研究課題/領域番号 |
22K05558
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38060:応用分子細胞生物学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西村 浩平 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (80582709)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | オーキシン / タンパク質分解 / AID / TIR1 / ssAID / ナノボディ / AlissAID / ssAID法 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞内のタンパク質分解システムを利用した標的タンパク質分解法は基礎的な研究、応用研究から医薬品の開発に至るまで、幅広い領域で研究、開発が進んでいる。MGDやPROTACのように直接的に医薬品の開発に向かう研究が必要であることは明らかではあるが、一方で、違った方向からの研究、開発も必要である。申請者が開発したAID法は全ての細胞内に存在するユビキチンプロテアソーム系というタンパク質分解システムを利用した分解系であるという点で前述のMGDやPROTACと同様である。そのため、本システムの開発がもたらすユビキチンプロテアソーム系に対する理解の向上がどの分解系においても有益な情報となると考えた。
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研究実績の概要 |
申請者が確立したAID法は標的とするタンパク質をオーキシン依存的に分解することが可能であり、様々な真核生物種において、標的とするタンパク質の迅速なノックダウン系として用いられている(Nishimura et al., Nature Methods, 2009)。しかしながら、TIR1の導入や標的タンパク質へのAIDタグの付加など、実験に先立ち行わなければならないことも多い。また、過剰量のオーキシンがもたらす細胞毒性の問題も、避けては通れない問題であった。このような状況の中、申請者は動物細胞で簡便にAID細胞株を作製する方法を確立し(Nishimura and Fukagawa, Chromosome Res, 2017)、また、勘案事項の一つであった過剰量のオーキシン問題も、OsTIR1F74A変異体と人工合成オーキシンである5-Ad-IAAとの組み合わせにより1/1000にまで減少させることに成功した(Nishimura et al., Nucleic Acids res, 2020)。本年はナノボディと呼ばれる小分子抗体をこのssAID法に組み込み、ナノボディが認識したタンパク質を分解するAlissAID systemの構築を行った。その結果、真核生物のモデル生物である出芽酵母細胞において、GFPやmCherryなどの蛍光タンパク質を標的としたAlissAID systemの開発に成功した。出芽酵母細胞においてはGFPタグのクローンコレクションが存在しているため、これらの酵母株を利用することで簡便にAlissAID株を作製することができるため、このAlissAID systemは出芽酵母の分子遺伝学にとって重要なツールとなると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
既存のオーキシンデグロン法で標的タンパク質の分解を誘導するためには分解用のタグであるAIDタグを標的とするタンパク質に付加する必要がある。出芽酵母や一部の培養細胞では相同組換えにより、簡便にAIDタグを付加することが可能である。一方で、他の動物培養細胞や生物個体ではこのようなタンパク質へのタグの付加は難しいものも多い。そのため、AIDタグの付加を必要としないssAID法、すなわちAlissAID法の確立を試みた。この目的のために小分子抗体であるナノボディを利用した。ナノボディとAIDタグとを融合させ、この融合タンパク質の中からユビキチン化の標的となるリシン残基を取り除くことによって、このタンパク質はユビキチン化されず、ナノボディ によって認識された標的タンパク質がユビキチン化され、分解されるようになると考えられた。本研究ではまず、既知のナノボディであるGFPナノボディとGFP融合タンパク質を用いて、GFP融合タンパク質の分解が可能であるかを真核生物のモデル生物である出芽酵母細胞を用いて検証を行った。すると、細胞質や核に局在するGFP融合タンパク質を5-Ad-IAA依存的に分解することが可能であった。次に赤色蛍光タンパク質としてGFPとともに多用されるmCherryに対するナノボディを用いてmCherry融合タンパク質に対するAlissAID法の構築を行った。得られたデータをもとに論文を作成し、プレプリントサーバーであるBioRxivへとデポジットを行った。
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今後の研究の推進方策 |
本年、確立した出芽酵母によるAlissAID法が動物の細胞においても機能するか検証を行う。また、上記の研究により、構築したAlissAID法により、内在性のタンパク質を標的とした分解系を構築するために、内在性の因子に対するナノボディの探索を行う。現在、ナノボディ を探索する方法としては、これを保有するリャマなどへの免疫による通常の抗体取得以外に、ファージや酵母の表層に抗体を提示させるディスプレイ法などが知られている。またこの他にもペプチドバーコード法によるナノボディ の探索法などが開発されている。そのため、これらの方法を用いることにより標的とするタンパク質に対するナノボディ の探索を行い、上記の分解誘導法に用いる。分解の標的としては核や細胞膜など多様な局在を持つタンパク質を標的とすることとで本分解システムの汎用性を確かめていく。本システムの特徴として、分解標的の認識を小分子抗体により担わせる点にある。既存のタンパク質分解法であるAID法、MGD、PROTACではタンパク質の修飾状況にかかわらず、全てのタンパク質が分解の標的となってしまう。しかし、本システムでは修飾がなされたタンパク質のみに対する小分子抗体を取得することができれば、修飾されたタンパク質のみを標的として分解誘導することが可能となる。
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