研究課題/領域番号 |
22K05575
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
小野 明美 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 客員研究員 (90732826)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | エピジェネティクス / DNAメチル化 / DNA脱メチル化酵素 / 胚乳発生 / トランスポゾン / エピジェネティックス / イネ |
研究開始時の研究の概要 |
植物が環境に応答し柔軟に生き抜いていくためには、ジェネティックな情報とともにエピジェネティックな情報が不可欠であり、それらの情報を次世代に正確に伝えることは種を維持していくために重要である。さらに、作物としての農業形質に関わる多くの要素もまた、エピジェネティックな制御下にあることが知られている。本研究は、イネ胚乳を材料に、その発生や機能に不可欠なDNAメチル化修飾によるエピジェネティック制御の仕組みを理解していくことを目指す。
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研究実績の概要 |
DNAメチル化やヒストン修飾等により構成されるエピジェネティックなゲノムの制御機構は、生命現象を多面的に支える。穀物の胚乳も、その発生や機能は多様なエピジェネティック制御によって担保される。本研究課題は、DNA脱メチル化に着目し、『イネに存在する複数のDNA脱メチル化酵素のそれぞれの特性が、イネ胚乳におけるエピジェネティック制御の多様な作用の一端を担う』という仮説のもと、個々のDNA脱メチル化酵素の基質選択性や分子パーツを比較し掘り下げることで、多様なエピジェネティック制御を可能にする分子機構を理解していくことを目指している。そのためのアプローチとして、以下の3つを中心に計画・実施している。①DNA脱メチル化酵素の相補性の精査。②基質選択性の根拠となる分子機構へのアプローチとしてのDNA脱メチル化酵素と相互作用する因子の探索。③酵素特異的な選択を受けることが示唆される基質領域のDNAメチル化解析における解像度の向上。 令和5年度は、特に②「基質選択性の根拠となる分子機構へのアプローチとしてのDNA脱メチル化酵素と相互作用する因子の探索」に注力した展開を試みた。これまでに、それぞれのDNA脱メチル化酵素にtagを付加した構造の遺伝子をイネに導入し、その発現を確認・選抜してきた植物を用いて、付加したtagを利用した免疫沈降・質量分析(IP-MS)によりDNA脱メチル化酵素と相互作用する因子の探索を行った。その結果、相互作用を示唆する複数の候補分子を得た。①のアプローチについては、表現型に基づく遺伝学的な解析を進めるとともに、DNAメチル化の分布レベルでの解析に着手した。③については、解像度を上げるための改善の試みとその評価を継続して行った。得られた成果について、分子生物学会年会、育種学会年会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つのアプローチを中心とした計画を遂行しており、これまでのところ、そのそれぞれについて計画の変更の必要性は生じていない。 令和5年度は、②「DNA脱メチル化酵素と相互作用する因子の探索」について特に注力した。DNA脱メチル化酵素が核内で機能すること、大きなタンパク質であること(~220 kDa~)などの性質を考慮し、これまで免疫沈降・質量分析(IP-MS)へ向けた各種条件検討を行ってきた。その中で決定した最適な条件下で、まずOsROS1aと相互作用する因子についての探索を試みた。Tag付きのOsROS1aを発現する植物体とコントロールの植物体それぞれについてのIP-MSで得られた結果を比較検討し、OsROS1aとの相互作用を示唆する候補分子を得た。現在、それらの候補分子の相互作用の詳細や、相互作用を裏打ちする分子メカニズム等について検討していくための解析をすすめている。 ①「DNA脱メチル化酵素の相補性の精査」については、表現型の相補を遺伝学的に評価するために作出してきた植物材料を用いて、遺伝学的な解析、および、DNAメチル化の分布レベルでの相補についての解析を進めている。③「基質領域のDNAメチル化解析における解像度の向上」については引き続き、解析の解像度を上げるための改善を試みている。 それぞれのアプローチが相互につながるような展開を、各場面で必要に応じた対応を加えながら進めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに大きな計画変更の必要性は生じていないので、令和6年度は、当初の計画に沿って3つのアプローチを中心にさらに展開していく。 中でも令和5年度に注力した②「DNA脱メチル化酵素と相互作用する因子の探索」については、免疫沈降・質量分析(IP-MS)で得られた候補分子について、各種方法を用いて詳細に検証していく。相互作用を裏打ちする分子メカニズム等の検討や、生物学的意義の考察へ向けてのゲノムワイドな視点からのアプローチも試みる。分子機構の裏打ちの要素として、他のエピジェネティックマークの分布や転写などとの関連も含めて考察を深化していく。②については更に、それぞれのDNA脱メチル化酵素の相互作用因子の比較解析を展開することも考えている。その中で、①「DNA脱メチル化酵素の相補性の精査」と関連して、それぞれを説明しうる手がかりを考えていく。加えて、③「基質領域のDNAメチル化解析における解像度の向上」における、DNAメチル化解析法の改善過程で得られた成果を随時取り込み、①で精査している相補性の解析を、より精度を上げたものへと改良していく。3つのそれぞれのアプローチを有効に組み合わせた解析を進める。
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