研究課題/領域番号 |
22K05554
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38060:応用分子細胞生物学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
高谷 智英 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (00450883)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 筋形成型オリゴDNA / アプタマー / ヌクレオリン / 横紋筋肉腫 / 肉腫 / 核酸医薬 / 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー / 希少性筋疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
化学合成可能で標的分子への選択性も高い核酸医薬品は、希少疾患に対する次世代の創薬シーズとして注目されている。これまでの研究で、微生物ゲノム由来のオリゴDNAがアプタマー(核酸抗体)として機能し、幹細胞の分化を制御することを報告してきた。特に、骨格筋分化を促進する筋形成型オリゴDNA(myoDN)は、様々な筋疾患に薬理効果を発揮することがin vitroで示されている。本研究では、myoDNを希少性筋疾患の治療薬シーズとして確立することを目指し、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーと横紋筋肉腫を対象としたmyoDNの薬理効果の検討、ならびにmyoDNの筋特異的な輸送技術の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、研究代表者が同定した18塩基の筋形成型オリゴDNA(抗ヌクレオリンアプタマー)について、希少性筋疾患に対する薬理効果を検討し、臨床応用を目指した基礎研究と技術開発を行うものである。本年度は、(1)横紋筋肉腫に対する筋形成型オリゴDNAの薬理効果、(2)筋形成型オリゴDNAの構造活性相関に基づいた塩基配列の短縮化について、以下の研究を行った。 (1)について、ヒト横紋筋肉腫細胞をヌードマウスに皮下移植した動物モデルに対し、筋形成型オリゴDNAを投与して抗横紋筋肉腫作用をin vivoで検討した。筋形成型オリゴDNA投与群では肉腫のサイズおよび重量が著明に減少した。肉腫切片の組織化学的染色では、筋形成型オリゴDNA投与群で肉腫細胞の形態が変化しており、細胞が形質転換していることが示唆された。また、横紋筋肉腫以外の肉腫(子宮平滑筋種や骨肉腫など)の細胞株を用いて筋形成型オリゴDNAの抗肉腫作用を検証し、複数の細胞株において腫瘍増殖抑制効果を認めた。 (2)について、筋形成型オリゴDNAの立体構造の分子シミュレーション結果から、同様の構造を形成すると推測される12塩基の短縮型オリゴDNAを設計した。NMRと分子シミュレーションの解析結果から、短縮型オリゴDNAは2量体を形成することで、筋形成型オリゴDNAと同様にヌクレオリンと直接結合するアプタマーとして機能することを確認した。短縮型オリゴDNAは、合成コストの低減や、分子の安定性向上が期待され、ヌクレオリンアプタマーの社会実装に有用であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
筋形成型オリゴDNAの抗炎症作用(Yamamoto et al., Biochemical and Biophysical Research Communications, 2023; 664: 1-8)、および心筋分化促進作用(Ishioka et al., International Journal of Molecular Sciences, 2023; 24: 14380)について、研究代表者が責任著者である原著論文を査読付国際学術誌に発表した。また、短縮型オリゴDNAに関する特許1件(特許7386507号)が成立した。 以上の諸点から、本研究の成果が専門家等から評価されていると判断し、現在までの進捗状況を「当初の計画以上に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
動物モデルにおいて筋形成型オリゴDNAが抗横紋筋肉腫作用を示したことから、次年度はさらに、複数の肉腫細胞株を用いて研究を進め、筋形成型オリゴDNAの薬理効果の作用特異性および安全性を検証する。また、社会実装の観点から、既存の抗肉腫治療薬と筋形成型オリゴDNAを併用したときの相乗作用について検証する。 現在、筋形成型オリゴDNAによる中胚葉系細胞の運命制御に基づいた、肉腫以外の希少性難治疾患への応用について予備的な試験を進めているが、これをさらに進め、筋形成型オリゴDNAの適用可能性を探求する。 筋形成型オリゴDNAの立体構造の分子シミュレーションについては、人工知能(AI)を活用したアルゴリズムについて有用性を検討し、新規オリゴDNA配列の探索および解析への応用を進める。 上記の研究成果を元に、2024年度は筋形成型オリゴDNAを含む複数のオリゴDNAについて3本の原著論文を査読付国際学術誌に投稿する計画である。
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