・乳化剤は一般的なものの検討に加えて、吸収機能にカスタム化した新規成分も創製する。
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研究実績の概要 |
本研究は、貧血に関わるミネラル、ビタミン類の腸管吸収を促進して貧血抑制・防止を目的とする。過去に行ってきた脂溶性機能成分の腸管吸収研究では、極性脂質が細胞間結合に作用し機能成分の吸収を促進することを見出していた。この促進メカニズムは水溶性成分の吸収促進にも適用可能かもしれないと考えた。また、水溶性といっても成分によっては簡単に水には溶解しないものもある。そのような成分は脂溶性成分と同様、混合ミセル化することで極性脂質の吸収促進効果が得られるかもしれない。当初、このような仮説を立てており、貧血予防、不妊治療やうつ改善、スポーツ栄養、美容増進、付加価値を有する乳化剤開発に貢献するための知見を与えると考えていた。 令和5年度はビタミンB12の腸管吸収について検討した。ビタミンB12としてシアノコバラミン、その代謝産物としてhydroxocobalamin、コエンザイムB12、メチルコバラミンの4種類について令和4年度中に分析方法を確立しておいたが、令和5年度はシアノコバラミンの吸収を調べた。吸収後のHPLC分析で他の3種類は代謝産物としては現れなかった。また、消化吸収促進剤となる一般的な極性脂質に加えて、乳化成分も4種類有機合成して検討した。 吸収試験の方法は確立できたが、今のところ、吸収促進効果が再現性良くは得られておらず、また、吸収に必要な内因子の試薬の納品が遅れたことやその試薬の水への難溶解性により、仮説のような結果は残念ながら得られていない。他の成分(葉酸、鉄)についての検討は進まなかった。このような状況の為、研究成果の外部発表などは全くできていない状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
進捗は遅れている。ビタミンB12の吸収に必要な内因子の納品が12月末(注文は年度初め)だったこと、この試薬が水に溶けにくいこと、非常勤職員の雇用が思ったようにできなかったことが原因としてあるが、今のところ仮説どおりの結果が得られていない。 令和5年度は、ビタミンB12として、主にシアノコバラミン(CN-cbl)についてモデル細胞Caco-2を用いて検討した。この細胞を実験で使用するためには3週間の培養が必要であり、これだけでも時間がかかる。脂溶性成分の腸管吸収では、成分を混合ミセル化する必要がある。CN-cblは水に可溶で培地に溶解した場合と、混合ミセル成分共存の両方を検討した。混合ミセル成分共存の場合に、吸収促進剤としての極性脂質や乳化成分を添加した(これらは培地のみでは不溶)。乳化成分は極性基がGABAで共通の4種類(疎水性側がC12、C14、C16、C18)を有機合成した。極性基が一番短い成分のみ(C12-GABA)混合ミセルが調製可能であった。 また、ビタミンB12の吸収に必要の内因子の納品前に、CN-cblの濃度1~50 μMで腸管モデルに供した。細胞からは固相抽出によりCN-cblを回収し、HPLC分析を行った。その結果、内因子不在化でも25μM以上で吸収が可能であったが、HPLC分析での定量下限を考えると50μM程度が必要であった。CN-cblに対する極性脂質などの吸収促進効果は再現性が得られていない。また内因子の効果も今のところ適正に評価できていない(培地に不溶。高濃度で細胞毒性)。CN-cblより高疎水性のメチルコバラミンについても検討したが、こちらは全く吸収されなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度、シアノコバラミン(CN-cbl)の吸収に関しては検討を継続する。内因子の溶解を工夫し、均一に、細胞毒性のない状況下で実験する必要がある。具体的には、これまでの知見やノウハウから、少量のDMSO等の有機溶媒に溶解してから培地に均一に分散させてみる。その後、細胞毒性のない添加量を見出す。極性脂質や乳化成分の吸収促進効果については、添加のタイミング(昨年度はCN-cblと同時添加、新たにプレインキュベート添加)も検討する。 ビタミンB12に対する吸収促進効果が認められない場合は、当初の仮説とは異なり、水溶性成分に対しては吸収促進効果が無いという知見を得たということになる。おそらく水溶性の成分に対しては、そのような効果を得るためには脂溶性化する必要があるということになる。ただし、よくあるような脂肪酸を水溶性成分に結合させただけでは腸管内でリパーゼにより加水分解されてしまい、吸収が促進されるとは思えない。現在、別の資金で行っている研究で新たな知見を得ており、将来的に腸管で簡単には加水分解されない脂溶性化が可能と考えている。 また、令和6年度、葉酸、鉄の腸管吸収について検討する。葉酸はビタミンB12に比べて簡単には水に溶解せず、逆に言えば混合ミセル化して極性脂質や乳化剤による吸収促進が期待できる。
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