研究課題/領域番号 |
22K05533
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 日本大学短期大学部 |
研究代表者 |
太田 尚子 日本大学短期大学部, その他部局等, 教授 (00203795)
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研究分担者 |
堀 孝一 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (70453967)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 複合系食品ゲル / 物性と構造 / 超音波分光分析 / 共焦点レーザー走査顕微鏡観察 / 粘弾性測定 / 赤外分光分析 / 動的粘弾性測定 / 構造 / 物性 |
研究開始時の研究の概要 |
未利用食品タンパク質のゲル化特性向上を目指し、物性とその発現機序を解明する。又、熱安定性を異にする他種タンパク質との混合系を構築し、その物性発現過程を非破壊分析法の一つである超音波分光分析など種々の機器分析を用いて解明する。 これらの営みを通して、以下のような2点に着手し基礎から応用へ繋げる。 1、個々のタンパク質のもつ特性を活かしつつ、「混合」という簡便で安全な手法により発現される新規物性と構造との関係を明らかにし、その物性を合目的的に制御する術を見出す。 2、この成果を応用し、実用化に向けゲル状またはシート状素材(生分解性プラスチック等)の創出へ発展させる。
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研究実績の概要 |
これまで、乳中の主要タンパク質であるカゼインと乳清タンパク質の相互作用について、市販カゼインナトリウムおよび市販乳清タンパク質を用いて調べてきた。 具体的には、通常熱に対して高い安定性を有するカゼインナトリウムと、熱凝固性の乳清タンパク質に対する、(個々のタンパク質の57℃10分処理という)温和な前処理が、その後の混合タンパク質系のグルコノデルタラクトン存在下での酸性条件下に伴う物性発現と構造の変化に及ぼす影響を調べ、現在論文を投稿中である。 その結果の概要は、カゼインに予め温和な前処理を施した後、乳清タンパク質と混合しグルコノデルタラクトンによる酸性化を導いた場合には、未処理などを含む他の3条件下に比べ、両タンパク質の相互作用が大きいこと(共存共在率が向上)が明らかになったというものである。 また、次の課題としてタンパク質・多糖間相互作用研究に着手している。 具体的には乳清タンパク質と食品添加物として多用されるカラギーナンの混合系の食品学機能特性向上のための基礎研究である。方法には、静的粘弾性測定、赤外分光分析を主なツールとして用いている。カラギーナンには構造の異なる3つの種類があり、その中でもカッパカラギーナンはゲル化能に優れ、一方で、ラムダカラギーナンはゲル化能を有していないことが知られている。しかしながら、塩化カリウムなどの塩の存在下でその挙動が変化する可能性に注目し、現在、その変化の挙動を詳細に解析することに着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は複合系食品ゲルに関する基礎研究である。タンパク質・タンパク質間相互作用について一つのまとまりを得、その成果を学術雑誌に投稿中である。公開までにいくつかのステップがあるが、じっくり取り組む予定である。 その概略は、次のようである。即ち、超音波分光分析と共焦点レーザー走査顕微鏡観察の手法を用いて、混合タンパク質の発現する物性と構造を明らかにしようとするものである。その結果、本来高い熱安定性を有する乳カゼインナトリウムが、温和な前処理(57℃10分加熱)により、後に未処理の乳清タンパク質と混合、グルコノデルタラクトン存在下での酸性化に伴い、高い共存共在率を示し、更にそのネットワークは、乳清タンパク質を前処理した場合とは異なる微細構造(枝分かれが少なく、クラスターの発達した微細構造)を有していることが判った。超音波分光分析での、超音波速度の挙動を考え合わせると、カゼインナトリウムを前処理することは、より相分離の抑えられた混合タンパク質による可溶性凝集体が基盤となったゲルの創出につながることが示唆された。 また、色々な学会などで有益な情報を得、次の複合系食品ゲルの研究テーマであるタンパク質・多糖間の相互作用を幾つかの機器分析を用いて解析することを開始できているところであり、上記の進捗状況とした。本研究は、上記のタンパク・タンパク間とは全く異なる相互作用を発現することが予想される。そこで、現在、乳清タンパク質と相互作用を起こしやすいことが報告されているカラギーナンのの各種材料を食品メーカーからもらい受け、その添加効果を比較しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
現在、複合系食品ゲルの構造と物性の関係の中ではじめに着手した、熱安定性の異なる乳タンパク質(カゼインナトリウムと乳清タンパク質)間相互作用を明らかにし、その成果を学術雑誌に投稿中である。審査員から、タンパク質の一級アミンに共有結合すると考えられている蛍光ラベル化剤そのものがゲルの微細構造に影響する可能性があるとの指摘を受け、今後ラベル有無しでの物性と構造を調べていく予定である。 また、二つ目の複合系食品ゲル系として、タンパク質・多糖類の相互作用について実験を開始した。具体的には多糖類として、乳タンパク質と相互作用することが知られている各種カラギーナンを用いる。前述したようにカラギーナンはその種類によりゲル形成能が異なることが知られており、これまでゲル形成能がないとされていたλカラギーナンの高度利用を目指した基礎研究を行うことにより、ゲル状食品素材のみならず、飲料用素材としての発展を目指す。
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