研究課題/領域番号 |
22K05524
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
田中 沙智 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (90633032)
|
研究分担者 |
真壁 秀文 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (90313840)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | プロシアニジン / ガレート / 樹状細胞 / TLR7 / 抗炎症作用 / 炎症 / 皮膚炎 |
研究開始時の研究の概要 |
PCB2ガレートのTLR7シグナル抑制メカニズムを明らかにし、生体内におけるPCB2ガレートの疾患予防効果を検証する。まず、TLR7がリガンドを認識してからサイトカイン産生までの各段階におけるPCB2ガレートの作用点を明らかにする。また、TLR7シグナルの誘発で発症する乾癬モデルマウスを用いて、PCB2ガレートのTLR7シグナル抑制を介した乾癬の軽減効果を検証する。これら一連の研究により、PCB2ガレートを機能性食品および素材として応用するための基礎的知見を得る。
|
研究実績の概要 |
ウイルスのRNAを認識するToll-like receptor 7(TLR7)は、自己の核酸も認識して炎症を誘発し、自己免疫疾患の発症に関与することが報告されている。これまで研究代表者は食品に含まれるポリフェノール類の一つプロシアニジンB2(PCB2)ガレートがTLR7シグナルを抑制することを見出している。そこで本研究では、PCB2ガレートのTLR7シグナル抑制メカニズムを明らかにし、生体内におけるPCB2ガレートの疾患予防効果を検証する。研究代表者は1年目の研究において、PCB2ガレートがv-ATPaseの阻害を介してエンドソーム内の酸性化阻害し、TLR7シグナルによるサイトカイン産生を制御することを明らかにした。2年目の研究では、イミキモド誘発乾癬モデルマウスにPCB2ガレートを経口投与した際の乾癬抑制効果について検証した。C57BL/6マウスにPBSあるいはPCB2ガレート(2 mg/mouse/day)を7日間経口投与した。投与開始3日目から、マウスの背部皮膚に5%イミキモドクリームを5日間塗布することで乾癬様皮膚炎を誘発した。イミキモドを塗布したマウスの皮膚では、肥厚、紅斑および鱗屑の症状が観察されたが、PCB2ガレートの経口投与によりこれらの皮膚症状が改善した。また、皮膚における炎症性サイトカインのmRNA発現が低下した。さらに、脾臓由来CD4陽性T細胞のIL-17とIL-22のmRNA発現を解析したところ、PCB2ガレートの経口投与により発現が低下した。加えて、イミキモドの塗布で増加するCD4陽性T細胞のIL-17産生も、PCB2ガレートの経口投与により低下した。以上の結果から、PCB2ガレートは、イミキモドにより活性化される樹状細胞のサイトカイン産生を抑制することで、T細胞由来のIL-17産生を制御し、乾癬様症状を改善することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の当初の予定としては、イミキモド誘発乾癬モデルマウスにPCB2ガレートを経口投与した際の乾癬抑制効果について検証することを計画していた。まず、イミキモドクリームをマウスの背部に塗布することで乾癬様症状を発症することを確認した。次に、PCB2ガレートの経口投与により、乾癬様症状が低下することを確認するために、経口投与するタイミングや投与量について検討を行った。イミキモド誘発乾癬モデルマウスを用いた実験を行っている文献を参考に、様々な条件で検証を行ったところ、PCB2ガレートの投与開始3日目から、マウスの背部皮膚に5%イミキモドクリームを5日間塗布することで、PCB2ガレートによる乾癬様症状の改善効果を確認することができた。加えて、皮膚や脾臓での炎症もPCB2ガレートの投与で抑制されることが示され、PCB2ガレートの生体内での抗炎症効果を証明することができた。以上より、当初予定していた実験が完了し、有望な結果を得られていることから、概ね順調に研究が進行していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
一般的に3量体以上のポリフェノールは腸管吸収率が低いことが示されており(Keqin et al. J Agric Food Chem, 2012.)、二量体ポリフェノールであるPCB2ガレートの腸管吸収割合および血中濃度については不明である。そこで、PCB2ガレートを経口投与したマウスを用いて、血中移行割合を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)にて解析する。また、in vitroにおいて腸管吸収解析を行うため、Transwell輸送アッセイを実施し、ヒト腸管上皮細胞株(Caco-2)の単層膜間を移動したガレート型プロシアニジンの割合をLC-MSにて解析する。以上の研究により、PCB2ガレートの腸管からの吸収機構と血中への移行割合について明らかにする。 さらに、PCB2ガレートの抗炎症効果における構造活性相関を明らかにするために、PCB2ガレートを構成する化合物のサイトカイン産生抑制効果について解析を行う。PCB2ガレートは、没食子酸、エピカテキン、エピガロカテキン、プロシアニジンB2により構成される。そのため、これらの化合物をマウス脾臓細胞や樹状細胞に添加した時のサイトカイン産生について解析を行い、各化合物による抗炎症効果の違いについて検証を行う。一連の実験を通して、抗炎症効果におけるPCB2ガレートの重要な構造を明らかにする。
|