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酵母菌体内酵素が関与する清酒の劣化臭「老香」生成機構の解明と新規抑制法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K05537
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分38050:食品科学関連
研究機関福島大学

研究代表者

藤井 力  福島大学, 食農学類, 教授 (40372198)

研究分担者 高橋 亮  福島県ハイテクプラザ, その他部局等, 研究員 (40391049)
松本 大志  福島県ハイテクプラザ, その他部局等, 研究員 (50942827)
齋藤 嵩典  福島県ハイテクプラザ, その他部局等, 研究員 (20939029)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
キーワード清酒 / 貯蔵劣化臭 / ジメチルトリスルフィド / 酵素反応 / 酵母 / 老香 / 清酒酵母 / 清酒貯蔵劣化臭 / 清酒輸出促進 / SDGs
研究開始時の研究の概要

老香(ひねか)は清酒、特に高級酒や輸出酒の品質を著しく毀損する貯蔵劣化臭で、ジメチルトリスルフィド (DMTS)が主要な原因成分である。本研究では死滅酵母から漏出する酵素が関わるDMTS生成機構を解析、清酒の輸出促進やコロナ禍被害が集中する清酒産業再活性化に貢献する実践的な老香抑制技術を開発することを目的とする。予備実験により酵素反応に関係することが明らかとなった酵母遺伝子と酵素反応の関係を手がかりに解析する。老香を抑制できれば、清酒メーカー出荷時の品質で消費者に清酒が届くほか、貯蔵や輸出、国内の流通における冷蔵が不要となりSDGs政策にも貢献できる。

研究実績の概要

老香(ひねか)は清酒の品質を毀損する貯蔵劣化臭で、ジメチルトリスルフィド(DMTS)が主要な原因成分である。DMTS生成経路は2系統が見出されたが、本研究では死滅酵母から漏出された酵素と基質が関わる酵素反応(DMTS生成経路)を解明し、酵素反応の阻害による老香抑制技術開発と普及を目的としている。酵母のMDE1遺伝子またはMRI1遺伝子の機能が欠損すると当該酵素反応が進みにくくなることから、本年度は、これらの遺伝子が酵素反応の酵素そのものをコードしているのか、基質生成に関わる遺伝子なのか解析できる材料や方法の検討を中心に研究を進めた:①酵母遺伝子破壊株の作成、②酵母破砕による酵素や基質取得の試み、③酵母培養条件の検討や設定など。①では清酒酵母1倍体の当該遺伝子の破壊株を取得した。②ではガラスビーズで酵母を破砕し、基質や酵素を得る条件を検討した。③では清酒もろみを模した培養条件の検討を行った。清酒もろみから得た酵母では基質も酵素も酵母由来であることが示されたが、通常の培養した酵母を破砕しても酵素反応は進まなかった。これは通常の培養条件では、基質か酵素かその両方が酵母内に蓄積されていないことを示している。そこで、清酒もろみで蓄積する葉酸の蓄積挙動に着目し、酵素や基質を含む清酒もろみの酵母の状態を模した培養条件の検討を行った。
また、菊正宗酒造株式会社や酒類総合研究所との共同研究により、非協会系清酒酵母であるキクマサ酵母で老香生成能が低い原因を解析し、Sアデノシルメチオニン(SAM)が酵素反応を促進する結果を得て論文化した。キクマサ酵母の酵素反応ではSAMまたは変換されたものが基質であることを強く示唆する結果である。次年度は協会系清酒酵母でもSAMまたは変換されたものが酵素反応の基質なのか、MDE1遺伝子やMRI1遺伝子の機能欠損が与える影響はどうなのか検討する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

我々の研究ではDMTS測定にヘリウムガスが必要であるが、深刻なヘリウムガスの供給難の状況下では当初予定していた老香前駆体生成酵素のスクリーニング実験は実施できなくなった。また、それを補う実験もDMTS測定点数を考えて慎重に計画し直すことが必要になったことから実験開始が遅れた。現在、未知のDMTS前駆体の探索を中心に実験しているが、共同研究での知見からSアデノシルメチオニン(SAM)が基質である可能性が示され、酵素反応の実態に迫ることができそうである。少し遅れてしまったが、挽回できると考えている。

今後の研究の推進方策

ヘリウムガスの使用量を減らした測定の工夫などはすでに行なっており、1本でも多く供給可能な業者をあたっている。また、これまでの実績から比較的供給がある酒類総合研究所への出張による分析も行いたい。なお、共同研究により、キクマサ酵母で醸造した清酒で老香生成が進みにくいのは、酵母が生産するSアデノシルメチオニン(SAM)が少ないからであることを示唆する結果を得て論文化した。この研究の中で、加熱処理をしていない清酒にSAMを添加すると酵素反応が促進される結果を得たことなどから、SAMもしくはSAMの変換された物質が基質となっている可能性が高いと考えている。多くの酒蔵が使用する協会系清酒酵母でも同様か、この点に焦点をあて、より詳細で直接的な結果を得られるよう研究を進める。
次年度は、今年度作成した酵母遺伝子破壊株や酵母破砕方法、酵母培養方法を利用する。また、日本醸造協会から我々の作成したMDE1遺伝子またはMRI1遺伝子の変異株が販売されたことから、当該変異株を用いた醸造で得た清酒や酒粕を利用し、酵素反応の実態に迫りたい。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Effect of S-adenosyl-methionine accumulation on hineka odor in sake brewed with a non-Kyokai yeast2024

    • 著者名/発表者名
      Shibata Yusuke、Yamada Tasuku、Ikeda Yuriko、Kanai Muneyoshi、Fujii Tsutomu、Akao Takeshi、Goshima Tetsuya、Isogai Atsuko、Takahashi Toshinari
    • 雑誌名

      Journal of Bioscience and Bioengineering

      巻: 137 号: 4 ページ: 268-273

    • DOI

      10.1016/j.jbiosc.2024.01.004

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 協会系酵母と系統の異なる清酒酵母に見られる 「老香」を発生させにくい特長へのSAM低蓄積の関与2022

    • 著者名/発表者名
      柴田 裕介, 池田 優理子, 金井 宗良, 藤井 力, 赤尾 健, 五島 徹也, 磯谷 敦子, 山田 翼
    • 学会等名
      第74回日本生物工学会大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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