研究課題/領域番号 |
22K05569
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
北崎 一義 北海道大学, 農学研究院, 講師 (60532463)
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研究分担者 |
松平 洋明 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 主任研究員 (90549247)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | ヘテロシス / テンサイ / 初期生育 / 収量 / 遺伝距離 / 雑種強勢 / ゲノム解析 / 水耕栽培 |
研究開始時の研究の概要 |
ヘテロシスは交雑で得られた雑種(F1)が両親の成長を上回る現象で、ハイブリッド品種で広く利用されている。テンサイ(サトウダイコン)において、両親の組み合わせによるヘテロシスの程度の差異は生育初期から見られるが、詳細な発現機構は不明である。 本研究では、差異を生じる成長要因やゲノム要因を調べるとともに、圃場生育や収量との関係性など明らかにする。
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研究実績の概要 |
組み合わせの違いによるバイオマスのヘテロシスの差異を明らかにするため、昨年度試験の6組み合わせに新たに13組追加し計19組39系統で初期生育の栽培試験を行った。しかし、昨年度までに供試した6組み合わせの結果が再現できなかった。今回増設した栽培装置の光源は植物用LEDで、蛍光灯よりも赤色波長域の照射が多い。光源を擬似太陽光LEDに変更して同様に栽培したところ結果を再現できた。したがって、光源の違いによって成長のヘテロシスの程度が変わることが示された。 成長要因を明らかにするため、クロロフィル蛍光測定で初期生育の光合成能力を調査した。第一、第二本葉を対象に発芽後10-13日で測定し両親系統とF1で比較したところ、いずれの調査日でも量子収率等に有意差は見られなかった。一方、同時に測定した葉面積と相関を調べると、量子収率と非光化学消光を示すNPQは相関が見られた。したがって、発芽日を基準に比較すると有意差が見られない原因のひとつとして、F1の葉面積が全ての調査日で親よりも大きいことが考えられた。 遺伝要因を明らかにするため、日本育成87系統のリシーケンスデータを解析し、集団構造解析を行った。その結果、K=5が最適であり、先の6組の組み合わせで用いた親7系統はそれぞれ異なるグループに属していた。さらに種子親と各花粉親系統との遺伝距離を算出し、初期生育の乾物重におけるヘテロシスの程度との相関を調べたところ、高い相関が認められた。 圃場生育と初期生育および収量との関係を明らかにするために、テンサイ育成系統の6組13系統を供試して3年目の圃場試験を行った。中期生育は、1、2年目と同様の結果が得られ、組み合わせの良さは初期生育と高い相関を示していた。一方、2023年は生育期後半に褐斑病が記録的に流行し、収穫期の生育調査結果はこれまでと一部異なっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、前年度に増設した屋内水耕栽培装置で多数の組み合わせのヘテロシスの程度の差異を調査することが主要な目標の一つだった。当初は前年度の生育調査結果が再現できず課題となっていたが、早々に原因を見つけて対処できたため、当初計画である多系統の調査は終了時までに達成できる見込みである。圃場栽培における中期生育についても調査を実施する予定であり、ヘテロシスの評価に複数の方法を取り入れることで確実なデータを得ることができる。また、その供試系統についても、WGSデータを用いた集団構造解析の結果に基づいて選定できるようになっため、遺伝要因の解明に良い結果が期待できる。成長要因については、葉面積と光合成を非破壊で測定する実験系を構築できた。これを使って分子機構の解明につながる新たな知見を得ることができたので、さらに解析を進める。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの6組み合わせに加え、新たに14組28系統を供試し、屋内水耕栽培における初期生育の様々な器官や組織のヘテロシスを調査する。また、ある一点の栽培期間だけでなく、非破壊で葉面積を測定できる技術を用いて経日的な葉面積を計測し、成長過程も詳細に調査する。地下部については、組織構成や細胞数および細胞サイズを調査し、ヘテロシスの程度との関連を明らかにする。供試系統については、集団構造解析によって系統間の遺伝的差異が確認できたため、遺伝的背景が多様な組み合わせになるように幅広く選定する。さらに、圃場栽培も選定した供試系統で行い、生育中期における全身の成長量のヘテロシスを明らかにするとともに、初期生育との差異や共通点などを明らかにする。 遺伝要因については、上述の調査で明らかにしたヘテロシスの程度の差異と、両親系統間のゲノム全体の遺伝距離との相関を調べる。さらに、ヘテロシスへの寄与が高い領域の特定を試みる。成長要因については、葉面積を考慮して光合成を調査し、F1のバイオマスが大きくなる原因を明らかにする。また、必要に応じてRNA-seq等のオミックス解析も取り入れ、分子レベルでの解決を試みる。
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