研究課題/領域番号 |
22K05573
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
力石 和英 岡山大学, 資源植物科学研究所, 助教 (90220798)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 種子休眠 / 穂発芽 / コムギ / 種子成熟 / 突然変異体 |
研究開始時の研究の概要 |
穂発芽はコムギ栽培において甚大な経済損失を引き起こすことから、主な制御要因である種子休眠の制御機構の解明が望まれている。休眠の制御には種子発達段階に依存する複数の制御機構が存在するが、これまでの研究は種子発達の後期における休眠の発達・維持制御機構の解析に偏重していた。本研究では休眠発達以前の種子発達中期に機能するRSD32を同定し、コムギの種子成熟前に発現する休眠の誘導制御機構を明らかにする。さらに、RSD32を高発現する遺伝資源の探索を行い、穂発芽耐性育種の新規育種素材を開発する。
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研究実績の概要 |
本研究では、穀物栽培に深刻な被害をもたらす穂発芽の主な制御要因である種子休眠性の制御機構を明らかにするために、栽培コムギ農林61号より作成した種子休眠性低下突然変異系統rsd32の原因遺伝子を単離し、その制御機構を解明する。 変異原処理した突然変異系統には、目的以外の領域にも多数の変異が存在する。MutMap法は、野生型と突然変異系統を交配したF2系統について、変異型表現型に関連する1塩基多型(SNP)を検出する方法である。本年度は、野生型である農林61号とrsd32の交配により得られたF2集団(128個体)について、開花後45日の種子を採集し、20℃で発芽試験を行った。野生型である農林61号およびrsd32の発芽指数はそれぞれ0.01と74.1であり、両者の違いは明らかであった。F2系統の発芽指数は幅広く変異し(0-83.5)、3つのグループに分類された。それぞれのグループに含まれる個体は31:65:32となり、1遺伝子の分離比である1:2:1に適合した。各グループの平均発芽指数は4.6、22.8、64.3であったことから、それぞれ農林61号型、ヘテロ型、rsd32型であると判断した。 rsd32型のF2系統(20個体)よりゲノムDNAを抽出し、等量混合したものをバルクDNAとした。NovaSeq6000によりバルクDNAの塩基配列の解読を行った。2,811,031,038リードについて150bpの配列を決定し、最終的には424.5Gbの塩基配列を得ることができた。参照配列として農林61号のゲノム配列(Triticum_aestivum_Norin61_v1.1.psudomolecules.fasta.gz)を用い、MutMap法で解析した結果、一部の染色体については明瞭なSNP-indexのピークが認められたが、ノイズが大きく解析が困難な染色体領域が多数存在した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の当初予定では、MutMap法により突然変異の原因遺伝子の領域の特定までを行うこととなっていたが、現時点でそこまでは達していない。MutMap法は変異原処理により生じた多数のSNPを利用して、原因遺伝子を特定する方法である。20個体のF2系統より作成されたバルクDNAはrsd32と同じ表現型を示す個体より作成されている。つまり、休眠性低下に関係のあるSNPはバルクDNAではすべてが同じタイプとなることが想定されるため、変異型SNPの割合は1となる。それに対して、変異系統の表現型と無関係の場合はランダムな組み合わせになることから変異型SNPの割合は0.5になることが予想される。一部の染色体についてはほとんどの領域のSNP-indexは0.5付近に分布し、一部の領域でSNP-indexが高くなるという予想通りの結果となったが、一部の染色体では広い領域にわたってSNP-indexが1となっていた。これは、SNP判定における偽陽性の影響と考えられる。MutMap法では不要なSNPを除くためのコントロールとして野生型の配列を使用する。今回の実験では、予算の関係上、野生型のゲノムDNAはシークエンスせず、データベースに登録されているリード配列を使用した。この配列は国際コンソーシアムが使用したゲノムシークエンスの決定に使用した農林61号の配列である。申請者は当研究所で保存している農林61号を原品種として、突然変異系統の作成を行った。基本的には同じ品種ではあるが、バルクDNAで非常に多くのSNPが検出されたことから考えると、国際コンソーシアムが使用した農林61号と当研究所で保存している農林61号の間にはゲノムDNAレベルでは違いが存在する可能性がある。この点を補正するためには、原品種である当研究所保存の農林61号をコントロールのリード配列として用いる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
現時点でMutMap法により得られたデータからrsd32の原因遺伝子の領域を推定することは困難であると考えている。そこで、原品種である農林61号(岡山大学資源植物科学研究所で保存している品種)のゲノムDNAを解読し、このリード配列をコントロールとしてMutMap法を行うのが最良の方法であると考えている。農林61号のゲノムDNAの塩基配列については、現在解析中である。リード配列の解読が終了した後、MutMap解析を行う。 原因遺伝子の領域を特定した後は、当初の予定通り組織・時期特異性などの発現解析により候補遺伝子の絞り込みを行う。最終的に得られた候補遺伝子については、形質転換体を作成し、種子休眠性やrsd32の影響下にある種子休眠関連遺伝子の発現調査により、候補遺伝子の検証を行い、RSD32の同定を行う。
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