研究課題/領域番号 |
22K05540
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
福田 伊津子 神戸大学, 農学研究科, 助教 (50418943)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 腸内細菌叢 / 短鎖脂肪酸 / 腸管上皮細胞 / 神経細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、腸内細菌叢と疾病・健康との関連性が指摘されており、腸内細菌叢の代謝産物が宿主であるヒトの健康に寄与していることが明らかとなっている。ヒトと実験動物とでは腸内細菌叢構成のみならず、食品の腸内滞留時間や消化管構造も異なるため、実験動物に依らない腸内生態系を考慮した評価系を構築することは重要な課題である。腸管上皮細胞の粘膜バリア機能がそこに棲息する腸内細菌叢を制御することで腸内環境の恒常性を保つことが報告され、また、脳腸相関に関わる生理活性物質も多数報告されている。本研究では、腸内生態系を考慮したヒト腸内細菌叢モデルの最適化とポストバイオティクスの評価系の構築を目的とする。
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研究実績の概要 |
ヒト腸内細菌叢モデル(KUHIMM)を最適化するため、既報の培地成分のうち、腸管上皮細胞分泌物であるムチンおよび短鎖脂肪酸産生に寄与するペプトンの添加量を増減させ、様々な培養条件で得た培養液中の細菌叢構成および短鎖脂肪酸分析を行った。培地検討の結果、ペプトン量の増加による短鎖脂肪酸産生量の増加は認められなかったため、既報の添加量が最適と考えた。またムチンを非添加にすると細菌叢構成が維持できなかった一方で、倍増させても変化は認められなかったため、ムチンについても既報の添加量が最適と考えた。また、ムチンはメーカーやロットを変えても結果に差異はないことを確認した。この最適化培地を用いて既知のプレバイオティクスであるフラクトオリゴ糖およびガラクトオリゴ糖の添加試験を行ったところ、いずれもBifidobacterium、Lactobacillus等のプロバイオティクスの増加が認められ、プレバイオティクス評価にも適した培養条件であることを確認した。 一方、ポストバイオティクス評価では、腸管上皮細胞株であるHT29-MTX細胞を用いたバリア機能の指標として電気抵抗値(TEER)に着目し、短鎖脂肪酸添加による変動を評価した。その結果、HT29-MIX細胞は強固なタイトジャンクション形成のためTEERのベース値が高く、HT29-MTX細胞単一での上皮細胞層におけるTEER測定はバリア機能の評価には不適であると判断した。また、脊髄後根神経節細胞における評価の前段階として、ヒト神経芽細胞種由来SH-SY5Y細胞を用いたカルシウムアッセイの評価系を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の研究計画では、ヒト腸内細菌叢モデル(KUHIMM)の最適化を終え、培養条件を確立することと、腸管上皮細胞および脊髄後根神経節を用いたポストバイオティクス評価系の構築、またKUHIMMで得たポストバイオティクスの評価と標品を用いた評価を目標としていた。 KUHIMMの培養条件については、最大の課題であったEnterobacteriaceaeの増殖を従来より抑制できる培地組成を検討し確立した。当初は培地組成にIgAやディフェンシンの添加を検討していたが、これらの試薬類は高額であることから汎用性に乏しいと考え、既報の培地組成から組成の最適化を行った。確立したKUHIMM培養条件で、プレバイオティクス評価も可能であることを確認した。腸管上皮細胞および脊髄後根神経節を用いた評価系の構築についても、昨年度に引き続き評価項目を検討し、培養細胞株を用いた実験によりアッセイ系を確立した。これらのアッセイ系では腸管内で存在しうる濃度の標品を用いた評価を行い、評価系が適切であることを確認した。このように、研究の進捗は当初設定した目標に概ね達成しており、順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、KUHIMMと培養細胞株、あるいは培養細胞株同士の共培養系の構築を目指す。先ず、培養細胞株同士の共培養系として、腸管上皮細胞と脊髄後根神経節との組み合わせを構築し、この評価系に標品やKUHIMMの培養上清を添加することでポストバイオティクスの評価が可能か検討する。次いで、KUHIMMと培養細胞株の共培養系の構築を目指し、ここに既知のプレバイオティクスを添加して、ポストバイオティクスの評価系として採用できるか検討する。また、最終年度となるため、これまでの研究成果をとりまとめる。
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