研究課題/領域番号 |
22K05570
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
實友 玲奈 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (20716378)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 細胞質雄性不稔性 / バレイショ / Solanum verrucosum / ミトコンドリア / 種間雑種 / 稔性回復 / Solanum stoloniferum |
研究開始時の研究の概要 |
バレイショにおいて花粉の発育が四分子期の状態で停止し、未熟花粉が塊として放出される四分子型細胞質雄性不稔性(T-CMS)がなぜ起こるのかは分かっていない。これまで4倍体野生バレイショを用いたゲノム解析により、T-CMSに関連するミトコンドリア変異体(RC-I)を発見した。さらに、2倍体野生種のS. verrucosum でもRC-Iをもつ系統がT-CMSを引き起こすことが分かってきた。本研究では、S. verrucosumを用いて、1) RC-Iに存在するT-CMSの原因遺伝子の解明、2) 核ゲノム上の稔性回復遺伝子を同定し、核と細胞質ゲノムの相互作用による雄性不稔性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
核ゲノムに座上する四分子型細胞質雄性不稔性(T-CMS)の稔性回復遺伝子を同定することを目的として、QTL解析と全ゲノム解析(Comparative Subsequence Sets Analysis、CoSSA)を行った。 T-CMSを示すF1雑種にS. verrucosum を戻し交配した5系統群350系統を用いて、正常花粉率、染色花粉率、および四分子花粉率を調査し、それらの形質に関わるQTL解析を実施した。その結果、2系統群に共通する花粉染色率に関わるQTLが第11染色体上に検出された(4 ~52 cM,R2= 33~42%)。この領域は第8染色体の7 cMの領域と相互作用することで寄与率が上がることが分かった(R2 = 44%)。四分子花粉率に関わるQTLには、第3染色体(49 cM)と第7染色体(27 cM)の2領域が関わるQTLが検出され、高い寄与率を示した(R2 = 95%)。 1系統群の25系統ずつを正常型とT-CMS型に分けそれらのDNAをバルクし、全ゲノム配列を比較した結果、第3染色体上の約50 ~55 Mbの領域でT-CMS型のリードがS. verrucosumのリファレンス配列に多くマッピングされ、逆に第7染色体上の約1~5 Mbでは減少していることがわかった。この領域に含まれる機能が分かっている遺伝子の数はそれぞれ489と193あり、これらが稔性回復遺伝子の候補遺伝子とされた。 以上の結果よりT-CMSの稔性回復には1) 花粉染色性を上げる第11と第8染色体のQTL領域をS. verrucosum型にすること、2) 四分子花粉から一粒花粉へ分離するのを妨げている第3と第7染色体のS. verrucosumに由来する因子および栽培種由来の因子を取り除くことが必要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
四分子型細胞質雄性不稔性(T-CMS)の稔性回復に関する研究において、集団数および系統数を増やすことによって昨年度よりも制度の高い連鎖地図を作成することができたために、より寄与率の高いQTLを発見することができた。また、全ゲノム解析(CoSSA解析)を行うことで、QTLで見つけた領域の信頼性が向上しただけでなく、候補領域を絞り込むことができた。 以上より、目的に向けての研究は着実に遂行されている。
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今後の研究の推進方策 |
QTL解析および全ゲノム解析により、T-CMSの稔性回復に関わる領域が絞られてきたので、今後は全ゲノムに渡るRNA発現解析(RNA-seq)を行い、その結果と組み合わせて、候補遺伝子をさらに絞り込む。次に、正常型とT-CMS型系統における候補遺伝子の発現を花粉の発達段階ごとにリアルタイムPCRにより調査し、稔性回復に関わる遺伝子を探し出す。
一方、ミトコンドリアゲノム側の因子については、rpl5-nad6 遺伝子間領域にT-CMS特異的な転写産物が確認されたので、これらがT-CMSに関わっていることを証明する必要がある。そのためには、ミトコンドリア遺伝子を操作する必要があるが、今年度はナノカプセルを用いてミトコンドリア遺伝子を改変させる技術をもつ北海道大学薬学部の教授と組み、その研究を確立させるための基礎研究を進めている。
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