研究課題/領域番号 |
22K05585
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
西田 英隆 岡山大学, グローバル人材育成院, 教授 (30379820)
|
研究分担者 |
加藤 鎌司 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 特命教授 (40161096)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | オオムギ / 環境応答 / 匍匐性 / 開張性 / QTL解析 / 茎葉空間配置 / 植物ホルモン / 分子遺伝学 / 育種学 |
研究開始時の研究の概要 |
ムギ類は一般に秋から初夏にかけて栽培される冬作物であり,気温や日長など外的環境の季節変化に対応して出穂期を調節するとともに,茎葉の発育や空間配置を最適化することによって栽培地域の多様な環境に適応し安定生産を可能にしている.本研究では,冬季にムギ畑で見られる現象,すなわちムギ類の低温応答と理解できる現象として“匍匐性”に注目し,表現型解析,QTL領域の絞り込み,およびQTL候補遺伝子の発現解析などを行い,低温に応答して茎葉空間配置が適正化される現象の遺伝機構を解明する.
|
研究実績の概要 |
ムギ類は一般に冬季に横方向に生長する匍匐性を示し,本特性が凍霜害回避に貢献していると考えられている.そこで,オオムギを研究材料として,匍匐性の遺伝機構を解明するために本研究を実施している. 先行研究において,オオムギ品種「イシュクシラズ」と「カシマムギ」を交配して育成した分離集団(RILs)で匍匐性と直立性が分離することを見出した.また昨年度(初年度)はDArTseq解析により取得した5817個のゲノムワイドSNPを用いたQTL解析により,匍匐性QTLが3Hおよび4H染色体にそれぞれ2個,1個座乗することを明らかにした. 今年度(2年目)は,はじめにQTL領域における新規マーカーを開発するため,両親品種の全ゲノムリシーケンスを行い,塩基配列多型情報を取得した.これにより,4H染色体のQTL(以下,4H QTL)周辺に座乗するDNAマーカー(indel,CAPS;計12個)の開発に成功した.次に,上述のRILsを両親とする分離集団の中から,4H染色体のQTL(以下,4H QTL)がヘテロ型である個体を選抜し,その次代である分離集団(2集団;計110個体)を供試した.両方の集団において4H QTLによる表現型分離が生じたのを確認し,新規マーカーを用いてQTLのマッピングを行った.この結果,4H QTLは5.6Mbの領域中に座乗することを明らかすることができた.QTLを含む近傍領域には,イネの匍匐性を支配するPROG1のオーソログが座乗しており,5個のパラログのうち4個がQTL領域中に座乗していた.これら4個のパラログには,両親間で塩基配列変異が存在し,今年度は原因遺伝子がどれであるかを特定できなかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
QTLマッピングにより4H QTLの座乗領域の特定と絞り込みに成功した.これは,匍匐性の原因遺伝子の有力候補がHvPROG1であるという初年度の結果と矛盾しなかった.したがって,研究は順調に進捗していると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
1)匍匐性QTLの解析;申請者らが先行研究により明らかにした3つのQTL領域をさらに絞り込み原因遺伝子の特定を目指す.このために,①分離集団の親である「イシュクシラズ」と「カシマムギ」のゲノムリシーケンス結果に基づいて,両親間で配列が異なる遺伝子をQTL領域において特定し,候補遺伝子の絞り込みを進めるとともに,DNAマーカーを開発する.②今年度の4H QTLマッピングと同様に,3H染色体の2個のQTLsについてもマッピングを進める.RILsを両親とする分離集団についてMIG-seq解析を行い,注目する特定のQTLのみがヘテロ型である個体を選抜する.そのQTLのみが分離する後代集団を育成し,マッピングを行い,QTLの座乗領域を絞り込む.③オオムギ品種100系統を供試して配列変異と匍匐性との対応を確認する. 2)匍匐性の表現型解析と現象理解;葉鞘基部の内生植物ホルモン量が匍匐型と直立型で異なること,向軸側と背軸側で異ならないことが明らかになった.本年度は,両親系統とRILs(匍匐型と直立型各数系統)について,葉鞘基部の内生植物ホルモン量の経時的変化を解析する.この結果により,植物ホルモン量が匍匐型と直立型で異なるのは冬季限定であること,即ち冬季の環境に対する応答現象であることを明らかにする. 3)匍匐性の環境応答解析;両親系統とRILs(匍匐型と直立型各数系統)を用いて,低温湾曲性を再現できる人工環境条件を明らかにする.一昨年度,2種類の人工気象器を用いて最低気温0℃,もしくは6℃で匍匐性発現の有無を検討した結果,両条件とも匍匐性の発現には至らず,しかも6℃の方が開張程度が大きいという予想外の結果となった.この原因として,照明の違い(0℃はLED,6℃は蛍光灯)が考えられたので,本年度は光の波長の効果について検討する.
|