研究課題/領域番号 |
22K05541
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
槇 靖幸 九州大学, 理学研究院, 准教授 (50400776)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 粒子追跡法 / ソフトマター / レオロジー / マイクロレオロジー / 非ニュートン流動 / 食品 |
研究開始時の研究の概要 |
食品のテクスチャーは食品の微視的な構造と物性に関連するとともに、大変形・非線形レオロジーの情報も重要である。本研究では、系の局所的なレオロジーを評価可能な粒子追跡マイクロレオロジー装置に、試料に巨視的な流動を与えることができる微小流路を組み込むことによって、大変形挙動・非ニュートン流動特性についての情報を得られるように改良し、食品関連物質の評価への有効性を検討する。
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研究実績の概要 |
食品関連ソフトマターのモデル物質として、タンパク質の凝集によるゲルである、牛乳酸性ゲルのレオロジー特性について調べた。水に溶解した脱脂粉乳にグルコノ-δ-ラクトンを添加してpHを徐々に低下させることでカゼインが凝集し、ゲル化が引き起こされる。粒子追跡法で容易に実験を行うことができるよう、脱脂粉乳とグルコノ-δ-ラクトンの濃度を調整することにより、数時間でゲル化する条件を設定した。形成された牛乳酸性ゲルは固体的な弾性を示すが、一定以上の応力の印加により経時的に流動性が増加するチキソトロピー性を示すことを確認した。一方で、流動化したゲルを静置すると、レオロジー特性の向上が観察されたが、元の弾性的な性質に完全に回復することはなかった。このことから、この牛乳酸性ゲルのチキソトロピー性は、不可逆的な構造の破壊を伴うものであると考えられた。比較的小さな降伏応力で流動してしまうため、巨視的な外力を用いずにレオロジー測定を行うことができる粒子追跡法は、牛乳酸性ゲル形成の評価に有効であると考えられる。粒子追跡マイクロレオロジーにより牛乳酸性ゲルの形成を計測した結果、ゲル化点の近傍においてプローブ粒子のダイナミクスに明確な不均一性が観察され、流動性を失った固体的な領域と流動的な液体的な領域が共存していることが示唆された。 マイクロレオロジーと組み合わせて利用する微小流路と流路に対する送液システムの設計・シミュレーションに基づいて送液系・流路制御系のための機材を揃え、微小流路システムの構築を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロレオロジーと組み合わせて利用する微小流路と流路に対する送液システムの設計・シミュレーションを行い、送液系・流路制御系のための機材を揃えて、現在微小流路システムの構築を進めているところである。これに加えて、食品関連ソフトマターとして、牛乳酸性ゲルの形成を静止状態における粒子追跡マイクロレオロジーで測定し、ゾル-ゲル転移における局所的なレオロジー特性を評価した。形成されたゲルの巨視的な流動に対する応答についても観察し、チキソトロピー性を示す固体のモデル系として利用する際の条件検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
微小流路システムを構築・整備して、顕微鏡への組み込みを行う。微小流路システムを組み込んだ顕微鏡を用いて、巨視的流動下での粒子マイクロレオロジー実験を行う。まず、ニュートン流体であるグリセロール水溶液を用いて、測定装置の動作確認と、データ解析法の妥当性の確認を行う。次に、非ニュートン流体であるザンサン水溶液を用いて実験を行い、粒子追跡マイクロレオロジーを非ニュートン流体へ適用することの有効性を検討する。同じ装置を用いて、牛乳酸性ゲルのチキソトロピー性と流動後のレオロジー特性の回復の評価、および牛乳酸性ゲルの形成における巨視的流動印加の影響について検討する。
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