研究課題/領域番号 |
22K05561
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38060:応用分子細胞生物学関連
|
研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
上村 聡志 東北医科薬科大学, 医学部, 准教授 (10399975)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | スフィンゴ糖脂質 / 低温ストレス / 糖転移酵素 / 細胞膜の流動性 / スフィンゴ脂質 |
研究開始時の研究の概要 |
体温を一定に保つことができる我々は、皮膚などを除いてほとんどの臓器は極端な温度変化の影響を受けることはない。しかし、一時的な血流の低下や低体温治療などで様々な臓器が体温よりも少し低い温度(弱低温)にさらされることがある。この時、臓器などでは何も起こっていないように見えるのだが、実際はこの弱低温ストレスに反応し、その影響を最低限にするためのシステムが細胞内部で働いていると考えられる。本研究課題では、真核生物のモデルである出芽酵母と哺乳動物細胞の両方を用いて、この弱低温ストレスに適応するためのシステムを、細胞膜の構成成分の一つであるスフィンゴ糖脂質の機能という観点から調べる。
|
研究実績の概要 |
真核生物のモデルとなる出芽酵母の増殖の至適温度は25~30℃であり、それよりも少し低い15℃(弱低温)では増殖速度は低下するものの、特に異常なく増殖することができる。しかしながら、細胞膜脂質であるスフィンゴ糖脂質の合成不全酵母では、その弱低温下での増殖が著しく低下し、その原因を突き止めることが本研究課題の目的である。 2023年度は、2022年度の研究成果である野生型酵母の弱低温環境下におけるスフィンゴ糖脂質合成低下、スフィンゴ糖脂質合成不全酵母におけるセンサータンパク質Wsc1の発現低下、弱低温増殖に必須な機能未知タンパク質Mtc6の膜トポロジーと機能ドメインの同定、動物細胞を使ったスフィンゴ糖脂質合成酵素変異株の樹立を踏まえて研究を実施し、次の成果が得られた。 (1) スフィンゴ糖脂質合成の制御サブユニットであるCsg2の機能ドメインを同定した。(2) 弱低温環境下における膜動態解析を実施し、野生型酵母に比べてスフィンゴ糖脂質不全酵母で細胞膜タンパク質の側方拡散の著しい低下を観察した。(3) 動物細胞を使って弱低温環境下(32℃)における増殖を比較検討し、スフィンゴ糖脂質合成酵素変異株で増殖低下の傾向が認められた。(4) 出芽酵母に含まれる20種類の遊離アミノ酸量を質量分析計で定量できる実験系を構築した。(5) Mtc6がストレス下でロイシン輸送体が正常に折りたためられるために必須であることを見出し、2022年度の研究成果と合わせて論文にまとめて発表した。現在印刷中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mtc6に関する論文の執筆と掲載のための追加実験等に時間を取られたものの、膜動態の実験が思った以上に順調に進み、前年度の遅れを少し取り戻すことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度として、前年度までに明らかになったことをさらに深掘りするために、以下の(1)-(3)を中心に検討を進める。 (1) 弱低温増殖に必須であるスフィンゴ糖脂質合成酵素制御サブユニットCsg2の機能ドメインの重要性を詳細に解析し、Csg2がスフィンゴ糖脂質合成にどのように関わっているのかについてあらためて考える。(2) 弱低温増殖に必須であるMtc6の生理機能とロイシン輸送体に与える影響を引き続き解析し、その詳細を明らかにする。(3) 出芽酵母と動物細胞における弱低温環境下における膜動態解析を実施し、温度が低下した時の出芽酵母と動物細胞における細胞膜タンパク質の動態を比較検討する。 真核細胞において温度低下の影響が大きい作用点の一つとして膜の流動性が挙げられ、生細胞を用いてそのことを実験的に示すことができそうである。その作用点に膜構成脂質であるスフィンゴ糖脂質の組成(種類)が大きな影響を与えている可能性があるため、その点に集中して解析を実施していく予定である。
|