研究課題/領域番号 |
22K05532
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
吉崎 隆之 福山大学, 生命工学部, 准教授 (70515189)
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研究分担者 |
岩口 伸一 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (40263420)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ワイン醸造 / 酵母 / NYR20 |
研究開始時の研究の概要 |
ワインは世界的にもっとも重要な農産加工品の1つである.温暖化の影響でブドウ栽培適地が北上する傾向にあり,従来の産地ではブドウの色付きが悪くなる問題が生じている.このようなブドウで醸造した赤ワインは色調が薄くなり,商品価値が損なわれている.本研究では,奈良女子大学の岩口らが開発した,赤色色素を細胞外に分泌する非常にユニークな酵母をワイン醸造に応用し,この酵母の欠点である発酵の遅さと赤色色素分泌の不安定さを実用レベルに改善することで,ワイン用ブドウの着色不良の問題を醸造技術の面から解決を目指す.
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研究実績の概要 |
NYR20株によるロゼワイン醸造では,発酵速度が遅いためにブドウ原料によっては着色するまで想定以上の時間を要し,欠点臭である酢酸が生じる場合がある.そこで,原料ブドウを殺菌してから発酵を行うことで,長時間の発酵において雑菌の増殖を抑制できないかを検討した. 本学で栽培したマスカット・ベーリーAを原料とし,ブドウ粒を切り落とした後,5つの殺菌処理群(コントロール群,水道水浸漬処理群,微酸性電解水浸漬処理群,オゾン水浸漬処理群,安定化二酸化塩素処理群)を設定し,各群に対して小仕込み試験を行った.各群の殺菌方法についてはそれぞれn = 3とし,コントロール群では特別な処理を行わず約2.1 kg(700 g×3)のブドウを仕込みに用いた.水道水処理群,微酸性電解水,およびオゾン水処理群については5 Lのポリジョッキに処理液を4.2 Lとブドウ約2.1 kgを入れ,1分間浸漬する操作を3回繰り返した.安定化二酸化塩素処理群は50 ppmの処理液を1粒ずつスプレーした後,水気を取り除いた.続いてブドウを破砕して発酵を行い,重量変化がなくなるまで朝晩2回の撹拌を行い,果皮の引き抜きや滓引きなどはせず12週間経過を観察した.その結果,微酸性電解水およびオゾン水で処理した群では産膜形成が見られず,PCR-DGGE解析により菌叢の変化が確認され,特に菌類のバンドパターンに違いが見られた.そこで,安定化二酸化塩素を除く上記殺菌処理群を同様に準備し,通常の小仕込み試験を実施して製成ワインの一般分析および香気成分分析を行った.その結果,アルコール濃度や有機酸組成には有意な差はなかったが,殺菌処理群では1-Hexanolの減少や酢酸エチルと酢酸イソアミルの増加が見られた.以上のことから,原料ブドウを微酸性電解水やオゾン水で殺菌水処理することで醪を長期間放置した際の産膜形成や菌叢に一定の効果が認められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブドウ原料によってはNYR20株による着色が上手く行かない場合があり,新たなブドウの前処理方法を試している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は殺菌処理したブドウ原料で比較的大きなスケールでの試験醸造を行い,長期間の発酵において欠点臭を抑えられるかどうかを検討するほか,引き続きNYR20株のより安定した色素分泌の条件を小スケールで検討する.具体的には,1. 酒母調製時のYPAD培地におけるアデニン濃度を,標準的な0.04%以外で試す.2. NYR20株のビタミン要求性を調べ,ブドウの種類による色素分泌のし易さとの関連を調べる.3. 赤ワイン醸造では通常発酵熱が産生し,タンク中心部が一時的に30度以上にも達するが,NYR20株は発酵速度が遅いためにタンクの温度はそこまで上昇しない.そこで温度制御により発酵温度を30度程度にすることで,発酵終了までの期間を短縮できないか検討する. これまでの研究でNYR20株によるマスカット・ベーリーA原料の赤ワイン,ロゼワイン醸造については大きな問題がないことを明らかにできた.本酵母によるマスカット・ベーリーAワインの製品化に向け,近隣のワイナリーの協力も得て醸造試験を行う予定である.
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